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苦労していないと尊敬されない日本

全日空の機内誌『翼の王国』に「おべんとうの時間」というシリーズがある。いろいろな人々が登場して、その日のお弁当とともに、働きぶりや生活の様子が紹介されている。

これまで、馬の飼育係の女性とか、高速道路の料金所のおじさんとか、藁ぶき職人といった方々が登場している。いろんなお弁当の写真が紹介されるが、なぜか「卵焼き、ホウレンソウ、ウィンナー」というおかずが多いような気がする。日本の文化なのだろうか。

7月号に登場したのは外資系銀行に勤務するバタルー・プジョールさん。お弁当は、フランスの女性らしく、パエリア風のごはんと焼きりんご。

プジョールさんが、日本の職場について次のように語っているのが印象に残った。

「日本人って、苦労していないと尊敬されないでしょ。フランスでは楽しんでいないと尊敬されない。」

「外国人の目から見ると、日本の社会はプレッシャーが大きくて、みんな心の中で葛藤しているように見えます。失敗したら許してもらえないっていう空気がある。たぶん、ヨーロッパの国では、その点がもっと自由で、失敗しても次があるよっていう考え方ですね。」

この記事を読んで「やっぱりそうなんだ」と思った。僕が、日本の社会について日ごろ感じていることと同じだからだ。日本では、長時間働くことや、つらいことを我慢することが美徳とされている。明るいうちに家に帰ると、なんとなく罪悪感がある。

ただ、「ハードワーク文化」「我慢して頑張る文化」は日本の良いところでもあり、僕は結構好きである。これまでの日本の発展を支えてきた「ドライバー」となる価値観だと思う。

しかし、心理学や経営学の研究によれば、人が成長するためには、「がんばること」に加えて、「楽しむこと」や「失敗しても大丈夫という安心感」が欠かせない。

楽しみながら苦労している人が尊敬される社会」になったとき、日本が進歩したといえるのではないか、と思った。

出所:『翼の王国』2009年7月号、p.83-85.
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