ねこ庭の独り言

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憲法制定過程に関する、政府の資料 - 4

2024-08-23 12:58:29 | 徒然の記

 〈 4. 「マッカーサー草案」の提示 〉

   ・完成した総司令部案 ( いわゆる「マッカーサー草案」 ) は、2月13日に日本政府 に手渡された。

  ・この会談には、日本側から吉田茂外務大臣、松本烝治国務大臣等が出席したが、その席上、総司令部側から、松本委員会の提案は全面的に承認すべからざるものであり、

  ・その代わりに、最高司令官は基本的な諸原則を憲法草案として用意したので、この草案を最大限に考慮して憲法改正に努力してほしい、という説明があった。

  ・総司令部案は、国民主権を明確にし、 天皇を「象徴」としていたほか、戦争の放棄を規定、貴族院の廃止及び一院制の採用等を内容とするものであった。

  ・日本側は、突如として全く新しい草案を手渡され、それに沿った憲法改正 を強く進言されて大いに驚いた。
 
  ・そしてその内容について検討した結果、 松本案が日本の実情に適するとして総司令部に再考を求めたが、一蹴されたので、総司令部案に基づいて日本案を作成することに決定した。
 
  ・ 上述のとおり、「マッカーサー草案」が提示され、この草案を指針として日本国憲法が作成されたことについて、現行憲法は「押しつけられた」非自主的な憲法であるとの見解がある。(【参考】いわゆる「押しつけ憲法論」 ) 
 
 本文の中に「参考」や「注書」が挿入されるので読みにくいのですが、正確さと言う点ではありがたい説明です。いかにも政府の役人らしい、律儀な資料作りがされています。「押しつけ憲法論」の存在についても、取り上げられています。
 
 「ねこ庭」も政府に協力して、最後の資料編の中にある「マッカーサー草案」を紹介します。日本の戦後史と「憲法問題」に関心のある人ならびっくりする内容ですが、勉強不足の学者や評論家、政治家はおそらく知りません。「ねこ庭」の住民である私は勉強不足の仲間なのに、びっくりしています。
 
 〈 「マッカーサー草案」の主な内容 〉

   1.   国民主権と天皇について

          主権をはっきり国民に置く。天皇は「象徴」として、その役割は社交的な君主とする。

   2.  戦争放棄について

          マッカーサー三原則における、「自己の安全を保持するための手段としての戦争」をも放棄する旨の規定が削除された。

   3.   国民の権利及び義務について

      (1) 現行憲法の基本的人権がほぼ網羅されていた。

      (2) 社会権について詳細な規定を設ける考えもあったが、一般的な規定が置かれた。

   4.   国会について

   (1) 貴族院は廃止し、一院制とする。

   (2) 憲法解釈上の問題に関しては最高裁判所に絶対的な審査権を与える。

   5.  内閣について

  内閣総理大臣は国務大臣の任免権が与えられるが、内閣は全体として議会に責任を負い、不信任決議がなされた時は、辞職するか、議会を解散する。

  6.   裁判所について

  (1) 議会に三分の二の議決で、憲法上の問題の判決を再審査する権限を認める。

  (2) 執行府からの独立を保持するため、最高裁判所に完全な規則制定権を与える。

 7.   財政について

  (1) 歳出は、収納しうる歳入を超過してはならない。

  (2) 予測しない臨時支出をまかなう予備金を認める。

  (3) 宗教的活動、公の支配に属さない教育及び慈善事業に対する補助金を禁止する。

 8.   地方自治について

  首長、地方議員の直接選挙制は認めるが、日本は小さすぎるので、州権というようなものはどんな形のものも認められない。

 9.   憲法改正手続について

  反動勢力による改悪を阻止するため、10年間改正を認めないとすることが検討されたが、できる限り日本人は自己の政治制度を発展させる権利を与えられるべきものとされ、そのような規定は見送られた。

 「マッカーサー草案」を日本政府が認めなければ、昭和天皇が戦争犯罪人として処刑されると、ホイットニー民政局長が政府を脅したのは有名な話です。

 政府資料を読みますと、「押しつけ憲法論」を疑う人はいなくなります。中西教授も兵頭氏も間違っていませんが、これがやがて「日本国憲法」は日本人が自主的に作ったと、話が逆転します。

 敗戦国となった日本の混乱とご先祖の苦労が、これから語られますので、日本を愛する国民の方は次回も「ねこ庭」へ足をお運びください。

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