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古い本 その149 古典的論文 モササウルス類 9

2023年09月05日 | 化石

 次の属も同じ地域からの報告。属名はOpetiosaurusという。
⚪︎ Kornhuber, Georg Andreas, 1901. Opetiosaurus Bucchichi, eine neue fossile Eidechse aus der unteren Kreide von Lesina in Dalmatien. Abhandlungen der kaiserlich-königlichen geologischen Reichsanstalt. Band 17, Heft 5: 1–24, Tafeln 1-3.(Opetiosaurus Bucchichi、DalmatiaのLesinaの白亜系下部からの新種化石有隣類)
 著者のGeorg Andreas von Kornhuber (1824-1905)は、オーストリアの古生物学者。この字体の小文字で書くと3文字目をmと読み間違うことがあるが、KORN-である。Dalmatiaはクロアチアのアドリア海沿岸部の地方名。
 17ページにわたって詳しい記載がされている。その後分類上の位置について先行した研究について検討して、新属・新種を設定している。3枚の図版を伴っていて、一枚目(Tafel 1)は標本の写真、Tafel 2は線画、Tafel 3はスケッチである。

553  Kornhuber, 1901. Tafel 1. Opetiosaurus Bucchichi holotype 写真

 ディジタル化がうまくいっていないので、わかりにくいが、もっと不鮮明なTafel 2を見ると、何がどうなっているかが分かる。

554  Kornhuber, 1901. Tafel 2. Opetiosaurus Bucchichi holotype 線画

 右上の石版(全形がわからないが)の横径が42cm、縦が33cmというから、ずいぶん小さな個体である。

555  Kornhuber, 1901. Tafel 3. Opetiosaurus Bucchichi holotype 頭骨他のスケッチ

 石版の厚さが8mmから10mmというからずいぶん薄い。よく割れずに運んでこられたものだ。産出地は「1.5 km northwest of Mte. Hum near Verbosca.」というから、東西に長いHvar島(イタリア名Lesina島)の中央部北岸の町Verboscaの付近であろう。Humという山は他の場所にあるが、この辺りには見つからなかった。なお、種名のBucchichは現地で発掘の世話をしたMr. Gregor Bucchichiを記念したものという。
Opetiosaurus Kornhuber, 1901.  模式種:Opetiosaurus bucchichi Kornhuber, 1901.
産出地:Hvar島(= Lesina島)クロアチア Cenomanian

 モササウルス類最後の属はすでに登場したGlobidensである。
⚪︎ Gilmore, Charles Whitney, 1912. A new mosasauroid reptile from the Cretaceous of Alabama. Proceedings of the United States National Museum. Vol. 41: 479-484, plates 39-40.(Alabama州の白亜系からの新種モササウルス類爬虫類)
 標本は歯列を伴う左上顎の一部で、特徴的な丸い歯冠がよく分かる。

556 Gilmore, 1912. Pl. 39. Globidens alabamaensis holotype 左上顎側面 長さ約25cm

 この形は、貝類などをクラッシュするためのもの。上顎骨に歯槽があってその中に歯根が入っているようだ。その様子はもう一枚の図版でよく分かる。

557 Gilmore, 1912. Pl. 40. Globidens alabamaensis holotype 左上顎口蓋側

 生えかわりの様子もわかって興味深い。化石ショーでよく売られている標本は歯冠だけしかないから、こういうことはわからない。前に記したモロッコの標本の写真が次のもの。

558 Arambourg, 1952. Pl. 40. Globidens aegyptiacus, 歯

 まとめておこう。
Globidens Gilmore, 1912. 模式種: Globidens alabamaensis Gilmore, 1912.
産出地:Bogue Chitto Prairies Alabama州 アメリカ

 モササウルス類の属の調査が終わった。ここまでで恐竜・中生代鳥類・翼竜・魚竜・長頚竜・モササウルスの主な中生代爬虫類(+鳥類)の1923年前に記載された属の命名史が分かったことになる。扱わなかったのは、ワニ類・亀類の新生代以降と属を共有するグループ、それにあまり縁のない幾つかのグループである。これらを調べなかったのは、現生の属まで話を広げると多くの面倒なことが出てくるから。

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