田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

裏鹿沼(2)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-19 10:03:17 | Weblog
2

美智子は元気に出かけた。
心配かけたわね。
こちらは、なんの情報もなかったから心配はしていなかった。

また映画の仕事に復帰したてこちらはおおいそがしよ。
という連絡だった。

なるほど、忙しいらしい。
里恵からの電話はかかってきたときとおなじようにあわただしく切られた。
でも里恵はなにか不安をかかえていると父親の直感がとらえた。
どんな不安なのだ。

なにが起きようとしているのだ。
娘の不安が父に乗り移った。
孫の美智子。
智子の智をとって命名した初孫。
ひさしぶりで、テレビをつける。
中国からの冷凍餃子の中毒問題を報じている。
メタミドスという殺虫剤が混入されていたという。
その原因と犯人は、まだわかっていない。
数年前とまったく同じような事件が起きている。
なにも改善されてない。
世の中いやなことばかり起きる。
いやなことが起こりすぎる。
人は真摯に前向きで生きていこうとしている。
希望を持って明るく生きていこうとする。
この不況に耐えている。
それでは、おもしろくない。
そんな連中がいる。
人を苦しませて、生き血を吸ってたのしんでいる。
人の苦悩は、悪魔の逸楽。
そうこの世には悪魔がいる。

翔太郎と智子の二人は、
東京の娘や孫を思いながらひさしぶりにテレビを見た。
でも、テレビの画面に集中できない。
ひさしぶりでみたテレビなのに。
画面に黒い雪が降ったり、
横線がはいったり、
全体にぼやけたりしている。
翔太郎は汗をかいていた。

今電話で話したばかりの里恵のことが心配だ。
里恵は「美智子は元気に出かけた」といっていた。
それでも里恵の声には不安が感じられた。

なにかある。
なにか起きる。
翔太郎は胸騒ぎがした。
手にまで汗をかいている。
汗は暑さのためではない。
前日光高原といわれる地名が示すように確かに日光の隣町だ。
でも鹿沼そのものは低地にある。
もう初冬の寒さだ。
いくらエアコンをつけているからといって。
それほど暖房がきいているわけがない。

恐怖だった。
恐怖で汗をかいていた。



 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鹿沼市小学生六名死亡事故/麻... | トップ | 鹿沼クレーン車事故/瞬間睡眠... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事