ピアノの音色 (愛野由美子のブログです)

クラシックピアノのレッスンと演奏活動を行っています。ちょっとした息抜きにどうぞお立ち寄り下さいませ。

暗譜を確実なものにするために

2018年12月17日 | レッスンメモ
ピアノのレッスンが進むと、どんどん新しい曲に挑戦するようになってきます。初めての曲をもらって最初にすることは譜読み。少しづつ着実に譜読みを進めて、だんだん弾けるようになって、最後に暗譜までようやくたどり着いたとします。さて、今日はその後のお話です。

暗譜ってなんだろう? 暗譜というのは、その曲の楽譜(音符や楽語など楽譜に込められた情報全部)が一から十まですべて、完全に頭の中に入っている、ということです。こういう状態に持って行くこと自体大変な努力が必要ですが、まあ、やってやれないことではありません。誰でも努力さえすればできることです。いったん覚えてしまった、つまり暗譜できたと思った時から、楽譜を見ないで(暗譜で)練習することが多くなり、突っかからずに弾けたりするようになって、さあ、これでよしと、一応、思えるようになってきます。

さて、問題はこの後です。その状態をどれだけしっかり保つことができるか、いざという時にきちんと再現できるかどうか。つまり、いったん暗譜ができたらもう忘れない、大丈夫と思っていると大間違い。私たちの脳は絶えず変化していて、暗譜ができたと思ったその時から、頭の中の音符が勝手に変化したり、抜け出ていってしまったり。すぐだめになっていってしまうのです。

暗譜ができたと安心したとき、まさにその時に魔の手が伸びてきます。いざというときに急に左手が分からなくなったり、たった一つのミスタッチがきっかけになって、左と右の連携が混乱して、そこから先がガラガラと音をたてて崩れていってしまったり。

だからちょっと暗譜が出来たくらいでは全然安心はできません。そこからさらに、暗譜を確実なものにするための対策と練習が必要なのです。例えば、

左手だけの練習:右手にメロディラインがある曲が多いので、どうしてもそちらに気をとられて、左手はおろそかになりやすいもの。だからこそ意識して左手の練習にもっと時間を割きましょう。

各声部ごとの練習:バッハなどの対位法を用いた曲は、それぞれの声部がそれぞれ主役ですから、声部ごとに一つ一つ分解して繰り返し練習しましょう。

曲の途中のどこからでも弾けるようにする:いつでもどこでも指示された小節からぱっと始められるようにしておくことが大切です。つながりに頼っておぼえていると、一ケ所間違えるとその後も続けて崩壊してしまいます。

楽譜を「見て」おぼえる:これは映像記憶とかフォトグラフィック・メモリーとか言われるものですが、楽譜を脳内カメラで写真に撮るような覚え方です。真剣にやっているとこういうことが自然と起きてきます。楽譜は見てないのだけれど、頭の中では楽譜そのものが「見えている」という状態なので、この境地に達するととても安心して弾けます。多少のミスタッチがあってもすぐに戻れるし、先の方まで「見える」ので、慌てることもありません。意識してこういう見方をする訓練を心がけるとよいでしょう。楽譜は「読んでおぼえる」だけではなくて、「見て、眺めておぼえる」ことも大切です。

暗譜を確実なものにするための様々な練習法、工夫というのはほかにもいろいろありますけれど、まずは上に書いたようなことを絶えずチェックをしてみましょう。そうして、本番で何があっても動じない、揺るがない、しっかりした暗譜を自分のモノにしていきましょう。このような努力を積み重ねて行けばこそ、その楽譜を、つまりその曲を、深く知る、ということができるようになるのです。

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