〈 4. 「マッカーサー草案」の提示 〉
・完成した総司令部案 ( いわゆる「マッカーサー草案」 ) は、2月13日に日本政府 に手渡された。
・この会談には、日本側から吉田茂外務大臣、松本烝治国務大臣等が出席したが、その席上、総司令部側から、松本委員会の提案は全面的に承認すべからざるものであり、
・その代わりに、最高司令官は基本的な諸原則を憲法草案として用意したので、この草案を最大限に考慮して憲法改正に努力してほしい、という説明があった。
・総司令部案は、国民主権を明確にし、 天皇を「象徴」としていたほか、戦争の放棄を規定、貴族院の廃止及び一院制の採用等を内容とするものであった。
1. 国民主権と天皇について
主権をはっきり国民に置く。天皇は「象徴」として、その役割は社交的な君主とする。
2. 戦争放棄について
マッカーサー三原則における、「自己の安全を保持するための手段としての戦争」をも放棄する旨の規定が削除された。
3. 国民の権利及び義務について
(1) 現行憲法の基本的人権がほぼ網羅されていた。
(2) 社会権について詳細な規定を設ける考えもあったが、一般的な規定が置かれた。
4. 国会について
(1) 貴族院は廃止し、一院制とする。
(2) 憲法解釈上の問題に関しては最高裁判所に絶対的な審査権を与える。
5. 内閣について
内閣総理大臣は国務大臣の任免権が与えられるが、内閣は全体として議会に責任を負い、不信任決議がなされた時は、辞職するか、議会を解散する。
6. 裁判所について
(1) 議会に三分の二の議決で、憲法上の問題の判決を再審査する権限を認める。
(2) 執行府からの独立を保持するため、最高裁判所に完全な規則制定権を与える。
7. 財政について
(1) 歳出は、収納しうる歳入を超過してはならない。
(2) 予測しない臨時支出をまかなう予備金を認める。
8. 地方自治について
首長、地方議員の直接選挙制は認めるが、日本は小さすぎるので、州権というようなものはどんな形のものも認められない。
9. 憲法改正手続について
反動勢力による改悪を阻止するため、10年間改正を認めないとすることが検討されたが、できる限り日本人は自己の政治制度を発展させる権利を与えられるべきものとされ、そのような規定は見送られた。
「マッカーサー草案」を日本政府が認めなければ、昭和天皇が戦争犯罪人として処刑されると、ホイットニー民政局長が政府を脅したのは有名な話です。
政府資料を読みますと、「押しつけ憲法論」を疑う人はいなくなります。中西教授も兵頭氏も間違っていませんが、これがやがて「日本国憲法」は日本人が自主的に作ったと、話が逆転します。
敗戦国となった日本の混乱とご先祖の苦労が、これから語られますので、日本を愛する国民の方は次回も「ねこ庭」へ足をお運びください。