ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

教師

2021-01-27 19:45:28 | 徒然の記

 森口秀志氏編 『教師』( 平成11年刊 (株)晶文社 )を、読みつつあります。475ページの厚ぼったい本で、手に持って読むと、重くて長続きしません。本の表紙にも、裏表紙にも、扉にも、宣伝文句がいっぱいに印刷されています。

 「今学校で、何が起こっているか ?」「87人の教師たちが語る、ニッポンの学校・教育・子供」

 「北海道から沖縄まで、最前線に立つ教師は、何を考え、何をしているのか ?」

 「日本の学校、今の子供達の姿が見えてくる。」

 黒、赤、グリーン、茶色の活字が、賑やかに飾っています。私はこういう仰々しい装いの書には、なんとなく馴染めませんが、12章に分けられた内容は、読まないわけにいきません。( 87人の教師の内訳は、幼稚園、小学校、中学校、高校、その他の特殊学校となっています。)

  1. 教師の仕事

    2. 授業

  3. 学校という別世界

  4. 問題続出

  5. いじめ

  6. ひとはこうして教師になる

  7. 親とつきあう    ・・・・・以下省略

 この本の特徴を挙げますと、3つあります。

  1. 全てインタビューによる、回答であること。

  2. インタービューされた87人の教師の、61人が仮名で答えていること

  3. 8名のインタビアーと、本の編者の履歴がほとんど書かれていないこと

 編者である森口氏については、次の記述だけです。

 「昭和35年、東京生まれ」「フリーライター、エディター」「教育・音楽・若者文化・在日外国人などをテーマに、取材・執筆・編集活動を続けている」

 もっと知りたいと、ネット検索していましたら、「ジョイカレッジ結・校長」「有限会社 結プランニング・代表取締役」という、二つの肩書きを見つけました。

 一体誰が、国民に本当のことを伝えているのだろう ? ・・・

 前回のブログで、疑問を述べたばかりなので、匿名が多く、インタビアーの経歴もハッキリしない本は、果たして信頼できるのかと、つい考えてしまいます。匿名だから本音が語れるのか、責任逃れの匿名なのか、103ページまで読みましたが、私には分りませんでした。

 大切な子供たちに残すブログですから、訳の分からないままでは、自分の気持ちが収まりません。ここまでこだわるのは、現在読んでいる部分に原因があります。この人は匿名でなく、学校名も隠していません。原田瑠美子氏、51才、世田谷区私立東横学園女子中・高校で、理科の教諭をしています。

 教え子の妊娠・退学をきっかけに、性教育に取り組み始め、体験をもとに著書も何冊か出版し、現在は、「人間と性・研究教育協議会」の本部幹事もしているといいます。インタビューのタイトルは、「性教育」で、高校2年生の担任だった時の話です。生徒から妊娠したと打ち明けられ、「退学届」の書き方を教えて欲しいと言われた時の、氏の言葉から、転記します。

 「でもその時私は、退学することに同意しないと、言ったの。」「だって、妊娠したからといって、なんで退学しなくちゃいけないわけ ? 」「確かに年齢はまだ16才だけど、愛する人と出会って、」「本当にこの人と、将来一緒に行こうと思って、」「その人の子供を産みたいと思うことが、なんで非行扱いされて、」「退学にならなきゃいけないのか、私には分からなかったのね。」

 この時氏が、生徒に与えた助言です。

 1. 日本の社会では、高校くらいは卒業していないと、将来ハンディーになる

 2. 休学し、子供を保育園へ預けるとか、育児の目処が立った時、復学すれば良い

 しかし生徒は、次の理由で退学します。 

 1. 今の社会では、そんな生き方は許されていない

 2. 体が丈夫でないため、勉強と育児の両立はできない。

 女生徒への助言として、そんな意見もないではないでしょうが、現実問題として可能なのか、そこまで単純化して良いのか、という疑問があります。休学した女生徒を、周囲の人間がどういう目で見るのか。彼女の親だけでなく、男子生徒の親の同意や理解は、どうなっているのか。

 そこまで考えると、普通の教師なら単純な助言が言えなくなり、一緒に悩むのでないかと思います。ところが氏は、とんでもない方向へ考えを進めます。

 「やっぱりそのことで、性教育の必要性を痛感したんですね。」「生徒たちに、女性の自立を説いてきたけど、」「そのためには、性の自立が大事じゃないかって。」「女性として生まれたことに誇りを持ち、自分の夢を実現させていく生き方。」「それが性教育によって、裏打ちされないといけないんじゃないかって、」「そう思うようになったんですね。」

 驚いたことに、氏は「性教育」授業を、ホームルームの中で実現していきます。

 「交際しているボーイフレンドから、ホテルへ行こうと誘われた時、どう答えるか、」「生徒たちに、それぞれ演じてもらうのね。」「嫌だという子もいるし、いいわという生徒も、いるわけ。」

 「今はちょうど妊娠する時だからダメ、とかいうと、」「男役の生徒が、ちゃんと避妊するから大丈夫。」「僕に任せて欲しい、とか言って、」「もう、キャアキャアいいながら。」

 果たしてこれが、教育なのでしょうか。性教育がなければ、女性の自立ができないというのなら、日本だけでなく、世界中の自立した女性は、こんな性教育を受けたのでしょうか。もし孫娘が、東横女子学園へ行きたいと言ったら、私は迷わず止めなさいと言います。

 こうなりますと私は、こんな本を出した編集者や出版社や、インタビアーたちのことが知りたくなります。8人のインタビアーの内の5人がフリーライター、2人が新聞記者で、残る一人が沖縄の市議会議員、と言うところまでは書いてあります。

 同じ反日左翼でも、岩波書店や中央公論社は由緒正しい左翼書店ですから、匿名の意見がなく、著者の経歴も明確にし、頑迷さの中に律儀さが見えます。フリーライターは、売れるものなら何でも書き、売るためなら何でもする人間たちです。問題点を真剣に取り上げると言うより、売るための工夫を真剣にします。残る二人の新聞記者ですが、今の日本では、最低ランクに見られつつある職業です。

 次回は、編集者と出版社について、もう少し調べたいと思います。興味のある方だけ、「ねこ庭」へお越しください。

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