田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

まだ狙われていた/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-11 07:59:17 | Weblog
第二十章 酒の谷唄子

3

「女は男に染まりやすいからな」
「ジイちゃん。いまは女性といったほうがいいのよ」
「これは美智子にいっぽんとられたな」

 自由が丘に唄子をかくまった。
 美智子のところなら、マスコミにはかぎつけられないだろう。
 しられても、庭が広いからはいってはこられない。
 門扉を閉ざす。
 プライバシーは守られる。
 美智子も直人の死後。
 そうして耐えてきた。
 ひとりひっそりと生きてきた。
 ひとは世を忍び、孤独に耐えてこそ。
 おおきく成長する。
 モノの見方がおおきくかわる。
 ひととの付き合い方が変化する。
 ひとりでいる寂しさ。
 世の中にとりのこされた。
 みんなに忘れられた。
 もうがまんできない。
 精根尽き果てた。
 もうだめ。
 それでもさらに深い孤立感がある。
 隠れ忍。
 しのぶ生活にはさらに底がある。
 そこなしに落ちていく。
 深い絶望のはてに光りはさす。
 光のとどかない闇はない。

「わたし、マトリガールズとしてはじめてバイ人つかまえた」
 キリコがドヤ顔でいう。
 歌舞伎町でのことを話す。
「男は女性をつなぎとめておくために……麻薬をすすめる。
いずれにしても、麻薬を取り締まるキリコさんの仕事は高く評価されるべきだ」
 それだけいうと翔太郎も唄子の寝ている二階に上がっていった。

「それにしたも、あれほど堂々と麻薬の売買がされているとは、おどろきだった」
 と隼人。
「それに吸血鬼がからんでいるから、複雑なのよ」
 キリコがめずらしく吐息をもらす。
「こめんね。美智子さん。
唄子さんのことで頭がいっぱいなのに。仕事の話して」
「そんなことはないわ。キリコさんがんばっている。リッパヨ」
 
 このとき。
 バリン。
 と。
 ガラスの割れる音。
「二階よ!!」
 隼人もキリコも動いていた。
 二階の階段を駈けあがった。


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