Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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驚きのジェネラリスト医療用AI(GMAI) -未来の医療はすぐそこまで来ている-

2023年05月15日 | 医学と医療
Nature誌に新しい医療用AIについての論文が掲載されています.ジェネラリスト医療用AI(generalist medical AI; GMAI)と名付けられたもので,スタンフォード大学で開発されているものです.これは,foundation models(基盤モデル)と呼ばれる最新世代のAIが可能にしたもので,多様なタスクに対応できることが特徴です.従来の医療AIは特定のタスクに限定したものでしたが(例えば胸部X線写真の異常所見を見出す),GMAIは大量の異なるデータを組み合わせて処理し,柔軟に解釈することができるのだそうです!つまり上段aのように,画像,電子カルテ,検査結果,ゲノム,グラフ,医療テキストなどのデータはテキストないし音声とペアリングして柔軟に取り込みます.そのあと,様々な医療知識リソースにアクセスして高度な推論をしてくれます.研修医からスタートした医師が経験を積んで専門医になるのと同様に新しいタスクをどんどん学習をしていきます.ですから新しい病気や技術にも追いつくことができます.

推論の結果は,患者さん向け,医師向けのさまざまなアプリによって利用できます(中段b).まず患者さんは平易な用語に変換したチャットボットで医療相談ができます.一方,医師は代わりにカルテ記載をしてもらえますし,ベッドサイドでの診療の意思決定支援(医療行為中の音声による助言:下段a)もしてもらえます.この辺の恩恵についてはぜひ論文に目を通して頂きたいのですが,患者の病歴を考慮しつつ,異常所見と正常所見の両方を記述する放射線診断報告書を自動作成したり(報告書の文字をクリックすると所見を示してくれます;下段b),チャットボットで質問すると医師は勉強することができます.手術中にある手順を飛ばしてしまったときに警告を発したり,救急外来では「警告!この患者さんは今にもショック状態になりそうです」と教えてくれます!珍しい現象に遭遇したときに関連文献を読み上げたりもします.本当に驚きです.昔,空想小説で読んだ未来の医療はすぐ目前まで来ているようです.



カルテ記載はAIに任せて,医師はその内容を承認すれば良いので,医師は時間の節約ができバーンアウト対策としても期待されます.著者は医師は患者さんと過ごす時間を増やすために使えると言っています.医師は医師にしかできない仕事をする必要があり,それは何であるかを真剣に考え,そのスキルを磨く必要があるのだと感じました.
Moor M, et al. Foundation models for generalist medical artificial intelligence. Nature. 2023 Apr;616(7956):259-265.

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