ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

これは本当なのだろうか

2014-10-02 22:03:53 | 徒然の記
 平成7年、ダイヤモンド社刊「アジアの新聞で読む50年目の8月15日」という、恐ろしく長い題名の本を読んだ。平成 6年、今から20前の新聞記事だ。

 名前が恐ろしく長いだけでなく、内容も私の肝を冷えさせ、恐ろしくさせてくれた。それこそ、「これは本当だろうか」である。日本の戦後50年の節目に、アジア諸国の新聞が、日本をどのように見ていたかという内容だ。

 200ページ余の本で、最初から24ページまでは、大東亜戦争の開戦前と後の経緯が、書いてある。
 日清、日露戦争から、日韓併合、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、第二次世界大戦、ミッドウエイ海戦、原爆投下、ソ連参戦、日本敗戦と、順を追って記述されている。基本姿勢は、アジア各地を侵略した日本軍は、その過程で数々の残虐行為を行った、という書きぶりだ。

 残虐の例として、「南京大虐殺」と「従軍慰安婦」のことが、最初に書かれている。それから「シンガポール・マレー半島の華僑虐殺」「バターン死の行進」「ベトナムでの大量餓死」「731部隊」等々と続く。知っていることもあり、初めて知る事実もあった。

 前書き、後書き、解説等を除くと、本文は171ページとなる。各国の新聞がどのようなことを書いているか、待ち切れない気持ちになった。書かれている国の順番は、韓国、北朝鮮、中国、フィリッピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイである。

 韓国・北朝鮮・中国の新聞記事が98ページで、全体の57パーセントを占めている。後の5ヶ国で43パーセントだから、中・韓のボリュームが圧倒的に多い。随分細かな詮索をしていると思われるだろうが、最初から日本の悪行を強調する文が出て、しかも「南京大虐殺」「従軍慰安婦」と来たので、この本の中立性に疑心暗鬼が生じた。本を読むのに、ページ数を数えたり、%を計算したり、普段やらないことをしたが、それだけ真剣に取り組んだと言うことだ。

 日本敗戦の50年後に、アジアの国々が、今だに大きく日本のことに紙面を割いていると言う事実に、私はまず驚かされた。この日わが国では、マスコミが「平和と反戦」で紙面を飾り、陛下のご臨席のもとに「慰霊祭」が行われる。こうした日本の行事にまで、彼らが目を凝らしているとは、考えもしなかった私だ。正しく敗戦の日と言わず、「終戦記念日」と取り繕い、(私以外)誰も疑問を挟まないが、彼らにしてみれば、その曖昧さが「まやかし」と見えるらしい。

 韓国・北朝鮮・中国の新聞記事は、辛辣で悪意に満ちた、日本非難で埋まっている。日本のマスコミが伝える以上の悪口雑言なので、真面目に読む気がしなくなった。特急新幹線みたいな早さで読み飛ばしたが、しかしこれ以外の国の新聞については、本気で文字を追った。そして、「これは本当なのだろうか」と、暗く重い気持ちになった。

 私は今まで、第二次大戦について、日本に文句をつけてくるのは中国、韓国、北朝鮮だけで、他のアジア諸国はむしろ好意的であると、保守の論客の人々の言葉を信じて来た。難癖をつけ、賠償を迫り、しつこく日本を困らせるのは、この三ヶ国だけと、確信して疑わなかった。
ところがどうだろう、フィリッピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイの新聞も、日本の侵略を非難し、日本政府の対応に不満を述べている。

 国の別を書かず、衝撃を受けた言葉を書き抜いてみることとしよう。表現の違いはあるが、これらの国が日本に向ける言葉には、共通するものがある。

 1. アメリカは投下した原爆について、いまだに謝罪していない。他方日本は、アジアで侵略戦争を行ったことを、いまだキチンと謝罪しようとしていない。

 2. 太平洋戦争の侵略国である日本は、その軍国主義的で拡大主義的な野望を捨てていない。

 3.  6月9日の「国会での不戦の決議」は、むしろ日本の戦争責任を負うべき人たちを、讃えるように作成された。
 4.  歴史を歪曲するという行為は、アジア民衆の見識に対する偏見が現われている。
 5. 歴史を偽ることは誰にもできない。真実はいつも私たちの前にある。
  6. 日本人の中には、東アジアで何百万人もの人々を殺した侵略戦争について、いまだに反省しない者がいる。今なお、白人の植民地から、アジアを開放したと信じる者がいる。

 7. 日本人は、戦争について謝罪する必要はないと、思っているようである。世界の人々の最大の懸念は、侵略の過去を反省しない国が、再びそれを繰り返しはしないか、ということである。
 8. 村山首相は、日本のこれまでの禁忌を破った、初めての首相である。村山首相は謝罪はたが、賠償問題については扉を閉じた。しかし賠償をして初めて、戦争に対する罪滅ぼしの、具体的な現れとなるのだ。
 9. 日本の歴代首相の数は、アジアのトップであり、謝罪の回数も少なくない。にもかかわらず、今日まで本当の謝罪がされたことは一度もない。

 まだ続くのだが、ここで書き写しを止めることとする。
 「歴史認識が間違っている」、「心からの謝罪がない」というのが、中国・韓国・北朝鮮の造語でなく、他の国々も同じ言葉を使っていると知る、衝撃の大きさがあった。いわば中国と韓国が、声を上げない他の国々の代弁をしている、形になっているということ。

 彼らが、何をもって、本当の謝罪をしないと言っているかと言えば、国家間の賠償は済んでいても、金銭による個人への賠償がなされていないという話なのだ。ドイツはそれをやったと彼らは言うが、こうなると私にも反論がある。ドイツが謝罪したのは、戦争自体でなく、ユダヤ人の虐殺ではないか。一つの民族を憎み、抹殺するというヒトラーの狂気に引きずられた犯罪への謝罪だ。ドイツには気の毒だが、比較する土台が違う。

 日本の戦争は、殺りくをしたとしても、戦争の行為だ。敗戦国になったため、戦勝国から必要以上に断罪されたが、いったい人類の歴史の中で、どの敗戦国が戦争を謝罪し、個人への賠償をしたのか。そんな事例は何処にもない。とは言うものの、アジアの諸国が口を揃え、日本非難をしている事実を見せられると、言葉を失ってしまう。

 私のブログで、散々貶して来た村山氏が、これらの国では、素晴らしい政治家と賞賛されているのだから、そうなる訳だ。こうした事実を、政治家も役人も、国民に伝えて来なかった。社会の木鐸と自負するマスコミだって、こんな事実を正確に伝えなかった。だから、私はアジア諸国の状況を、知らなかった。

 政治家と外務省は、こうした声に対し、何をしているのだろうか。国民に正しく伝えなくても、渡航自由だから、自分たちで出かけて知れば良いと、高を括っているいるのだろうか。私だけが無知な人間だと言うのなら、それでもいい。今後、色々なことを知るように頑張れば良いだけのこと。そうでなく、私のような人間が多数だとすれば、やはりこれは問題であるに違いない。

 疑問の固まりになったため、本の四人の著者たちが、どんな人物なのかを確かめたくなった。
 1. 根津清  S19生 長野県出身  神奈川大卒  元読売新聞記者 
 2. 姜英之  S22生 大阪出身   大阪市立大卒 韓国籍  韓国新聞記者 雑誌編集長
 3. 陸培春  S22生 クアラルンプール出身  マレーシア国籍  東京外大卒  駒大非常勤講師 シンガポール紙特派員
 4. クリエンクライ・ラワンクル  S37生  東京出身 タイ国籍  日本で高校・大学卒業  フリージャーナリスト

 本の裏表紙にある、彼らの略歴だ。私が知っていたのは、 3.の陸培春氏だけで、彼については、昨年だったかブログに取り上げたことがある。朝日新聞とNHKに支援される、シンガポール紙の特派員で、反日の記事ばかり書くので、酷評した記憶がある。彼に似た人間たちが編集した本なら、悪意の糸が織り込まれていると考えてしまう。

 だが、取り上げられている新聞は、間違いない本物らしいから、考え込んでしまう。「これは本当なのだろうか。」と。

 当分の間私は、この本が提起したものから離れられないことになった。これまでだってそうだったし、これからもそうだろうが、自分で調べていくしかない。
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4 コメント

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今もそうなのでしょうか (遊爺)
2014-10-06 11:52:48
貴重な情報をありがとうございます。

> 彼のような人間たちが編集した本なら、悪意の糸が織り込まれていると考えてしまう。
> 「これは本当なのだろうか。」と。当分の間私は、この本の提起したものから離れられないことになった。

 お話を読ませていただいて、私も少し驚きましたが、本の発売日が、1995/12 で、約20年前の様ですね。
 その頃や更に昔は、アジア全体で日本の戦争を非難する声が広範にあったことを、記憶しています。
 中韓は、それを更に強め、他国は戦後の日本の活動に理解を深めていただいてきたと認識しています。勿論、今でも戦争を侵略戦争として非難する声はあるのですが、だからと言って今の日本がそうだという声は、中韓以外は大幅に減って、むしろ最近の中国の脅威に対し、日本の役割を求めるこえが高まっていると認識していますがいかがでしょう。
 中韓の両国は、戦後の建国で自らの正統性が欠如していることはご承知のことと存じます。
 中共は、日本と正面で戦った国民党から、国共戦争で横取りをしたのであって厳密には戦勝国とは言えませんし、朝鮮は日本の敗戦でタナボタで独立したのでした。(日本とは戦っていません)
 そのため、建国の正統性を国民に訴える手段が反日しかなく、国内の政権への支持情勢を維持するためには反日(捏造も含め)を浸透させ唱え続けねばなりないのですね。
 普通の建国の正統性を持っている国は、未来志向で現状の日本を未来志向で観ていただいていると認識しています。
 安倍政権の積極外交で、それが加速されつつあると認識していますが、いかがでしょう。

> 自分で調べていくしかない。

 発見情報が出て来ましたらアップしていただけるのをお待ちしています。

 
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20 年前の記事 (onecat01)
2014-10-06 15:22:56
 コメントを有り難うございます。

 20年前だからと、私もそう云う気がしております。

 こうした国々はわざわざ日本非難のため記事にしているのでなく、丁度この時が彼らの独立記念日だったり、

 戦争終結の記念日だったりするので、こうした記事が出るのだということです。

 編集者たちが反日なので、今もひっかかっており、これからも事実を求めていきたいと思います。

 こうした情報は共有致しましょう。
どうか、これからもよろしくお願い致します。
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日本を批判しやすいのでしょう (どいま)
2014-10-07 01:07:22
こんばんわ

私も不勉強で詳しくはありませんが、

アジア唯一の敗戦国なので批判しやすいのだと思います。

親日といわれる台湾でさえ反日の人間もいますし、フィリピンやタイも反日思想の人いると思います。

しかし、日本でもマスコミあ反日なように外国でもマスコミは反日的であると思います。

捕鯨に執拗に反対するのはある意味人種差別ですし、そこまではいかずとも日本にたいして反感を持っている一部の意見ではあると思います。

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そうかも知れませんね (onecat01)
2014-10-07 07:17:24
 どいまさん、お久しぶりですね。

 言われる通り、マスコミとは、どこでも反日ですか。

 敗戦国を叩く。弱いものいじめををする。子供に似た真理があるのでしょうか。

 あるいは、人種差別があるのではないかと、そんな気もしています。白人なら見過ごすことが、日本人なら黙っておれない。

 白人国家のみならず、植民地支配されて来たアジアの国も、その意識が根底にあるような気がします。

 理屈でなく感情なので、よけい始末が悪いのだと思ったりします。

 コメント有り難うございました。
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