ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

教師 - 5 ( 仮名・神山公一氏 )

2021-01-30 13:02:06 | 徒然の記

 「性非行と薬物中毒」というタイトルで、仮名・神山公一氏が語っています。氏は45才の商業高校教師で、生徒の9割が女子、3年間で生徒の2~3割が退学するという学校に勤務しています。

 「高校生の非行が、新聞やテレビで報道されていますが、」「現実は、もっと凄まじい。」「新聞に出ない、警察が発表しない、警察沙汰になっていないことは、」「いっぱいあるでしょう。」「その中で教師が知りうるのは、ごく一部です。」

 「警察は事件があっても、基本的には学校には連絡しませんし、」「最近の親は学校に隠します。」「例えば、青少年健全育成機関に行っていたとしても、」「長期欠席の扱いになっていて、」「担任以外は知らない、ということもあるわけです。」

 警察が学校へ連絡しないのが基本だと、私は今まで知りませんでした。警察が隠し、親が隠し、学校も担任も隠しという実情を、氏が教えてくれました。

 「ただし非行をする子は、昔も今も数的には多くないのです。」「いつの時代でも、する子はする。」「最近低年齢化し、高三でしたことを、今は高一や中学生がやっている状況がありますが、」「大方の子は影響されない。」「例えば援助交際、セックスが介在しないとしても、8~9割の子は否定的です。」

 「性非行に関しては、もう概念自体がなくなりつつある、」「と言っていいですね。」「昔なら、ボーイフレンドとセックスして、」「妊娠したかもしれないと、本人が悩むわけです。」「擁護の先生に本人が相談し、学校に分かり、相談や指導ができました。」「今の子は、そんなことに悩みもしないし、相談もしないし、」「学校が手を出そうとしたら、たぶん、」「親も子も、拒否するでしょう。」

 こうなりますと、息子三人の親だった私には、別世界の話になります。また自分の学校時代には、経験したことのない話です。本当の話なのかと、疑ってしまいます。

 「彼女たちにとって、セックスは隠すものでなく、自慢したいこと、」「教員にも、ボーイフレンドと肩を組んでいる旅行先の写真を見せてくれるし、」「それを親は、どう思っているのか ? 」「心配しているのか、いないのか、私にも分かりません。」「でも、娘が外泊して、親がおろおろして、」「学校に連絡することは、まずないと言っていい。」

 原田瑠美子氏のように、教室で性教育をする教師がいるから、そういう生徒が育つのか。それともこんな時代になったから、性教育が大切なのか。私の経験からでは、判断が難しくなります。

 「性非行でも薬物問題でも、今は退学処分というのは、極めて稀で、」「話し合いのもとで、退学届を出し、」「自主退学してもらいます。」「こうすれば、本人にその気があれば、」「一年遅れになるけど、別の学校へ編入することができます。」「退学理由は公表しないし、問い合わせがあっても、言いません。」「学校が合わなくて、やめて行った子と同じ扱いです。」

 沢山こういう生徒を扱っている経験がそうさせるのか、氏の説明には、感情のたかぶりがありません。それでも私の心に響くものがあります。

 「自主退学させるのは、教員としては寂しいものです。」「退学してしまえば、教員として関わることはもうありません。」「でも、退学という歯止めをなくし、」「生徒が何をやってもいられるようでは、他の子たちへの抑止力になりません。」「公立の学校としては、けじめをつけないといけないのです。」

 私は自分でも時々思いますが、単純な人間です。氏の話を読んでいますと、編者である森口氏への印象が変わります。こんな教師の話なら、多くの人に伝えて欲しいと、感謝の気持ちが湧いてきます。私は、謙虚になり、氏の話を転記します。

 「事件が起きた時、警察への届けは保護者次第で、」「未成年の人権問題なので、学校からは届けられません。」「しかし保護者には、是非届けて欲しいと思います。」「なぜなら警察の関連機関は、色々有効なアドバイスをしてくれるし、」「対処マニュアルも、持っているからです。」

 「私は、警察も、青少年の非行を扱う専門機関の一つだ、と思っています。」「さらに医療機関、行政や民間の機関、」「学校同士との協力と連携は、これから是非とも必要です。」「今起きている問題は、登校拒否でも非行でも、」「社会的な広がりを持っていますから、」「個々の学校、教師のわずかな経験と知識で対応するのでは、」「限界があります。」

 氏の意見には、心から賛成します。私は小学生の登下校の見守りをする、ボランティア活動に参加していますが、たったこれだけの経験からでも、関係する組織の連携の重要性を感じています。3年生以下の低学年の児童が、交通事故に遭わないよう、不審者に襲われないよう、黄色い旗を持って誘導する活動です。

 孫と同じ年代の子供たちは、みんな可愛い生徒ばかりですが、注意しても道いっぱいに広がり、私たちの言うことをなかなか聞きません。挨拶をする子がいたり、憎まれ口を叩く子がいたりで、先生や親たちはどんな教育をしているのかと、話し合ってみたくなる時があります。

 小さな小学校のスクールガードですが、関係する組織は色々あります。学校の先生だけでなく、社会福祉協議会、町内会、父母会、町づくり有志会などです。年に何回かでも、関係者が一緒に話ができたら、もっと子供たちのためにできることがあると、私は考えています。しかし、それぞれの人々は、それぞれに忙しく、自分の役目が終わると解散です。この本でも分かりましたが、先生たちには、さらに時間がありません。

 それだけに、私は氏の最後の言葉を、息子たちや、「ねこ庭」を訪問される方々にも、日本中の方々にも、伝えたくなりました。

 「問題を表沙汰にしないことで、子供を守り、平穏無事に過ごせる。」「しかし、平穏に済ませられないと分かっていながら抱え込むのは、」「返って、子供ためにならないのではないでしょうか。」「確かに学校は、教育の専門機関ですが、」「全てを担う必要はない。」

 「子供は国の宝」ですから、学校や先生にばかり頼らず、協力する気持ちを持たなくてなりません。私たち親も、変わらなくてなりません。

 「できないと突き放すのではなく、学校が問題点を明らかにして、」「解決への、問いかけをしてもいいと思います。」

 学校から、こんな問いかけがあれば、親として、あるいはかっての親として、私は協力しようと思います。

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4 コメント

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性教育は必要なれど繊細な扱いを要す (HAKASE(jnkt32))
2021-01-30 23:42:21
今晩は。今回の「教師」シリーズ、拙者の所管を少
し申し上げます。

まず、第 2回の「教師と教授の違い」は、拙者も曖
昧なまま今日まで来てしまった項目でした。もう前
半生の様に「一度読めば分る!」などと大口を利け
る状態からは確実に遠ざかり始めているだけに、折
に復習して知見を確かにしなければとも思う所。

本当に「齢を重ねる」とは一長一短だと 改めて思います。

以前より確実に明らさまに語られる様になった 性
教育の事共。確かに一定の必要は認めますが、どう
も直截過ぎる気も致します。もう少し工夫を重ね、
子供達や若者達が少しでも抵抗なく入って行ける工
夫を要するのではと心得る者です。勿論 性犯罪や
非行抑止の為にも、巷の性情報にありがちな興味本
位ではならないとも思います。

巻頭にあった 原田瑠美子・東横学園教諭の方向性
は、決して感心しない 上野千鶴子・東大名誉教授
に近い様に感じます。同名誉教授の思考は確か「コ
ミュニティ・フェミニズム」と呼ばれる様な容共的
なもので、原田教授が似た思考であれば、これは受
け入れ難いと思います。

今回の 神山公一教諭のご見解は、教育の実際の現
場に身を置く方の声として、よく実情を反映されて
いると心得ます。そこから「子供は国の宝ですから
、学校や先生にばかり頼らず、協力する気持ちを持
たなければなりません」の下りを、拙自身の問題と
しても受け止めるべき・・という感を抱く次第です。

実の所 親になり損ねた拙者ではありますが、一社
会人として何ができるか、どの様な状況下で何をす
べきかという事は、多少なりとも考えるべきという
気にさせられた今回でありました。
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子供の人権 (onecat01)
2021-01-31 14:02:51
HAKSEさん。

 原田氏の意見を聞きながら、私も上野氏を思い浮かべました。こういう人物は、学者や教師の顔をした、「駆除すべき害虫」です。

 彼らの基本思想は、「子供の人権」という間違った思い込みです。未成年には、「社会的常識」が十分でないから、「教育」がなされます。教育とは、楽しいばかりでなく、苦しさが伴います。

 学問の 厳しさに耐え
  炭をつぐ

 誰の句かは忘れましたが、寒い冬の夜、火鉢を側に勉学しているとき、炭の火が消えそうになったので、新しいのを継ぎ足す。

 そんな句です。いわばこれが、学問というものの一面です。楽をすることを求め、面倒なことを嫌がり、我慢ができない人間には、勉強ができません。

 『教師』の中で意見を言う先生たちは、「子供人権を尊重する」という、戦後憲法の思想を第一とし、「可愛い子には旅をさせろ」と、ご先祖たちが、子供の教育に心血を注いだ厳しさを忘れているのだと、私は思っています。

 教師自身の中に、住んでいる街への愛、住んでいる土地への愛、国への愛がなく、そうした記述がありません。国や社会という大きなものの中で、運命共同体の一員として生きている人間という自覚が、先生自身にもありません。

 あるのは、「自分を大切にする」「自分を生かす」という、自己主張だけで、他人との協調、他人への理解がありません。自分以外のものを批判し、否定する思想が根本にあり、これが左翼思想の特色です。

 あと半分残っていますから、まだ結論を言う段階ではありませんが、私にはそんな気がしています。

 1. 予想以上に大変だった、先生方の日常
 2. 予想以上に低かった、先生方の意識

 私は、この二つを同時に発見しました。貴方と同様に、他人ごとでなく、自分の問題として読んでいきます。

 コメントに感謝いたします。
返信する
連想した「大津いじめ事件」 (成田あいる)
2021-01-31 19:18:27
お疲れ様です。
一連のシリーズを拝見していますが、このエントリが印象に残り衝撃的に感じました。
中でも、「警察は事件があっても、基本的には学校には連絡しない」「青少年健全育成機関に行っていたとしても長期欠席の扱いになっていて、担任以外は知らない」と言うところです。
「話し合いのもとで、退学届を出し、自主退学してもらう」「退学理由は公表しないし言わない」にも、学校の「事なかれ体質」で、「なあなあ」で穏便に済まそうとする体質を窺い知ることができると思います。

このエントリを拝見して、以前取り上げられていた、「大津いじめ訴訟」を思い出しました。
二審で賠償額が9分の1近くに減らされたものの、最高裁で「いじめが原因で自殺」とハッキリ認定され確定しました。
当時学校は「生徒同士の喧嘩」と認識していたようで、学校・教育委員会とも、自殺の原因を「家庭環境」と説明していたようです。
担任教師も適切な処置を取らなかったばかりか、休職し「雲隠れ」してしまいました。

今回のような「いじめ」を担任、そして学校や教育委員会に相談しても、「門前払い」に等しい対応をされがちです。
そんな中、「保護者には、是非届けて欲しいと思います。」と言う言葉は、実に重いと思います。
「いじめ自殺」のような事件が起こると、真っ先に学校と教師が槍玉に上げられ叩かれます。
そんな中、「個々の学校、教師のわずかな経験と知識で対応するのでは、」「限界があります。」ということもまた、偽らざる事実だと感じます。
返信する
子供は国の宝 (onecat01)
2021-01-31 21:16:36
 成田あいるさん。

 「いじめ自殺」のような事件が起こると、真っ先に学校と教師が槍玉に上げられ叩かれます・・

 貴方の言われる通り、私はいつも、事件が報道されると、学校と教師を批判してきました。しかし『教師』を読み、文部省、政府、国民と、全てが関係している事実を確認しました。

 失敗が上に知られると処罰される、ならば隠すしかないと言うのは、世の常でありますが、それが極端な形で現れるのが、社会主義国です。

 厳しい罰が課せられ、しかも為政者の裁量次第なのが、社会主義国です。恐怖が人間を萎縮させ、嘘の報告、嘘の統計、嘘の政治が蔓延します。

 民主主義の国では、言論の自由が保障されていますから、忍耐の糸が切れたら、内部告発ができます。いわば『教師』の書は、内部告発の本です。私たちは、国民の一人として、先生たちの言葉を受け止める必要があります。

 荒れる子供達への対応で、心身をすり減らしている教師たちの姿を知りましたが、同時にこの先生方も、「戦後教育の産物」でしかない現実も知りました。

 敗戦後の日本の、一番根本にあるのは、以下の3点です。

 1. 連合国による復讐裁判の結果としての、「東京裁判史観」
 2. 国際法違反の「日本国憲法」
 3. GHQの支援を得た、反日左翼思想の復活と跋扈

 教育行政のトップにある文科省の官僚からして、反日左翼思想に染まり、日本の過去を否定していますから、教師だけを批判するのは酷ですが、それにしても、レベルの低さに驚かされました。

 この先生方は、戦後日本の問題点を認識せず、そこに疑問を抱かず、子供の教育ができると思い込んでいます。憲法と反日左翼の日教組と、共産党の宣伝に染まっている教師たちに、失望もしました。

 しかしまた一方で、この単純さは、世の思潮が変われば変わる、という希望でもあります。教師たちの真面目さ、熱心さ、ひたむきさは、まさに日本人そのものです。ご先祖さまのDNAが。精神の底に眠っていると教えられます。

 反日左翼の野党を放逐し、ご先祖さまの築かれた日本を、取り戻さなくてならないと、私は再度心に決めました。

 コメントに感謝いたします。これからも、よろしくお願いいたします。
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