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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

勝平、亡き妻をおもう イジメ教師は悪魔に顔/麻屋与志夫

2011-10-14 13:35:06 | Weblog
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そしていまこの現在の尾形の廃墟は。
――60年前のと。
シンクロニシテイとして――
存在している。
同じ場所に同時に。
ふたつの空間がある。

この国の敗戦からたしかに半世紀以上もたっているのに。
ここにはあの頃のの意識が生きている。
過去と現在が同時存在としていまここにあらわれている。
こので死んでいった女人たちのエネルギーを三人は吸収していた。

「翔太。これが使えるか?」
勝平は孫にボウガンをわたした。
九尾神社の境内には勝平が持参した。
金属の工具箱が置かれていた。
工具ではなく武器がつまっていた。

「うん。日光の野外公園でウッタことがある」
「こんどは、標的はいきものだ。おもいきりよく射撃するのだ」
「非情なきもちになればいいんだね」

〈非情〉などというおとなびたことばを使った。
翔太。勝平は頼もしそうに孫を眺める。

「試射してみろ!!」

翔太は境内の石の柵まで歩いた。
水車の屋根にカラスが止まっている。
きょろきょろとこちらを窺っている。

「みごとだ」

カラスは矢風におどろいた。
飛びだった。

「わざとはずしたな」

勝平がほほえんだ。
ムヤミヤタラ、殺生をしない。
そのやさしい心根がうれいかった。

「だが!? これからの実戦では……」
「わかっているよ」

孫ともども、体のすみずみに力が漲ってくる。
が、この場所が勝平を招いた。
妻の並子が、生まれた村だ。
幼い並子と出会った森のある村落だ。
幼い並子の耳たぶを陽光が透かしていた。
薄いピンクにそまっていた。美しかった。
決戦の場にのぞんで、勝平は亡き妻との出会いをおもっていた。
並子。
きれいだったよ。


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