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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Marcin Wasilewski Trio / "Faithful"

2011-05-22 21:42:21 | music11
Faithful



□ Marcin Wasilewski Trio / "Faithful"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Night Train to You
Song for Swirek
Woke Up In The Desert

Release Date; 12/04/2011
Label; ECM (Poland)
Cat.No.; ECM 2208
Format: 1xCD

>> http://www.ecmrecords.com/Catalogue/ECM/2200/2208.php


>> tracklisting.

01. An den kleinen Radioapparat   
Hanns Eisler

02. Night Train To You   
Marcin Wasilewski

03. Faithful   
Ornette Coleman

04. Mosaic   
Marcin Wasilewski

05. Ballad Of The Sad Young Men  
Frances Landesman / Thomas Wolf

06. Oz Guizos   
Hermeto Pascoal

07. Song For Swirek  
in loving memory of Marek Swierkowski Marcin Wasilewski

08. Woke Up In The Desert   
Marcin Wasilewski

09. Big Foot   
Paul Bley

10. Lugano Lake   
Marcin Wasilewski



Marcin Wasilewski piano
Slawomir Kurkiewicz double-bass
Michal Miskiewicz drums

Recorded August 2010
Auditorio Radiotelevisione svizzera, Lugano
Engineer: Stefano Amerio
Technical Assistant: Marco Strigl (RSI)
Cover Photo: Thomas Wunsch
Liner Photo: Thomasz Sikora
Design: Sascha Kleis


Produced by Manfred Eicher




Marcin Wasilewski does not think like other jazz pianists, His improvisational underpinning, his sense of musical space and his aural imagery are so fresh they are initially mysterious," - Thomas Conrad, JazzTimes




ポーランド出身の最若手Jazz Trioでありながら、今やECMレーベルのJazzマーケットを牽引するほどの評価と知名度をものにした新進気鋭Marcin Wasilewskiの、怜悧で研ぎ澄まされた空気の漂う一枚。




元々ポーランドでは"Simple Acoustic Trio"として、Tomasz Stankoをはじめとする偉大なパフォーマーのバックの演奏を着実にこなしキャリア積み上げる。その縁もあってECM代表のManfred Eicherに見初められ、2005年には彼らの名声を決定的なものにしたアルバム、"Trio"を発表。2008にMarcin Wasilewski名義をトリオに冠した"January"をリリース。この"Faithful"は同名儀での二枚目、ECMからは通算3枚目のトリオ作品となる。




前2作品では、ECMカラーのサイレントで染み入るような音色と構成が、何処かアイヒャーの存在と影響力を匂わせてまで、このトリオの静謐で透き通った結晶の佇まいを完成させていたのだけれど、"Faithful"に至って漸く、厳しい冬の雪解けから、四季の表情豊かなポーランドの風土を匂わせる瑞々しい薫りを纏って、まるで深々と降り積もる雪が、躍動感に溢れ降り注ぐ雨粒のリズムを刻みながら、そして波打つ如くたゆたうピアニズムを描き出している。



ECMというレーベルの作品を表現するとき、いつも言葉が茫洋に放り出されたような、或は散り散りになった文字の断片に溺れていくような気分に陥り、呆然と立ち尽くすことがある。それらは、特にECMのセレクトは常に『音楽言語』に取って代えられない純粋なメッセージの一次的形容に他ならず、それ自体が翻訳不可能な発話事象であるからだ。


このアルバムも、単なるピアノジャズという括りを超えた、音楽を「演奏すること」に対する真摯で透徹した美学が貫かれた、まさに"Faithful (信念)"を体現する作品であり、ここに引用されたO.コールマンをはじめとる金科玉条のスタンダードを織り交ぜた奔流の中に『自己』を置き、しっかりとその器に塞き止めながら、磨き抜かれた鏡のように、その水面に皓々と先人のテキストとノウハウを湛えている。




ハンス・アイスラー作曲の"An den kleinen Radioapparat”は、後にStingによってアレンジされた“The Secret Marriage”として有名になった歴史的佳曲。しかしMarcinは、当時ブレヒトとアイスラーが込めた政治・社会的思想を色濃く残した形で再解釈を施しているのだそう。


最初のオリジナル曲である"Night Train To You"では、特徴的なコードとループの組み合わせで『静と動』を表現した作品。楽曲は駅に近づくにつれてテンポを緩め、最期のセクションでは初期の主題に基づいたインプロヴィゼーションが展開される。




表題曲"Faithful"は、Marcin Wasilewski Trio結成のルーツとなり、三人のジャズに対する共通のインスピレーションとなOrnette Colemanの1966年のアルバム、 “The Empty Foxhole”から。


最も面白いのが、トリオによる新作"Mosaic"。『流動し、断片化されたコードが一枚の大きなモザイク画を描き出す』とあるように、連綿と紡がれる音のピースが径時的に構築されていくことによって、そのシンタックスにおける立体的な構造が明らかになっていくというもの。和音やパートごとの連続性の至る所に断層があり、降り積もる乖乱と齟齬の境界が、俯瞰において調和した輪郭を縁取っていく。




同国ポーランドの女性シンガーソングライターで、彼らと親交の深いEdyta Bartosiewczによってタイトルされたという“Woke up in the Desert”も、このトリオの先進性を裏付ける白眉の一曲。シンバルやスネアの『うねり』は、砂漠に這う蛇の動きをイメージしてるという。


この「信念の川」を渡る旅の終着点は"Lugano Lake"。アルバムレコーディングが行われたイタリア、ルガーノ湖に位置するオーディトリウムに因んで作曲されたもの。




ジャズといえば、腰を据えられる雰囲気の場所で落ち着きながら流し聴くことが多いかもしれないが、透き通った輝きと躍動感を併せ持つ本作は、ドライブなどのアウトドアユースにもピッタリ。これから来る憂鬱な雨の季節においても、そのしっとりとしたムードの中に心躍らせるイメージを喚起する、必携の一枚になることは間違いない。