次の属も同じ地域からの報告。属名はOpetiosaurusという。
⚪︎ Kornhuber, Georg Andreas, 1901. Opetiosaurus Bucchichi, eine neue fossile Eidechse aus der unteren Kreide von Lesina in Dalmatien. Abhandlungen der kaiserlich-königlichen geologischen Reichsanstalt. Band 17, Heft 5: 1–24, Tafeln 1-3.(Opetiosaurus Bucchichi、DalmatiaのLesinaの白亜系下部からの新種化石有隣類)
著者のGeorg Andreas von Kornhuber (1824-1905)は、オーストリアの古生物学者。この字体の小文字で書くと3文字目をmと読み間違うことがあるが、KORN-である。Dalmatiaはクロアチアのアドリア海沿岸部の地方名。
17ページにわたって詳しい記載がされている。その後分類上の位置について先行した研究について検討して、新属・新種を設定している。3枚の図版を伴っていて、一枚目(Tafel 1)は標本の写真、Tafel 2は線画、Tafel 3はスケッチである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/fe/3e5e9234746bc9fc5338b83dbb39c745.jpg)
553 Kornhuber, 1901. Tafel 1. Opetiosaurus Bucchichi holotype 写真
ディジタル化がうまくいっていないので、わかりにくいが、もっと不鮮明なTafel 2を見ると、何がどうなっているかが分かる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/ee/950407770cbaad9439075a43017c3235.jpg)
554 Kornhuber, 1901. Tafel 2. Opetiosaurus Bucchichi holotype 線画
右上の石版(全形がわからないが)の横径が42cm、縦が33cmというから、ずいぶん小さな個体である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/a9/3ca08169b3b206039d3b38449a9043db.jpg)
555 Kornhuber, 1901. Tafel 3. Opetiosaurus Bucchichi holotype 頭骨他のスケッチ
石版の厚さが8mmから10mmというからずいぶん薄い。よく割れずに運んでこられたものだ。産出地は「1.5 km northwest of Mte. Hum near Verbosca.」というから、東西に長いHvar島(イタリア名Lesina島)の中央部北岸の町Verboscaの付近であろう。Humという山は他の場所にあるが、この辺りには見つからなかった。なお、種名のBucchichは現地で発掘の世話をしたMr. Gregor Bucchichiを記念したものという。
Opetiosaurus Kornhuber, 1901. 模式種:Opetiosaurus bucchichi Kornhuber, 1901.
産出地:Hvar島(= Lesina島)クロアチア Cenomanian
モササウルス類最後の属はすでに登場したGlobidensである。
⚪︎ Gilmore, Charles Whitney, 1912. A new mosasauroid reptile from the Cretaceous of Alabama. Proceedings of the United States National Museum. Vol. 41: 479-484, plates 39-40.(Alabama州の白亜系からの新種モササウルス類爬虫類)
標本は歯列を伴う左上顎の一部で、特徴的な丸い歯冠がよく分かる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/07/fb18e6b0b9aa21ca86e565cc4b2e8ae0.jpg)
556 Gilmore, 1912. Pl. 39. Globidens alabamaensis holotype 左上顎側面 長さ約25cm
この形は、貝類などをクラッシュするためのもの。上顎骨に歯槽があってその中に歯根が入っているようだ。その様子はもう一枚の図版でよく分かる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/1c/4320a3af42fdf54ee1b66a1502125c9d.jpg)
557 Gilmore, 1912. Pl. 40. Globidens alabamaensis holotype 左上顎口蓋側
生えかわりの様子もわかって興味深い。化石ショーでよく売られている標本は歯冠だけしかないから、こういうことはわからない。前に記したモロッコの標本の写真が次のもの。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/3f/8247c59455e5c22954965bf15e9820b5.jpg)
558 Arambourg, 1952. Pl. 40. Globidens aegyptiacus, 歯
まとめておこう。
Globidens Gilmore, 1912. 模式種: Globidens alabamaensis Gilmore, 1912.
産出地:Bogue Chitto Prairies Alabama州 アメリカ
モササウルス類の属の調査が終わった。ここまでで恐竜・中生代鳥類・翼竜・魚竜・長頚竜・モササウルスの主な中生代爬虫類(+鳥類)の1923年前に記載された属の命名史が分かったことになる。扱わなかったのは、ワニ類・亀類の新生代以降と属を共有するグループ、それにあまり縁のない幾つかのグループである。これらを調べなかったのは、現生の属まで話を広げると多くの面倒なことが出てくるから。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます