非国民通信

ノーモア・コイズミ

偽りに基づく結果

2006-10-08 15:27:26 | ニュース

ロシア「悪印象」70%、漁船銃撃で急増か…読売調査

 前にもちらっと書きましたが、私はロシア関係が専門でした。今はもう見る影もありませんが。その私がまだ学生の頃、ロシアから日本語専攻の学生を招いての懇親会がありまして、「日本人は何故ロシアを嫌っているのですか?」なんて問いがあったのを覚えています。

 引用記事では先日の、ロシア領海内で密漁船の船員が発砲された事件の影響を挙げています。他国の海域で密漁、制止を無視して逃亡を企てれば日本の海上保安庁だって銃撃するでしょうし、実際にそれで死者も出ているわけではありますが、ダブルスタンダードの国にとってはそんなことは気にならないようです。

 さて、この悪印象を強めている原因の一つは北方領土の帰属問題です。修正主義が主流化しつつある昨今ですが、北方領土に関しては昔から一貫して修正主義の影響下にあった――すなわち、日本国内では日本側の都合に合わせる形に歪曲されてしか語られて来なかったのです。つまり、北方領土は日本固有の領土であると。数十年間にわたって日本が北方領土を占領していた時期があったことはたしかですが、それは台湾や朝鮮半島、中国東北部の場合も同じこと、敗戦によって返還されるのが筋でしたが、しかし北方領土を返すべき国は?

 結局、北方領土はソ連が引き取るものの、後から日本が「返還」を要求。ソ連側も妥協して半分の2島を分けるという形の提案がなされました。北方狩猟民の土地を山分けにしようという提案ですね。しかし曖昧さを許さず、all or nothingを旨とする日本はこれを認めず交渉決裂、「北方領土は我々の領土」というイデオロギーを振りかざしたまま今日に至ります。

 「北方領土は我々の領土」という事実に基づかない観念が、今ほど国家主義が強くなかった時代にも無批判に繰り返されてきたのはいったい何故でしょうか? 今でこそ日本の仮想敵国と言えば北朝鮮ですが、かつての仮想敵国は当然、ソ連でした。そして今日の北朝鮮に対する言説同様、敵に対しては何を言っても許される、敵方の主張は一切認めない、敵に対しては我々の主張を押し通すのみ、そういう態度を以て良しとしてきた結果なのでしょうか。

 中韓の戦争被害者の問題は解決済みとしながらも、それと同時期であるはずのシベリア抑留問題は今でも未解決として語られ、そして領土問題、先日の密漁船拿捕の問題、先代の首相も安倍首相も「未来志向の関係を」と繰り返していますが、ロシアに対して同じことを言えるのでしょうか?


参考、

北方領土紛争は欠陥外交の好例

日本が釣っているのはロシアとのトラブル

 その他、外国で出版された地図など眺めてみれば、北方領土は日本の領土という発想が特定の国でのみ通用する概念であることがご理解いただけるかと。日付変更線が真ん中に来ている世界地図ばかりでなく、東経0°が中心に来ている世界地図で見てみることは客観的な見方を養う上で役に立ちます。

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