Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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両側性に生じる脳神経麻痺で頻度の多いものは?

2005年10月04日 | その他
 ユニークな臨床研究が報告されている.著者は南カルフォルニア大学の先生で,彼の34年間に渡る臨床経験の中で,ひとつの脳神経が両側性に侵される場合の原因と部位についてまとめている.患者数は578名(!)で,計算すると年平均17名ということになる.その内訳を大まかに見ると,両側性に麻痺が起こりうる脳神経は,外転神経(234名),視神経 (211名)が圧倒的に多く,これに続いて滑車神経 (48名),顔面神経(30名),動眼神経(27名),聴神経(18名)の順であった.原因としては,外傷 (99名),感染症 (94名),腫瘍(92名),頭蓋内圧亢進症 (85名),血管障害 (74名),脱髄(66名)が多かった.逆に両側性に麻痺が生じにくいのは,副神経(0名),三叉神経(1名),舌下神経(4名),迷走神経(5名)であった(嗅神経と舌咽神経は除外し,原因疾患として筋無力症と運動ニューロン疾患も除外してある).
さらに原因を細かく見ていくと,視神経麻痺は,脱髄=頭蓋内圧亢進>腫瘍の順に生じる.動眼神経麻痺では大半が血管障害.滑車神経は外傷>感染症.外転神経はさまざまで,外傷=血管障害>感染=腫瘍>頭蓋内圧亢進の順.顔面神経は自然治癒(ベル麻痺)が大半.聴神経は遺伝性が多い.
個人的にはこういうお金がかからず,そしてみんなの役に立ちそうな臨床研究が好きだ.ためしに著者がどんな先生なのか調べてみたら,南カルフォルニア大学の教授でいらっしゃって,研究テーマにはobservational research,すなわち視力,眼球運動,脳幹障害を呈した多くの患者さんを研究し,病変の部位や新しい所見について正確な臨床的記述をすることがテーマだそうだ.彼の所属するneuro-ophthalmology serviceから過去20年間に100以上の臨床所見に関する論文がpublishされたとも記載してある.そのホームページにはレジデント募集とも書かれていたが,こういう先生のもとで勉強してみたいものである.

Neurology 65; 950-952, 2005
http://www.usc.edu/schools/medicine/util/directories/faculty/profile.php?PersonIs_ID=569
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