田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

MDZ(最危険地帯)/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-09-16 06:58:18 | Weblog
10

「あの音はなんですか……? この奥から聞こえてくる、あの音は……」
「あれはね」
 受付つけの少女がカウンターの下のスイッチを押した。
「ほら」
通路の奥にアルミ製らしい無機質な光りの扉。
明かりがついたのでよく見える。
扉にはMDZと真紅の文字。
「MOST DANGEROUS ZONEの頭文字です。
おわかりでしょうが――最危険地帯です。
自傷願望のあるヒトしかとおすわけにはいかないのですよ」
「わたしたち……そんな願望ないシ」
百子があわてていうと翔子の手をひく。
百子に止められなかったら、
翔子は非常扉を開けさせかねない剣幕で、
通路のおくをにらんでいた。
翔子には扉の向こう側が見えていた。
この通路は霊園の地下までつづいている。
信子とカレンはそこにいる。
はやく、はやく助けに行かないとふたりの命が危ない。
「だめよ」
「どうして」
「だめ。わたしたち忍びは敵地から生きて帰ることが大切なの。
勝てない戦いははじめからしない。わかった」
「そんなのわかんない」
「それにふたりがあの奥、
霊園の地下に拉致されているといいきることができるの」
百子は翔子の手をひいて飲み屋街を通り、街にもどった。

翔子の耳にはまだあのものを引きずるような音が残っていた。




 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 赤いアミュレット/さすらいの... | トップ | 桜田門外の業物/さすらいの塾... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事