田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

眠られぬ夜に  麻屋与志夫

2022-08-26 06:28:55 | 超短編小説
久しぶりで超短編です。
妻の絶叫で夜半起きてしまいました。
眠られぬまま、しかたなく超短編をを書きました。

絶叫
将平の妻が深夜絶叫した。
「夢だ。夢だよ」
「ちくわに食べられた夢をみたわ」
夕食のおかずはちくわだった。さらっと油でいため青さ粉をふりかけたので磯のにおいがしておいしかつた。
将平はちくわにじぶんの背骨をイメージした。穴があき、くず折れそうだ。
「バックボーンのしっかりした少年だ」
恩師にほめられたことがあった。
いまはもはやガクガク、曲がりだした。そのうち九十度くらいに曲がって、地面を舐めるような歩行姿勢になるだろう。
それにしてもちくわの夢なんてwet dreamじゃないのかな。
女性の場合はなんていうのだろうな?
将平より二回りも若い妻はすやすやと寝息をたてている。

少年や
「少年や六十年後の春のごとし」耕衣
六十年さらに角兵衛春の風、将平は嘯いていた。還暦の六十なんて、まだまだ若い。そして、若い妻と結婚した。
いまが青春。がんばるぞ。
カクベイとは将平が社長をいまだに勤めている株屋では、相場が倍になるという隠語だ。
長生きするのも楽じゃないな。はたして、幾つまで生きられるのだろう。

公園のベンチにて
公園のベンチに座っていると最近よく老婆に声をかけられる。
「お幾つですか?」
「三十歳です」
驚いている老婆に、「還暦が過ぎてから」とつけくわえた。耄碌爺とは思われたくない。
「あら、わたしではダメね。十二歳ですもの」
エスプリの効いたこたえがもどってきた。さすが生き馬の目をぬくといわれる兜町だ。
この辺りは、男女を問わず株屋がおおい。
生き馬の目をぬいて、またこっそり戻しておくくらいの芸をもった連中がわんさかいる。
老婆も、株式仲買人だったのかもしれない。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勉強になります。 (種吉)
2022-08-27 07:55:28
おはようございます。
超短編、拝読させていただきました。
この十年でやたら長いものを、だらだら書き続けるくせがついてしまいました。
先生から短めのものを書きなさいと言われたことは憶えていますが、ぴりっとして山椒の利いたお話はなかなか描けません。俳句が思うようにいかないのはそのためでしょうね。
処暑を過ぎ、季節はしだいに秋めいてくるのでしょうが、近頃の天候不順。奥様ともどもご自愛ください。
返信する
勉強になります。 (種吉)
2022-08-27 07:55:28
おはようございます。
超短編、拝読させていただきました。
この十年でやたら長いものを、だらだら書き続けるくせがついてしまいました。
先生から短めのものを書きなさいと言われたことは憶えていますが、ぴりっとして山椒の利いたお話はなかなか描けません。俳句が思うようにいかないのはそのためでしょうね。
処暑を過ぎ、季節はしだいに秋めいてくるのでしょうが、近頃の天候不順。奥様ともどもご自愛ください。
返信する
Unknown (麻屋)
2022-08-27 08:25:44
コメトありがとう。
超短編は「居合切り」のようなものだと思います。
サッと、書く題材に近寄り、さっと切ります。
切り口が新鮮なほどいい作品が書けます。
頑張ってください。
これは書けるという題材、創作の対象を探す習慣をつけてください。
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