第二十章 酒の谷唄子
3
「女は男に染まりやすいからな」
「ジイちゃん。いまは女性といったほうがいいのよ」
「これは美智子にいっぽんとられたな」
自由が丘に唄子をかくまった。
美智子のところなら、マスコミにはかぎつけられないだろう。
しられても、庭が広いからはいってはこられない。
門扉を閉ざす。
プライバシーは守られる。
美智子も直人の死後。
そうして耐えてきた。
ひとりひっそりと生きてきた。
ひとは世を忍び、孤独に耐えてこそ。
おおきく成長する。
モノの見方がおおきくかわる。
ひととの付き合い方が変化する。
ひとりでいる寂しさ。
世の中にとりのこされた。
みんなに忘れられた。
もうがまんできない。
精根尽き果てた。
もうだめ。
それでもさらに深い孤立感がある。
隠れ忍。
しのぶ生活にはさらに底がある。
そこなしに落ちていく。
深い絶望のはてに光りはさす。
光のとどかない闇はない。
「わたし、マトリガールズとしてはじめてバイ人つかまえた」
キリコがドヤ顔でいう。
歌舞伎町でのことを話す。
「男は女性をつなぎとめておくために……麻薬をすすめる。
いずれにしても、麻薬を取り締まるキリコさんの仕事は高く評価されるべきだ」
それだけいうと翔太郎も唄子の寝ている二階に上がっていった。
「それにしたも、あれほど堂々と麻薬の売買がされているとは、おどろきだった」
と隼人。
「それに吸血鬼がからんでいるから、複雑なのよ」
キリコがめずらしく吐息をもらす。
「こめんね。美智子さん。
唄子さんのことで頭がいっぱいなのに。仕事の話して」
「そんなことはないわ。キリコさんがんばっている。リッパヨ」
このとき。
バリン。
と。
ガラスの割れる音。
「二階よ!!」
隼人もキリコも動いていた。
二階の階段を駈けあがった。
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「女は男に染まりやすいからな」
「ジイちゃん。いまは女性といったほうがいいのよ」
「これは美智子にいっぽんとられたな」
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美智子のところなら、マスコミにはかぎつけられないだろう。
しられても、庭が広いからはいってはこられない。
門扉を閉ざす。
プライバシーは守られる。
美智子も直人の死後。
そうして耐えてきた。
ひとりひっそりと生きてきた。
ひとは世を忍び、孤独に耐えてこそ。
おおきく成長する。
モノの見方がおおきくかわる。
ひととの付き合い方が変化する。
ひとりでいる寂しさ。
世の中にとりのこされた。
みんなに忘れられた。
もうがまんできない。
精根尽き果てた。
もうだめ。
それでもさらに深い孤立感がある。
隠れ忍。
しのぶ生活にはさらに底がある。
そこなしに落ちていく。
深い絶望のはてに光りはさす。
光のとどかない闇はない。
「わたし、マトリガールズとしてはじめてバイ人つかまえた」
キリコがドヤ顔でいう。
歌舞伎町でのことを話す。
「男は女性をつなぎとめておくために……麻薬をすすめる。
いずれにしても、麻薬を取り締まるキリコさんの仕事は高く評価されるべきだ」
それだけいうと翔太郎も唄子の寝ている二階に上がっていった。
「それにしたも、あれほど堂々と麻薬の売買がされているとは、おどろきだった」
と隼人。
「それに吸血鬼がからんでいるから、複雑なのよ」
キリコがめずらしく吐息をもらす。
「こめんね。美智子さん。
唄子さんのことで頭がいっぱいなのに。仕事の話して」
「そんなことはないわ。キリコさんがんばっている。リッパヨ」
このとき。
バリン。
と。
ガラスの割れる音。
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隼人もキリコも動いていた。
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