田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

帰還/吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-07-19 10:21:17 | Weblog
23

 先生が彩音と慶子に話しかけ。
 ふたりは、先生の後から教室を横切る。
「いよいよだよ、彩音。ヤツラの侵攻がはじまったよ」
 黒板の裏の部屋。文美おばあちゃんがいた。
 めったに外出しないおばあちゃん。
 おおきなソフアにちょこんと、おすわりをしていた。
 背筋をピンとのばしている。
 足をださず、畳にすわっている姿勢だ。
 和服で、だからもちろん足袋をはいている。
 カッコイイ。
 まだなにがなんだか、彩音にはわからない。
 話題が、どんどんゲームの世界におちていく。
「文音。百年ぶりの吸血鬼の侵攻がはじまったの」
「わたし……いないほうがいいみたい」
 と慶子が気を使う。
「ところがちがうようだ。幸橋を行き来する女工を幻視したってことは、慶子もこちら側の人間だってことだ。吸血鬼とたたかう資格がある。調べれば、先祖がどこかでわたしたちはつながっているはずだ」
「まず見えることが大切なのよ。慶子ちゃん」
 文美が自分の孫に呼びかけるように、優しくいう。
「この街は昔から吸血鬼の侵攻をうけてきたの。だから鹿沼と宇都宮の堺の長岡街道沿いに『百穴』という古墳があるだろう。大谷石と同じ凝灰岩に南向きに穴を穿って遺体を埋葬したのよ。日光が燦々と照りつける場所に住み、死んでからも日向に埋葬してもらうのが万葉のころからのこの土地のひとたちのねがいだったの」
 死体が吸血鬼に汚染されていても、強すぎる紫外線にあたって再生できない。
「吸血鬼は日の光りをきらうからな」
 なんだか、社会科の勉強をしているようだ。
 飛鳥万葉の時代の話しがとびだしてきた。
 一般のひとには、見えないだけ。
 見えていないだけ。だから幸せなのだと、アサヤのオッチャンがいう。
「オッチャンなんて失礼よ、麻屋先生はね、わたしの子供くらいの年よ。それに……」
「いや、このままでいい」
 なにか言いかけた文美を麻屋が制してる。
「へんなの」
 見えること。
 そしてヤツらの動きを感じることが必要なんだ。
 まるでこれでは講義だ、と彩音は思う。
 でも、吸血鬼の影は見えたがその微妙な動きまでは見切れなかった。

   7

 翌日の夜。
 慶子の家。
「輸血用の血液パックがぬすまれたのよ」
 夕食の会話にふさわしくない。

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