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そしていまこの現在の尾形の廃墟は。
――60年前のと。
シンクロニシテイとして――
存在している。
同じ場所に同時に。
ふたつの空間がある。
この国の敗戦からたしかに半世紀以上もたっているのに。
ここにはあの頃のの意識が生きている。
過去と現在が同時存在としていまここにあらわれている。
こので死んでいった女人たちのエネルギーを三人は吸収していた。
「翔太。これが使えるか?」
勝平は孫にボウガンをわたした。
九尾神社の境内には勝平が持参した。
金属の工具箱が置かれていた。
工具ではなく武器がつまっていた。
「うん。日光の野外公園でウッタことがある」
「こんどは、標的はいきものだ。おもいきりよく射撃するのだ」
「非情なきもちになればいいんだね」
〈非情〉などというおとなびたことばを使った。
翔太。勝平は頼もしそうに孫を眺める。
「試射してみろ!!」
翔太は境内の石の柵まで歩いた。
水車の屋根にカラスが止まっている。
きょろきょろとこちらを窺っている。
「みごとだ」
カラスは矢風におどろいた。
飛びだった。
「わざとはずしたな」
勝平がほほえんだ。
ムヤミヤタラ、殺生をしない。
そのやさしい心根がうれいかった。
「だが!? これからの実戦では……」
「わかっているよ」
孫ともども、体のすみずみに力が漲ってくる。
が、この場所が勝平を招いた。
妻の並子が、生まれた村だ。
幼い並子と出会った森のある村落だ。
幼い並子の耳たぶを陽光が透かしていた。
薄いピンクにそまっていた。美しかった。
決戦の場にのぞんで、勝平は亡き妻との出会いをおもっていた。
並子。
きれいだったよ。
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勝平は孫にボウガンをわたした。
九尾神社の境内には勝平が持参した。
金属の工具箱が置かれていた。
工具ではなく武器がつまっていた。
「うん。日光の野外公園でウッタことがある」
「こんどは、標的はいきものだ。おもいきりよく射撃するのだ」
「非情なきもちになればいいんだね」
〈非情〉などというおとなびたことばを使った。
翔太。勝平は頼もしそうに孫を眺める。
「試射してみろ!!」
翔太は境内の石の柵まで歩いた。
水車の屋根にカラスが止まっている。
きょろきょろとこちらを窺っている。
「みごとだ」
カラスは矢風におどろいた。
飛びだった。
「わざとはずしたな」
勝平がほほえんだ。
ムヤミヤタラ、殺生をしない。
そのやさしい心根がうれいかった。
「だが!? これからの実戦では……」
「わかっているよ」
孫ともども、体のすみずみに力が漲ってくる。
が、この場所が勝平を招いた。
妻の並子が、生まれた村だ。
幼い並子と出会った森のある村落だ。
幼い並子の耳たぶを陽光が透かしていた。
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決戦の場にのぞんで、勝平は亡き妻との出会いをおもっていた。
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