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カレル・オルフレン ( 読後に、手放せなくなった本 )

2013-09-14 17:33:27 | 徒然の記

 カレル・オルフレン著『なぜ日本人は、日本を愛せないのか』( 平成10年刊 毎日新聞社 )、を読み終えた。

 図書館で貰って来た廃棄図書の一冊だが、有価物のゴミとしてなどとてもできない。むしろ本棚に納め、息子たち、欲を言えば成人した孫たちにも読んでもらいたい本だ。副題が「この不幸な国の行方」と付けられ癪に触ったが、読後は手放せない本となった。

 12ページほど読んだところで、ハタと思い出した。年寄りの仲間に加わりつつあるとしても、記憶力はまだシッカリしている。オランダ人の新聞記者である彼の本を読んだのは、確か去年の12月だった。題名は忘れたが、あの時も、彼の意見に驚かされ反感さえ覚えたのに、読むうちにうなづいてしまった。

 日本は自由義の国で、民主主義国家の一員であると疑問を抱かなかった私を、彼は頭から否定した。

 「日本は役人とマスコミに支配された、官僚社会主義国家だ。」

 そんなことは一度も考えていなかったので、衝撃だった。北朝鮮や韓国・中国ならまだしものこと、日本が「この不幸な国」だなど、とんでもない中傷と腹を立てながら読んだ。読んでいると、今度もまた洗脳された。北朝鮮や韓国・中国のことを冷笑する前に、自分の頭の上の蠅を追うのが先決と反省させられた。

 「愛国心に関する日本人の概念の混乱は、永遠に続くのかとも思える、」「時代遅れの政治的分裂が、この国にしょいこませてきたものだ。」「すなわち、政治上の右翼と左翼という区別のことである。」

 私は、氏の言葉に惹きつけられた。

 「この悲しい時代錯誤の状況が、政治制度の改革にとって大きな障害となっている。」「もっと日本を愛せと、右翼が大声を張り上げれば、そんな愛は極めて危険と左翼がやかましく騒ぎ立てる。」

 「互いの態度を非難し合うことで生じる、この騒々しい不毛な対立が、多くの真面目な議論の邪魔立てをしている。」「左右両派の相互不信が、諸問題の解決を阻む大きな障害となっている。」「これを完全な、知的麻痺状態と言えば言いすぎかもしれないが。」

 この状況を称して、彼が「日本を不幸な国」というのなら、一も二もなくうなづかされる。次の意見は、私の実感と悲しいまでに一致する。

 「知識人や新聞編集者は、全体としてあまりに怠惰で、こうした事実をまともに捉えようとしていない。」「知識人と新聞が、もっぱら現秩序を擁護している理由は、彼らが仕事をする環境の構造からきている。」

 「記者クラブ制度、ジャーナリストが別の新聞社へ移れない現実、出版界の序列と出身大学の序列、審議会委員になる特権など、その全てが、自由に考え自由に書く気風を抑制する効果がある。」「既成秩序を混乱させてしまうことへの恐怖心が、この抑制効果を、更に増幅させている。」

 だから日本のマスコミは、産經新聞という特殊な会社を別として、テレビも新聞も横並びの決まり文句しか並べない、ということなのだろうか。オルフレン氏に指摘されるまでもなく、無知な私でさえ感じていることを、わが国の知識人や新聞人が気づかない訳がない。

 知識人や新聞編集者たちが国民に伝えていない事例を示され、言葉を失うほどの衝撃を受けた。マスコミが何も語れない日本は、やはり「不幸な国」なのだろうか。

 「ここでもう一度、1995年初めの出来事に戻ってみよう。」「警察は何故、オウム真理教の犯罪活動をもっと早く発見できなかったのか。」「オウム教団と、オウムが製造した薬物の販売に手を貸した暴力団とは、どの程度のつながりがあったのか。そして、どのような形で警察は関与していたのか。」

 「警察庁長官を狙撃したのは、ほんとうは誰だったのか。多くの問いは、まだ答えられないままだ。」

 「地震に襲われた直後の神戸で、本当はなにがあったのか。たとえば、二つの街区を焼き尽くした、火事の背後にあつたカラクリとはなにか。」「どちらの街も、再開発計画の対象とされ、住民は頑強に抵抗していた。この地域で火の手が上がったのは、地震の5、6時間後、住民が避難したのちのことだった。消防署員が、消火活動をせずに車を磨いていたという複数の目撃証言がある。」

 「問題の地区から避難した人たちは、今でも疑いを捨て切れずにいる。」「こうした疑いについて、記事にすると約束して帰った記者たちは、編集長がこの話は扱いたがらないと通知してきたきりだった。」

 「市当局、暴力団、巨大な権力を持つ建設マフィアたち全員が、地震のずっと前より、都市計画担当者の机の引き出しにあった図面から、大きな利益を得ようと待ち構えていたのは秘密でもなんでもない。」

 こうした話を外国特派員たちが知っていても、私たち国民は蚊帳の外だった。まして神戸の不審な火災のことは、氏の本を読まなかったら永久に知ることはなかった。震災の悲惨さは沢山報道されたが、不可解な出来事はニュースになっていない。

 無責任な外国人記者のいい加減な話と、無視する者もいるだろうが、氏は単なる煽動家や、反日の暴露記者でない気がする。心を捉えて離さないものがあるから、明日も続きを書くことにする。

 彼の著作も、知識の空白を埋める一冊であることに間違いはない。

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