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『輝く日の宮』(読書メモ)

丸谷才一『輝く日の宮』(講談社文庫)

國學院大学の助教授だった丸谷才一が、国文学の知識を存分に生かして書いた小説である。

主人公は、美人だがちょっと変わり者で少し自分勝手な国文学者・杉安佐子。彼女は、源氏物語の中にかつて存在したが失われてしまったとされる「輝く日の宮」について探求するのだが、最後にはそれを再現した小説まで書いてしまう。本書を読むと、源氏物語の背景がよくわかる。

国文学の学会が舞台となっているのだけれど、これがまた面白い。未知の世界であった日本文学の世界がチラリと見えた気がする。僕が関係している分野である経営学や心理学とは違うだろうと予想していたが、意外と共通点が多かった。

主人公は学会でも高く評価されている30代の学者なのだが、その理由は「大胆な仮説」とそれを支える「論拠や根拠」を明示している点にある。

よく考えたら、これは学問にかぎらない。実業界においても、すぐれたビジネスパーソンは「○○という商品を出したら売れんじゃないか?」という大胆な仮説を立て、「なぜなら~だから」という理由を考え、行動に移している。学問もビジネスも、優れた人の思考は似ているのかもしれない。

恋もしつつ、自分の頭で考えながら、楽しんで研究している主人公の姿を通して、国文学の魅力が伝わってきた。
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