自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

論文10 受理 高山帯のシカ1

2020年08月15日 | 標本
論文執筆のことを書いてきました。なかなかすんなりとはいかないのですが、それだけに受理されたときは嬉しいものです。
 最近の話題で言えば、中部地方のシカの食性の論文があります。現役時代に研究室に登山好きのK君が入ってきました。最近、シカが高山帯にまで拡大しました。そこで、八ヶ岳と南アルプスに登ってシカの糞を集めてもらいました。それぞれの山で山地帯、亜高山帯、高山帯の3カ所で拾いました。それでわかったのは、山地帯では南アルプスではササが多かったのですが、八ヶ岳では双子葉植物が多く、大きな違いがありました。しかし亜高山帯ではどちらでもイネ科が増え、高山帯ではどちらもほぼイネ科だけになるという垂直変異を示しました。これは山地帯では山の地形や人間による利用の歴史も違うので、林の状態がにているが、影響の少ない高山帯ではどちらでも自然草地が広がるので納得がいきます。もう一つの重要な成果は糞の栄養分析をおこなったところ、意外にも高いところほどタンパク質含有率が高かったのです。ちょっとおかしいと思ったのですが、結果はそう出ました。そこで改めて文献を調べてみると、北アメリカでこれとまったく同じ結果がでていて驚きました。つまり、高山帯では量はともかく質的には良い食物があるということです。そうであれば、夏になってシカが山を登ることも理解できます。こういう強いデータがあったので、ノルウエーのWildlife Biology(野生動物生物学)という雑誌に投稿しました。


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