正義について。
いつどんな時代どんな場所にも、
巨大なものからちっぽけなものまで、
明確な意志のあるものから本人に自覚のないものまで、
世の中には必ず「悪」や「悪意」が存在する。
あなたのすぐそばに、身の回りに、日々の生活の中に、
「悪」や「悪意」は潜んでいる。
「悪」や「悪意」によって人は傷つけられ、損なわれる。
そしてそのとき、正義を行う人間が必要となる。
正義は「必ず」誰かが下さねばならない。
おのれの身を削り、おのれの身を犠牲にしても、誰かが「必ず」正義を行わなければならない。
どんなに自分が損をし、何か大切なものを失い、眠れぬ夜を過ごし、誰にも誉められず、ひとことも感謝さえされず、謝罪もなく、すべてが徒労に終わるとしても、
誰かが「必ず」それをやらねばならない。
その損な役回りを引き受けなければならない。
正義を、ギリギリのところで、守らなければならない。
そうやって、人は生きてきた。
それが他人に対するいちばんの誠意だ。
いちばんの愛だ。
| 村上春樹にご用心内田 樹アルテスパブリッシング |
この批評本の著者によると、村上春樹の小説にはそういう主人公が必ず出てくるという。
まったく戦う意味はなくむしろ損をするのに、「悪」に対しギリギリのところで戦うことになるセンティネル(歩哨)。
好む好まざるに関わらず、「悪」と戦わざるを得なくなる正義の番人。
そんな主人公が出てくるから、僕は村上春樹の小説が好きなのかも知れない。
正義と誠意と愛についての話だ。
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