田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

黒髪キリコ/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-03-28 03:50:16 | Weblog
3

キリコは全裸だった。
腰まで長くのびた黒髪が。
隠すべきところはかくしている。
空蝉の術の応用。虚体投影だろう。
キリコの実体はその辺のもの影に穏業している。

声をきいただけで、キリコがそこにいるように錯覚してしまう。
サル彦もじっと目前に目線を向けている。
キリコの声とサル彦の視線。
呼吸のあったふたりの技に隼人は化かっている。

真赤な顔になったサル彦は少女の言葉にひるまず、突き技にでた。
隼人の体に触れるほどかけよる。
突きではない。
ヒッカク。
さっと顔面を爪がおそう。
避けきれなければ目玉をくりぬかれる。
鼻がもがれる。
耳がちぎられる。
そうした恐怖があった。

隼人はそれらすべての攻撃を紙一重でかわしきっている。

「オジイチャン。もういいから。ヤメテェ」
 
サル彦とキリコにダブっている。
ふたりの背後に戦う人影がダブっている。

榊一族と黒髪族との姿が見える。
戦っている。
戦い続けてきた。
でも、榊、黒髪の一族はいつでも敵味方に分かれているのではない。
共通の敵がいる。
その敵の姿は――まだ隼人には見えるわけがない。
ほんとうの宿敵の影が隼人には見えていない。
 
次元のちがう場所での戦闘だ。
隼人は瞬時、リアル空間からjumpした。
過去の時空での戦場が。
サル彦とキリコの背後に映し出されている。

トツゼン歪んだ時空間。
その歪みの中にあわれた戦場に隼人はいた。
これは!! 
隼人はイルージョンを見ている。

隼人は鼓膜をふるわせるのようなときの声。
大きな波のように押し寄せる武者たちの中にいた。
だが。
武者の群れは、隼人の体を透かして走り去る。
隼人の脳裡に現れている戦場。
黒髪のものと、榊一族は巨大な敵に向かって共に闘っている。
共闘しているのだった。

その敵は――。



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