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国境なき医師が行く(読書メモ)

久留宮隆『国境なき医師が行く』岩波ジュニア新書

20年の経験を持つ外科医が、安定した地位を捨て、「国境なき医師団」に参加。紛争と貧困のアフリカ・リベリヤで医療活動を行う決意をする。

なぜか?

日本の大病院で管理職として働くうちに、病院の利益、業績、人事のことばかりを考え、「患者と一対一で向き合う」「患者を最初から最後まで診る」という当初の志からはずれていることに気づいたからだ。

しかし、国境なき医師団で働くと、収入は十分の一に減り、命の危険もある。自分が得意とする症例だけに集中できる日本と違い、毎日がほとんどはじめての症例となる。

十分な検査機器や設備がない中、テキストを見ながら治療し、3か月で350件という驚異的な数の手術をこなさなければならない。言葉の壁、文化の壁、他国の医師との衝突、現地での病気などなど、まさに「修羅場体験」である。

40代半ばという年齢は、経験を積み、自分なりのノウハウも確立し、地位や収入も安定してくる年代である。逆に言えば、新しいことを学べなくなり、成長が止まってしまう時期ともえいる。

転職が容易な医師とはいえ、当初の志を大事にするために、まったく新しい環境に身を投じて学び直した久留宮医師の姿勢に感銘を受けた。

本書を読み、成長が止まってしまいやすい中年だからこそ、「ストレッチ(挑戦)」し、「アンラーニング(学習棄却)」することが大切になる、と気づいた。
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