Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

Twitter @pkcdelta
https://www.facebook.com/GifuNeurology/

機能性神経障害は高率に慢性疼痛を伴い,複合性局所疼痛症候群(CRPS)まで呈しうる

2024年03月01日 | 機能性神経障害
機能性神経障害(functional neurological disorders; FND)では痛みをしばしば合併することが知られています.しかし,その特徴を調べた研究はほとんどありません.英国から,成人のFND患者における慢性疼痛,もしくは慢性疼痛患者におけるFNDについての検討した系統的レビュー/メタ解析が報告されました.

715件の論文がスクリーニングされ,64件が解析されました.8件の症例対照研究(計3476人の患者を含む)では,FND群では,他の神経疾患(てんかんや多発性硬化症など)による対照群と比較して,疼痛の合併頻度が高いことが分かりました.30のコホートのランダム効果モデルにより,FND患者4272人の推定55%が疼痛を合併していました.さらに患者の22%が複合性局所疼痛症候群(CRPS),16%が過敏性腸症候群,10%が線維筋痛症と診断されたと推定されました.

一方,慢性疼痛患者361人におけるFNDの合併に関して検討した研究が5件同定されました.地域の慢性疼痛サービスに通う190人の患者の17%にFNDを認めたとの報告もありました.注目すべきは,疼痛を合併する場合,FNDNの予後は不良で,かつ精神療法や理学療法などのFNDに対するほとんどの介入は他の症状を改善しても,痛みを改善しなかったことです.以上の結果は,FND患者のメカニズム,分類基準,治療や臨床試験において,疼痛を考慮すべきであることを示唆しています.

本研究で最も驚いたのは「FNDはCRPSと診断されうる」ということではないかと思います.論文の共著者で,FND研究のリーダーであるJon Stone先生はTwitterで「CRPSとFNDは和解の時だ.これは,CRPS(またはFND)がすべて「精神的」なものだと言っているのではない.FNDとCRPSの生物学的特徴は重なり合っている.一方を理解することは,他方を理解することにつながる」と述べています.
Steinruecke M, et al. Pain and functional neurological disorder: a systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2024 Feb 21:jnnp-2023-332810. doi: 10.1136/jnnp-2023-332810.




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 医師のバーンアウトについて... | TOP | 新型コロナウイルス感染症COV... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 機能性神経障害