Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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パンデミック後 急増した機能性チック様行動を症候で原発性チックと見分ける

2024年04月05日 | 機能性神経障害
機能性チック様行動(functional tic-like behaviors;FTLB)は機能性神経障害(functional neurological disorders; FND)のひとつです.パンデミック以降,世界中の運動障害クリニックでFTLBが劇的に増加したことが報告されました.原発性チックに似た動作や発声を呈します.すなわち,FTLBをトゥレット症候群と区別する必要があります.今回,カナダから両者の症候の違いについて検討した横断研究が報告されました.

対象は236名(20歳未満)で,原発性チック195名(75%男性;平均年齢10.8歳)とFTLB 41名(98%女性;16.1歳)です.二変量モデルでは,FTLBはcopropraxia;下品な動作をする(オッズ比15.5),単語を言う(14.5),coprolalia;下品な言葉を言う(13.1),popping;ぽんと音を立てる(11.0),whistling:口笛を鳴らす(9.8),単純な頭部の動き(8.6),自傷行為(6.9)と最も関連していました.つぎに多変量モデルでは,FTLBは依然として,単語を言う(13.5)および単純な頭部の動き(6.3),そして年齢と関連していました.逆に原発性チックでしばしば認めるthroat clearing tics(咳払いする動作)はFTLBの12.2%のみと少ないことが分かりました(0.2)(図).



以上より,単純な頭の動きと言葉の発音を認め,咳払いする動作を認めない場合,症候学的にはFTLBを考えるということになります.逆に3つの音韻チック(popping noises, whistling,clicking)はトゥレット症候群ではまれということも分かりました(それぞれ2%,4%,6%).以上より,発症年齢が遅く,症状が急速に進展し,上述の症候を認める場合,FTLBを考え,誤った診断をしないことが重要ということになります.
Nilles C, et al. What are the Key Phenomenological Clues to Diagnose Functional Tic-Like Behaviors in the Pandemic Era? Mov Disord Clin Pract. 2024 Jan 25.(doi.org/10.1002/mdc3.13977

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