田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ネズミ男の猫の手 麻屋与志夫

2009-12-28 08:55:15 | Weblog
12月28日 月曜日

●カミサンがいそがしく立ち働いている。小柄な彼女がコマネズミのようにせわしなく、ゲームの世界でのようにカチカチ、チカチカ部屋から部屋へと移動しているのを見るのは楽しいものだ。と……まあ、息せき切って大掃除をしている彼女の、なんの手だすけにもならないバカ亭主は勝手なことをむだなことを、のたまうく。「コマネズミのように、という修飾語がよく合うよ」

●カミサンが働いているのにコタツから立ち上がろうともしない。これでよく年末のゴミといつょに掃きだされないものだ。この掃きだす、だってとうの昔に死語になっている。おどろいたことに死語だってすぐにはパソコンからよびだせなかった。はじめは四五とでた。そこはホレ、カシコイハルのことだから二度目からはチャンと死語とでた。

●箒をつかって掃除することなど、放棄されてしまったご時世だ。わが町の特産物は鹿沼箒と鹿沼麻と鹿沼そばなどといっても、いまではソバだけしか知られていない。「あなたのおそばにわたしを置いて」と、嫁入り道具だった箒。結納品にも必ず麻が入っていた。いまでは黄色いビニールの切れ端みたいなものがはいっている。伊勢神宮の「神宮大麻」、身心の罪穢を祓い清める「祓具」であった大麻。それが、ああなんたることか嘆かわしい。大麻といえば芸能界のバカどもの今年の大麻騒ぎ、このへんで最後の大麻商の誇りにかけても、鹿沼麻の、その業界の栄枯衰勢を書いておきたいな。

●そんなことを考えて、コタツからカミサンを眺めている。まあよく動きまわること。「部屋が在りすぎるのよ」どこか遠くで声がする。声はするが姿は見えず。というところだ。ともかく25メートルプールの長さだけある家だ。隙間風がふきわたるボロヤだ。広いだけが自慢だ。塾の教室が二部屋ある。一部屋12坪ある。部屋数……たぶん、数え方にもよるが16部屋はある。それを小柄なカミサンがゼーンブ掃除するのだ。
「太る暇ないわよ」そうだろうな、すまないなと思い、ことしからすこしは重い腰をあげるようにしている。

●昨夜テレビで見た「二人羽織」のことをのんびりと話していた。
「後ろから手を出してもらい、わたしも手をだして、それでもたりない。猫の手も借りたいわ」
「それはむりだ。おれはネズミ男だ」と次第に薄くなった頭髪のため、寒さにかぶっている目だし帽のなかから言おうとしたがやめた。どうも親父ギャグをとばしている情勢ではない。粗大ごみにされないためにも、と……こんどこそ、重い腰をあげた。



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