ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『有事法制とアメリカの戦争』 ( グローバリズムと構造改革批判 )

2017-10-30 19:47:26 | 徒然の記

 自由法曹団編『有事法制とアメリカの戦争』( 平成15年刊 新日本出版社 )を、読みました。

  前回と同じく、左翼の弁護士 ( 6名 ) が書いた反日の書で、今から14年前の、小泉内閣時代の出版です。本が出されるきっかけが、前回同様「あとがき」で述べられていますので、紹介します。

 「平成15年1月末、米英軍はすでにイラク周辺に集結を開始していた。」

 「告発し断罪しなければならないのは、有事法制とイラクへの戦争、そしてその根底にあるブッシュ・ドクトリン。」

 「本書の構成は、直ちに決まった。」

 「それから一ヶ月余執筆者らは、ブッシュ大統領や小泉首相の演説へ、怒りに身を震わせ、2月14日の世界のピースウェーブや、3月8日の若者たちの行動に深い感動を覚えながらの執筆だった。」

 「戦争の道と平和の道が、真っ向から対立したこの一年は、同時にこの国の民衆の良識と力を、あますところなく示した一年でもあった。」

 「この良識と力によって、ブッシュドクトリンの  〈帝国の論理 〉や、それに追随するこの国の政府の戦争の道を打ち砕かねばならない。」

 「日本国憲法の前文が宣言した、平和が保障される世界を作り上げなければならない。そのために、共に闘おう。」

 「この国」というのが日本を指しているのだと、最初はわからず、米国のこととばかり思っていました。自分の国でも、よその国のように語るのが左翼だというのをスッカリ忘れていました。

 6名の執筆者が紹介されています。

 神原 元  川崎合同法律事務所    鈴木 剛   町田・相模総合法律事務所

 平 和元  三多摩法律事務所     田中 隆   北千住法律事務所

 松井繁明  都民中央法律事務所    松島 暁   東京合同法律事務所

    ( 今回は瀬野俊之氏が抜け、代わりに平和元氏が加わっています。)  
 
 前回の書評で、前提の間違った理論はすべて間違っていると切り捨てましたが、今回は少し修正したいと思います。前書のように、間違いの叙述ばかりでないところが本書の特徴です。
 
 すべて間違っているのでなく、所々に正しい意見が混じっている<ということです。こういう本を読まされますと、お花畑の人々はたちまち虜になり、「戦争反対」「平和が大切 ! 」と声を上げます。
 
 所々に混じる正しい意見を、本の中から紹介します。
 
 「アメリカがグローバリゼーションを叫んで、世界制覇に乗り出し、日本がそれに追随した構造改革を強行しはじめて、もうずいぶん経つ。」
 
 「自由貿易だの、規制の撤廃、緩和だのと、耳障りのいい叫び声で市場原理万能、競争万能の世界が生み出され、世界の貧しい国々にも、この国にも、荒廃と貧困、差別と亀裂を生み出してきた。」
 
 「その荒廃や差別が、テロリズムの土壌を生み出し、グローバリゼーションの世界を脅かすまでになった。」
 
 「経済大国を誇ったこの国でも、出口の見えない構造的不況が社会を覆い、リストラや倒産による膨大な失業者が生まれ、民衆は生活苦と、将来の不安にあえいでいる。」
 
 「ひとにぎりの国の、ひとにぎりの勝ち組に富と権力を集中し、世界を出口のない閉塞状況に追い込むのが、グローバーセーションと構造改革だ。」
 
 「最初から破綻が明らかだった新自由主義世界の無残な現実に、いま世界もこの国も、気づき始めているのではなかろうか。」
 
 「この国」「この国」という言葉が、耳障りな不快音として響きますが、それを除けば、アメリカのグローバリズム批判は、「ねこ庭」の考えと重なります。( 話が横道に逸れますが、本書で使われる「この国」という言葉を、以後「日本」あるいは「わが国」と読み替えて使用します。)
 
  節度のない自由競争は、弱肉強食の社会を生み、強い者だけが勝ち残る非情な世界を作ります。アメリカの巨大国際複合企業 ( コングロマリット) の席巻から始まり、大金融資本による世界の市場荒らしなど、記憶はまだ鮮明です。
 
 ですから、執筆者たちのアメリカ批判に異を唱えず、紹介を続けます。
 
 「確かにいま日本の社会を、閉塞感やフラストレーションが覆い、不安感が増大している。世界でも、そのことは変わらない。」
 
 「その原因が、アメリカのグローバリゼーションであり、これに付随して進められたわが国の構造改革であることは間違いない。」
 
 「富や資源が有限なのに競争だけを突出させれば、貧しい国や地域はますます貧しくなり、ひとにぎりの国やひとにぎりの者に、富が集中する一方で、飢餓に苦しむ膨大な国や民衆が生まれる。」
 
 「同じことが、あらゆる分野の構造改革が進む、わが国でも起こっている。」
 
 と、「ねこ庭」と同じ意見はここまでで、これから先が少しずつ曲がって行きます。反日左翼の理屈が、「ねこ庭」と最後まで同じだったらそれこそおかしな話になります。
 
 次は彼らの捻じ曲った理屈を、紹介します。
 
 「そのためには、グローバリゼーションや、構造改革そのものを見直すことによってしか、解決は絶対にできない。」
 
 「だがアメリカや日本の支配層は、この見直しの道だけはどうあっても行こうとしない。」
 
 「だから、グローバリゼーションや構造改革からはみだし、それを脅かす者を力ずくでねじ伏せるしかなくなる。」
 
 「テロリストには、国際法無視の先制攻撃、社会を脅かす不逞の輩には、相互監視での取り締まり、閉じこもりや学級崩壊には、愛国心の押しつけということになる。」
 
 「これがいま起ころうとしている、いまの時代に対応した世界や国の作り変えだ。その行き着く先は戦争の世界であり、戦争に出て行く日本の形である。」
 
 我田引水の反日左翼思考は、いつものスローガンに収束します。
 
 「日本で闘われている有事法制や、教育基本法改正、生活保安条例に反対するたたかい、人権や民主主義に関わるすべての無数のたたかいは、世界の反戦、反グローバリズムと同心円にあり、ひとつに結び合っている。」
 
 「世界と日本の民衆が挑んでいるものは、グローバリゼーションと構造改革がもたらす荒廃と亀裂の社会を許さず、戦争の道を阻止するという歴史的な課題なのである。」
 
 「ねこ庭」は日本の支配層でありませんが、節度のないグローバリズムや構造改革に反対しています。
 
 強い者が一人勝ちする社会が正しいなどと、常識のある人間なら思いません。支配層とか民衆とか、使い古された左翼語で語らなくても、日本の庶民には国のあるべき姿と考え方があります。
 
 息子たちにいつか読んでもらいたいと、今日もブログに向かっていますが、スペースを超えそうなので、一区切りつけたいと思います。自分の国を大切にしない人間が、どのような理屈で国民をたぶらかしていくのか知って欲しいので、明日も紹介を続けます。
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