田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鹿沼の怪談(2)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-06 06:24:47 | Weblog
2

「万引きとまちがえられたの」
「なにいってるんだ。いまレジで払ってきたじゃないか」
「だからレジまで、その店員さんをつれていったの」
「分かったんだろう」
「レジのひともおどろいていた」
「分かってもらえたんだろう」
「はい」

レジの女の子は「もしかすると愛人ですか」などと妻にきいたことがある。
顔みしりだった。
翔太郎の体躯や風貌と、
妻の智子があまりに対照的だからだ。
若やいで見える。
それが20歳も若く見られる。
田舎町だ。
愛人ですかという質問となる。
稀には、
「にどめのかあちゃんけ?」
などと聞かれる。
 
サービスカウンターでレジ袋をもらおうとした。
「レシート見せてください」
とカウンターの店員にいわれた。
「みつからなかったのよ」
翔太郎に食パンや大根を買ったレジ袋をわたしてあるのが思い浮かばなかった。
そのレジ袋のなかにレシートは入っていた。
頭が真っ白になった。
そしてパニック状態になった。
それはそうだろう。
万引きとまちがえられるなんて……。

「バカにしている。
あんたんとこは、
レジ袋をもらいに来たお客に、
いちいちレシートの提示をもとめるのか」
翔太郎は智子を万引き呼ばわりした店員の所に抗議にいった。
きょとんとしている。

「このひとよ。まちがいない」
物静かな妻の声が尖っている。
あっけにとられている。
太った店員はけろんとしている。
じぶんがなにをいわれているのかわからない。
なにをしたのかも忘れている。
少し前にとった行動と言葉が記憶にないようだ。
レジの嬢はにこにこしている。
ここでもなにも起きてはない。

翔太郎は智子を視線の端でとらえていた。
智子がレジに急ぐのを、
まちがいなく目撃している。
ゾクッと背筋を恐怖がきりさいた。
まただ、
またおかしなことが始まった。

予感はあった。

それが現実となった。
翔太郎には負の遺産ともいえるイヤナ記憶がある。
闇の世界との戦い。
日常の世界が反転する。

四囲がすべて敵になる。

智子への攻撃はそのマエブレダ。
omenだ。

闇の世界の胎動を感じる。
負の世界からの攻撃がはじまった。


作者注 これは小説です。実際の街、商店、人物のモデルを探さないでください。
とくに、鹿沼の方、Fデパートはどこのことだ、などと詮索しないでください。迷惑がかかると困ります。純粋に虚構の世界をお楽しみください。



 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第五章 鹿沼の怪談/三億八千... | トップ | 鹿沼の怪談(3)/三億八千万年... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事