〈 日航機123便墜落事故に関する「ねこ庭」の意見 〉
ヴォーゲル氏の分析の中で「ねこ庭」が注目したのは、会社に対する捉え方でした。
日本における会社は社員と経営者の利益共同体で、いわば運命をともにする組織でした。しかし氏は、会社は経営者と社員だけのものでなく、会社に出資している株主のものでもあると考えています。
会社は利益を最大限に上げ、得た利益を最大限に株主に還元するのが役目だと言う考えです。氏の思考の基本にあるのは、人間社会は契約によって成り立つというルソー以来の伝統的な「社会契約説」だろうと思います。
だから氏には株主との約束を軽視する日本の会社の在り方が理解できず、次のように説明しています。
・日本の大企業は定年退職の年齢を、55才から60才の間に定めているが、大抵の人は退職後再就職が必要であり、会社としても、退職後の世話をするのが普通である。
・会社が従業員に与えるこうした特典の他に、会社の持っている寮、社宅、山の家、海の家やクラブ、といった施設を利用できるようにすることは、金銭には換算しにくいものである。
・こうした社員のための恩典は、東京の米国大使館に勤務している労働問題の専門家、ロバート・イトーマンが指摘するように、日本企業が費やす企業内福利厚生費の総額は、アメリカのそれよりはるかに多いことが明白である。
この指摘の重要性については後から述べるとして、最終章にある氏の言葉を紹介します。
・アメリカ人が現在、日本からの挑戦、更に今後は韓国、その他のアジアの国々からの挑戦にうまく対応できるかは、明らかではない。
・日本が成功したように、アメリカが良い社会を築くため、あと知恵でなく先見の明を持ち、場当たり的対応でなく事前に計画を立て、事態に対処できるようにという願いを込めてこの本は書かれたのである。
アメリカの政治家、企業人、特にウォール街に君臨する金融資本家たちは、真剣にこの本を読んだのではないでしょうか。
本が出版されたのは昭和54年の大平内閣の時ですが、それからのアメリカが、いかに計画的に日本潰しを行ったかは後の歴史が証明しています。
このままにしておくと日本経済はやがて米国を抜き、世界一になる気配でした。第二次世界大戦後のアメリカは、軍事力でも経済力でも世界の覇権国でしたから、それは我慢のならないことでした。
まして日本は戦争に敗れ、マッカーサーに統治され、二度とアメリカに太刀打ちできないよう「憲法」で軍備の全廃を誓わせた国です。
従ってこの時期のアメリカが、何が何でも日本を叩き潰そうと考えてもおかしくない・・というのが「ねこ庭」の推測です。
日米の貿易戦争そのものは、昭和44年の田中内閣の時から始まり、その幕開けが有名な日米繊維摩擦だったことを、覚えておられる方も多いと思います。
その後、鉄鋼、カラーテレビ、自動車、半導体の分野で摩擦が高まり、1980 ( 昭和55 ) 年代になると、農産物,コンピュータの貿易品目のみならず、建設,通信,金融,弁護士などのサービス分野にまで、日本の市場開放への米国の要求が強まってきました。
1985 ( 昭和60 )年の 8月中曽根内閣の時、偶然なのか、計画されたことだったのか、「日航機123便墜落事故」が発生しました。
当時の日本では、ロッキード事件で政界から追放されたとは言え、田中元首相の影響力が絶大で「闇将軍」と呼ばれるほどの力を持っていました。事故発生時の中曽根内閣がどういう状況にあったのかを、ウィキペディアで調べてみました。
・1985 ( 昭和60 )年の 2月、「田中曽根内閣」「直角内閣」と揶揄されるほど政権への影響力があった田中角栄が脳梗塞で長期入院。
・これにより、ポスト中曽根を狙う「ニューリーダー」らのパワーバランスの上に中曽根が立つ形となり、中曽根のリーダーシップが強化されることになる。
「ニューリーダー」というのは、中曽根氏の後を狙い頭角を表していた安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一の3氏でした。当時の政界用語で、安竹宮(あんちくぐう、あんちくみや)とも呼ばれていました。
田中氏が倒れたと言っても、中曽根氏の立場は盤石でなく、第二次中曽根内閣については、[ かろうじて再選された「田中曽根内閣」]という言葉があったほどです。
内閣の主要メンバーの顔ぶれを見ますとよく分かりますので、紹介します
金丸信 ・・幹事長
宮沢喜一 ・・総務会長
安倍晋太郎 ・・外務大臣
竹下登 ・・大蔵大臣
首相として何としても政治の実権を確立したい中曽根氏と、何が何でも日本を叩き潰そうと考えておかしくないアメリカが、「日航機123便墜落事故」を利用して何をしたのか。
読者数88人で、千葉の片隅て細々と発信している「ねこ庭」にしかできない、意見の発表ではないかと思います。
暴論、妄想、空想と酷評され、無視されることを願いながら、次回は〈日航機123便墜落事故に関する「ねこ庭」の意見〉を述べたいと思います。