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古い本 その152 古典的論文補遺 その3

2023年10月05日 | 化石

 Owen (Richard Owen 1804-1892) は、イギリスの重鎮で、大量の著作を発表した。ニュージーランドのモアの研究などで知られるが、ここで関係のある中生代の爬虫類に関するモノグラフ(単一のテーマについて詳しく述べた論文)は、そのころまでに発見されていた化石を網羅した多数の論文で構成されている。これらはPalaeontgraphical Society (æを使うのが正しいが、めんどうなのでaeと表記する)のモノグラフとして1848年から1922年に(vols. 1-74)わたって刊行された。全て刊行がおわったあと、Owenは「A History of British Fossil Reptiles. 1884: Parts 1-4.」というものも出版したが、これにはあまり触れないでおこう。

569 The Palæontographical Society, Monographの初号のタイトルページ 1848年

 なお、このジャーナルは他の動物群のモノグラフも掲載されていて、「graphical」というぐらいだから、多くの図が掲載されている。まだ写真図版がない頃だから、手書きのものであるが、主題の中生代絶滅爬虫類から外れるが、いくつか図の美しいもの紹介しよう。
 まず26論文あるアンモナイトに関するモノグラフのスケッチ。Chalk Ammonite のシリーズ(Sharpe著)、Lias Ammonite(Wright著)、Oolite Ammonite (Buckman著)、があるが、そのうちのWrightの図のいくつかを紹介しよう。

570 Wright 1880. Plate 21, Figs. 1-2. Arietites obtusus Sowerby. ジュラ紀

⚪︎ Wright, Thomas, 1880. Monograph on the Lias Ammonites of the British Islands. Part 3: Classification. The Palaeontological Society, London. 1880: 165-264, Plates 19-40.(イギリスのLias アンモナイトのモノグラフ 第3部)
 現在の取り扱いでは Arietites obtusus (Sowerby)で、この種類の最初の記載のときは、Ammonites obtusus であった。その論文は次のもの。
⚪︎ Sowerby, James 1818. The Mineral Conchology of Great Britain; or Coloured Figures and Descriptions of those Remains of Testaceous Animals or Shells, which have been preserved at various Times and Depth in the Earth. Vol. 2. 251 pp.(イギリスの鉱物貝殻学、地球のいろいろな時代と深さに保存された殻のある動物の遺骸についてのカラー図版と記載)
 この論文は古いだけあってなかなかの難物。各種の生物の殻が順不同(に見えるが何かの系統立てがあるのだろうか?)に並べたもの。第151ページとその前の一枚の図(TAB. 167)に「AMMONITES obtusus」が掲載されている。テキストには最初に主の特徴が4行で書かれていて、そのあとに10行ほどで記載があり、さらに標本の由来や協力者の名前が記されている。

571 Sowerby 1818. Tab. 167. Ammonites obtusus

 殻の表面に波打った色彩が残っているように見えるが、そうではなくて縫合線の存在を描こうとしたのだろうか。あまり上手く描写されていない。殻口の空洞に結晶ができているような感じは良い。

572 Wright 1883. Plate 71. Lytoceras fimbriatum Sowerby ジュラ紀

⚪︎  Wright, Thomas, 1883. Monograph on the Lias Ammonites of the British Islands. Part 6: Description of Species. The Palaeontological Society, London. 1883: 401-440, Plates 70-77.(イギリスのLias アンモナイトのモノグラフ 第6部)
 現在の取り扱いでは Lytoceras fimbriatum (Sowerby)で、この種類の最初の記載のときは、Ammonites fimbriatum であった。この種類もすぐ前に書いたSowerbyの本(Sowerby 1818)に出てくる。ただし、幾つかの資料ではその発行年が1817になっている。この本のVol. l は1812年の発行で、そこにこの種類はないし、他にもう一つ同じタイトルの巻があるとは思えないので、1818が正しいと推測した。

573 Sowerby 1818. Tab. 164. Ammonites fimbriatum

 部分的な標本のためかちょっと違うような...。特徴的な周期的に突き出た肋がはっきりしない。
 「Monograph」のシリーズには、他にもいろいろな動物群に関するものがある。次回もう一つ紹介して、本題の中生代絶滅爬虫類に進む。

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