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『こころ』(読書メモ)

夏目漱石『こころ』角川文庫

私たち人間は自分のことがかわいい。この自己中心性から来る「罪」を強烈に描き出しているのがこの小説だ。

この本は

・先生と私
・両親と私
・先生と遺書

という3章から構成されている。

「先生と私」「両親と私」を読んでも、何がいいたいのかさっぱりわからない。主人公が慕う「先生」は、東大を卒業しているにもかかわらず、これといった仕事をせずにブラブラしている。謎が解けるのが最終章の「先生と遺書」である。この章は、めちゃくちゃ読ませる内容だ。さすが漱石。

読み進めるうちに、「そうそう、そういうことあるある」と感じることが多く、先生と自分を重ね合わせてしまう。そして、自分がいかに自己中心的であるかを思い知らされる。

しかし、友を死に追いやってしまうくだりに差し掛かると、さすがに「そうそう」とは思えない。私たちが持っている自己中心性は、一歩間違うと人を殺すほどの恐ろしい力を持っている。人間が持つ原罪を痛感させられる作品である。
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