ねこ庭の独り言

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『有事法制とアメリカの戦争』 - 2 ( ポックリ死なら、悔いることなし )

2017-10-31 18:50:05 | 徒然の記

 執筆者たちの偏見を知るには、平成13年 ( 2001年 ) に発生した、「アメリカ同時多発テロ事件」の再確認が必要です。

 本を離れ、別途調べてみました。 

 ・平成13年の9月11日に発生した、4つの衝撃的なテロ事件は、リアルなテレビ映像によって、世界中の人々の脳裡に焼きつけられました。

 ・ハイジャックされた四機の飛行機のうちの二機が、世界貿易センタービルへ激突し、最初の一機はツインタワーの北棟に、残る一機は南棟のビルに突っ込みました。

 ・炎上する機体とビルから飛び降りる人々の姿に、思わず目を背けました。

 二つのビルが倒壊し、逃げ惑う人々や、決死の救助活動をする消防隊員など、テレビの前で釘づけになりました。ビル内の会社で働く人間や航空機の乗客、そして消防隊員などに、2,600名以上の犠牲者が出ました。

 ・三機目のハイジャック機は、国防総省(ペンタゴン)を攻撃し、5階建ての2階に突入しましたが、たまたま工事中だったため、犠牲者は253名に止まりました。

 ・四機目の機内では、ハイジャックの情報を得た乗客たちがテロリストへ立ち向かい、果敢に戦いましたが、高速で墜落した機体の残骸と遺体は、地面に埋まった状態で発見され、乗客・乗員の44名が全員亡くなりました。

 同時期に、「炭疽菌事件」も起きました。

 ・2001年9月18日と10月9日の二度、アメリカ合衆国の大手テレビ局や出版社、上院議員に対し、炭疽菌が封入された容器入りの封筒が送りつけられました。

 ・炭疽菌の感染により5名が死亡し、17名が負傷しました。 同時多発テロ事件の7日後に発生したこの事件は、アメリカ全土を震撼させ、イスラム過激派への怒りと憎しみを増幅させました。

 ブッシュ大統領がテロへの戦いを宣言し、容赦ない報復戦争を決断したことについて、マスコミは同情と理解を示しました。著者たちが言うような、激しい反対の論調はなかったと記憶しています。

 アメリカはテロ事件を契機に、過激派組織タリバンの国であるアフガニスタンへ侵攻しました。翌年の平成14年 ( 2002年 ) に、大統領はイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」「ならず者国家」と断じ、国際テロ組織との戦いを国家戦略として位置づけました。

 指摘したいのは、著者たちが残虐な無差別テロについて語らず、米国のアフガン侵攻やイラク攻撃だけを弾劾している不公正さです。

 列強によるアジア侵略を語らず、日本が戦った戦争を「間違っていた」「非道だった」と、一方的に非難した時と同じ構図です。都合の良い事実だけを切り取り、相手を責めるという反日左翼の捏造方法を発見します。

 テロとグローバリズムとを一緒にし、世界征服を狙う、悪辣な米国像を作り上げる論調にも首を傾げます。国際テロとの仮借ない戦争をするのもアメリカで、グローバリズムを推し進めようとしているのも、アメリカです。これを単純に結合し、邪悪なアメリカ像を語ろうというのは乱暴な意見です。

 反日左翼の人間は、知的レベルを誇っている割には、常識外れのこじつけをします。前回も今回も、執筆者たちがしているのは偏見の主張です。日本に二つの原爆を投下し、亡国の憲法を押しつけたアメリカですから、味方をしようと思いませんが、偏った意見には異を唱えます。

  「アメリカ同時多発テロ」で、米国人の受けた犠牲の大きさや、その怒りや悲しみを知らなければ、執筆者たちの主張が一見正しく聞こえます。

 「反テロ戦争を世界に拡大し、暴力の連鎖を広げようとするもの、それがブッシュの 〈悪の枢軸 〉発言であり、米国の国家安全保障戦略  ( ブッシュ・ドクトリン ) である。」

 「何の罪もないアフガンの民衆を殺戮したアメリカは、謝罪する気配すらない。」「テロはあくまで犯罪であって、テロを生み出さないための経済協力や、援助によってしか、絶対に解決することはできない。」

 彼らは、家族や恋人や友人を殺された米国人に、黙って我慢することを勧めているのでしょうか。突然家族を殺されたアメリカ国民の怒りに、何の注意も払わない主張のどこに妥当性があるのでしょう。

 身勝手な理屈を言う中国や韓国・北朝鮮に同調し、日本に我慢を強いる不公平さと同じ思考回路です。

 「北朝鮮のとっている政策が、いかに無法であろうと、」「在日朝鮮人、ことにその子女に対する人権侵害が横行するのは、許し難いことである。」

 「日本の文化・文明の低劣さを、みずから露呈するに等しい行為と言わざるを得ない。」

 この流れから、日本人だけが対象となる「ヘイトスピーチ規制法」が作られました。野党の反対を押し切って、政府が有事法制を設立させようとする理由を、次のように説明します。

 「90年代始めの湾岸戦争において、日本は130億ドルの戦費を負担しながら、血を流さないことを非難された。」

 「そこで自衛隊の海外派兵を認める、PKO法を成立させた。」「対米従属を旨とするわが国は、さらに97年に周辺事態法を成立させた。」

 「しかしアメリカはこれでも満足せず、アーミテージ報告を突きつけ、有事立法の成立を要求した。」

 彼らの説明によると、日本はアメリカの戦争に協力するため、有事法制の成立を目指していることになります。理由は、世界の嫌われ者である日本は、アメリカに見捨てられると孤立無援になるから、従順な家来であるしかないのだと、聞くに堪えない説明をします。

 敗戦後に現憲法をアメリカの手で与えられて以来、保守自民党の公約は「自主憲法の制定」です。自国の軍隊を持たなくては、独立をした普通の国と見做されないのが国際社会です。

 「戦争放棄」「専守防衛」の理想論で、国際社会を生きられないのは世界の常識です。現行憲法のままでは、他国の侵略に対処できないと知っている国民には、戦後は臥薪嘗胆の日々です。憲法改正をするまでの間、せめて有事法制を成立させ、日本を守らなくてならないということになります。

 アメリカに言われ有事法制を検討していると、弁護士たちが説明しますが、これも間違った意見です。

 三矢研究(みつやけんきゅう)は、昭和38年に自衛隊が、朝鮮半島で武力紛争が発生した場合の、非常時の日本防衛のため、隊の運用と諸手続きを研究するものでした。

  昭和53年来栖参謀総長が、「現行の自衛隊法には不備があり、他国から奇襲侵略を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで動けない。」「このため第一線部隊指揮官が、超法規的行動に出ることはありえる。」と述べ、有事法制の早期整備を促しました。
 
 当時の日本では反日左翼勢力が幅を利かせ、野党だけでなく自由民主党の中にも左翼思想にかぶれた愚か者が多数いました。このため、氏の発言が大問題になりました。氏は信念を変えず、記者会見でも同じ発言を繰り返し、文民統制の観点から不適切ということになり、防衛庁長官金丸氏に解任されました。
 
 だが有事法制の整備は、欠陥憲法を持つ日本とって欠くべからざる法律であり、米国の要求と偶然重なったに過ぎません。
 
 破綻したマルクス主義が捨てられず、日本を誹謗することで日を送る執筆者たちは、自分のかけた色眼鏡を通してしか、日本を見ることができません。間違った意見は胸に仕舞っておけば良いのに、本を出版し国民をたぶらかします。
 
 明日はゴミ出しの日なので、この本はゴミ袋に入れて捨てます。
 
 先日図書館で廃棄本の処分がありましたので、家内と二人でもらいに行きました。いつもと違い、反日左翼の本ばかり残っていました。しばらくは穏やかな読書の日は望めず、頭に血がのぼりそのまま昇天するのかもしれません。読書後に死ぬのなら憧れの「ぽっくり死」ですから、悔いるところはありません。
 
 今晩は酒の解禁日なので、一杯呑んで寝てしまおうと思っています。
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