枝葉の説明が詳し過ぎ主題が不明確になるという、大薮教授のダメな論文のようにしないためには、現在、テーマのどの部分を紹介しているのかを、「ねこ庭」を訪問される方々にだけでなく、本人である自分が分かっていることが大切になります。
ここで初心に戻り、「政府説明資料」の目次を確認のため書き出します。現在は第二段階が終わり、赤字で表示した第三段階にかかろうとする位置にいます。
【 1 】日本国憲法の制定過程の概観
第一段階 マッカーサー草案の提示まで
第二段階 マッカーサー草案提示後~日本国憲法の制定まで
第三段階 日本国憲法制定
【 2 】日本国憲法の制定過程に関する主な論点 ( 日本国憲法の制定経過を問題視する主張について )
論点1 改正の限界論をめぐる議論との関係·
論点2 憲法の自律性(いわゆる「押しつけ憲法論」)
論点3 ハーグ陸戦法規との関係
【 3 】日本国憲法の制定過程に関するこれまでの議論
1 衆議院憲法調査会における議論
2 内閣の憲法調査会における議論
え、まだこんなところでウロウロしているのかと、びっくりされる方がいるのかもしれません。あるいは目次を見ただけで、うんざりし「ねこ庭」を離れていく方がいるのかもしれません。
しかし私は驚きもしませんし、シリーズをやめる気もありません。「憲法改正」が簡単なことなら、79年間もそのままになっているはずがありません。国会での激論だけでなく、それ以外の場所で保守と反日勢力が争い、死傷者まで出して衝突をし、それでも「憲法改正」は実現しません。
対立する保守と反日の双方に言い分があり、二つの正義がぶつかっているため、簡単に結論が出ません。その困難な「憲法問題の制定過程」を政府が説明しているのですから、簡単に終わると考える方がおかしいのです。
日本一頭の良い政府官僚諸氏が知恵を絞った説明資料を、普通の頭しかない「ねこ庭」の住人が紹介するのですから、シリーズが簡単に終われるはずがありません。
そんなことは分かっているから、長い前口上を止め早く説明をしろと、怒っている方の声を信じて、「 第三段階 日本国憲法制定」の紹介に入ります。
息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々を安心させるために言いますと、第三段階の内容は下記の 2項目しかありません。
1. 極東委員会決定とマッカーサー書簡
2. 日本国内における憲法改正の検討の動き
項目のタイトルは簡単で、政府の説明文も長くありません。しかしこの説明文の中には、戦後79年間の国民の汗と涙が閉じ込められています。
二、三行読むたびに、日本の戦後史という大河に浮かんでは消えた多くの人々の姿が見えてきます。
シリーズの6回目で生じた心境の変化を、今回も述べなくてなりません。
・戦後史という大河の流れに望んで眺めれば、これらの人々は皆日本の国民です。
・聖徳太子の言葉を借りて言いますと、意見が違っても争っていても、「和をもって尊しとなす」です。
・お互いの存在を認め合うのが本来の日本人ですから、「ねこ庭」も聖徳太子を見習おうと努力しています。
・戦後史の大河に消えた多くの政党と、故人となった政治家たちの名前と顔を考え、悲喜交々の人間模様を知りましたので、過去の個々人を憎む気持だけは捨てました。
右か左か、保守か反日かと、物事が二つに分けられない複雑さを、「政府説明文」を読む過程で改めて知りました。
「ねこ庭」ではこのシリーズ以前、南原東大総長を反日左翼の親玉として批判攻撃していましたが、違う顔を知りました。息子たちのためには、リベラリストとしての氏の意見も紹介しておく必要を感じます。
大薮教授の論文を超える、まとまりのない話になるのを覚悟し、南原氏の国会発言を紹介します。
〈 昭和21年8月27日 貴族院本会議での吉田首相への質問 〉
・歴史の現実を直視して、少くとも国家としての自衛権と、それに必要なる最小限度の兵備を考へるということは、是は当然のことである
・将来日本が国際連合へ加入する場合、国連憲章で認められた自衛権と、国連軍への兵力提供義務の双方を放棄するつもりなのか
・また講和会議においても、最小限度の防衛をも放棄するのか
・もしそれならば、既に国家としての自由と独立を自ら放棄したものと選ぶ所はない
この質問は、新憲法案の「戦争放棄条項」についてのもので、これに対する吉田首相の発言があの有名な「曲学阿世の徒」です。「ねこ庭」にとっては、南原総長も吉田首相も歴史の大河に消えた人々、ご先祖様です。聖徳太子の教えを真似ようと、努力しています。
「戦後史という大河の流れに臨んで眺めれば、これらの人々は皆日本の国民です。」
支離滅裂のシリーズとなりましたが、次回は「 第三段階 日本国憲法制定」の紹介に入ります。