リサイタルのための委嘱作品「追想の情景」の第3曲目は「五月雨の中に咲く花に触れた」です。第1曲目がフランスのリュート曲を思わせるプレリュード風なのに対して、第2曲目は少し舞曲風な部分から、無窮動的な速い動きに続く活動的な部分が多い曲でした。
曲全体は大きく4つの部分に分かれます。まず最初の部分は日本的な音律を思わせる4小節の導入部から始まります。そこから16分音符による「下降する旋律的な動き」を見せ、変ロ長調の主和音で少し区切りをつけます。ただその前の和音はト短調の主和音、ニ短調の主和音、イ短調の属和音でそれらの和音から変ロ長調の主和音に導かれます。このあたりのコードプログレッションはなかなか巧みな作りで変化に富み私が最も気に入っている部分のひとつです。
続く2つ目の部分は8小節は単純な音型を繰り返し音数を増やしていき、始めの方に見られた下降する旋律とは逆の「上昇する旋律的な動き」が中心のフレーズが出て来て、6連符の速い動きを挟んで一旦停止します。ここまでに見られた下降と上昇のフレーズは対をなしています。
第3部分は曲は基本的には長調に転調していますが、ときおり短調の影が見え隠れします。今までに使われたフレーズがあちこちに出て来て、短いですが自由な展開とも見ることができます。
最後の部分のつなぎに導入部の一部が使われ、つづいて前半に出て来た「下降する旋律的な動き」が出て来ますが前と同じではありません。そして一旦止まるような動きを感じさせるフレーズに続き「上昇する旋律的な動き」が繰り返され6連符の速い動きを経てピカルディ終始のよう感じでニ長調の主和音で曲を静かに閉じます。このニ長調の主和音はト短調の最終曲の属和音でもあり、静かに最終曲が始まるのを待ちます。
>言葉で曲の流れや雰囲気を説明してもらっても、音楽脳ではないおいらには見当もつきま... への返信
音楽を言葉で表現するのはとても難しいですね。曲はとてもバロック時代の古典的な曲と異なり詩的な曲です。