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問題解決型の授業(2) 企業からの課題説明

第2回目の問題解決型授業(経営学原理Ⅱ)には、小樽オルゴール堂、田中酒造、中央バスの方々が来られた。パワーポイントなどを使い、各社10分間くらいで「対象事業、背景説明、抱えている問題点、これまで実施してきた対策」についての説明があった。共通していた課題は、「どうしたら来客数を増やせるか?」という点。

小樽の観光名所の一つである小樽オルゴール堂からは、「外国人観光客が伸びているが、来客数の総数は横ばい。課題は日本人観光客のリピートをいかに促すか」という課題が出された。

日本酒業界において革新的な経営で知られる田中酒造は、観光客にターゲットを絞り、亀甲蔵という見学型施設をテコに売り上げを伸ばしてきたが、現在、「日本酒という製品の枠を超えて、どのようにビジネスを展開していくか」という点を模索しているらしい。

中央バスからは「小樽天狗山ロープウェイ」「おたる散策バス」という2つの事業について説明があった。夜景が売り物の天狗山は「夏の観光、夜の観光をいかに伸ばすか」、おたる散策バスは「いかに利用者数を増やすか」という課題に取り組んでほしいとのこと。

説明を聞いた学生は、取り組みたい事業(第1~第4希望)をアンケートに書き込み、提出。チーム発表は来週だ。

最後に、学生は「行動力、論理的思考力、対人コミュニケーション」など、自分の能力を自己評価シートに記入。これは、授業の前と後で自己評価し、問題解決型の授業を通して、どのくらい成長したかを把握するという狙いがある。

そして来週は、実践的な演習が開始される。

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ケースメソッド授業(1)

小樽商科大学1年生以上が履修できる経営学原理Ⅰでは、ケースメソッドを用いて、問題解決力を高めることに力をいれている。履修者は約300名で、大学で一番広い教室を使っている。授業では、まず経営学の考え方についての講義を20~30分した後、10~15分のビデオケースを見て、個人分析する。それから、15分程度で、5,6名のチームで互いに意見を出し合い、ディスカッションを行うという内容である。テキストは、小樽商科大学ビジネススクール編「MBAのためのケース分析」(同文舘出版)。

今日の講義は、「ケース分析について」と「SWOT分析」。ケース分析(ケースメソッド)とは、特定企業の経営に関する出来事や状況を記述したケース(文書あるいはビデオ)を読み(見て)、その企業が抱える問題点を明らかにして、解決策を考え出す、という教育方法。要は、事例を用いた問題解決や意思決定の練習である。ケースメソッドには「実世界を疑似体験できる」「理論の意味が理解できる」「ビジネスを統合的に理解できる」「集団運営スキルが身につく」といったメリットがある。

SWOTは、自社の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、環境の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を分析し、自社の戦略を練るための考え方。SWOTは、上記4つの頭文字を合わせた呼び名である。戦略を立てる際のポイントは、外部環境の機会をとらえて、自社の強みを生かす点にある。このとき、環境の脅威を回避し、自社の弱みを打ち消すことができればなおよい。

さて、今日のケースは「自転車工房」という会社。NHKビジネス未来人という番組の一部を流した。この会社は、顧客の要望にあった自転車を作る、東京下町の自転車屋さんだ。足の悪い高齢者の方や、ペットを連れて買い物に行く人用に、特注品の自転車を作成してくれる。街の自転車さんが廃業に追い込まれている中、元気に商売をしている。

ビデオを見た後は、まず15分間で個人分析。配布された分析シートに、自転車工房のS(強み)W(弱み)O(機会)T(脅威)を書き込み、改善ポイントを考える。このとき大事なことは、自社の強みが失われず、より強化する形で改善案を考えること。

次は、グループ毎にディスカッション(写真を参照)。初回にしてはけっこう意見を出すことができたようだ。「ビジネス用、ペット用、主婦向けなど、ニーズのある自転車のプロトタイプを決めておいたらどうか」「高くても買う顧客は全国にいるはずなので、インターネットを通して情報発信する」「事前にメールで相談を受け付け、相談時間を短縮する」「機能性だけでなく、デザイン性も高める」「商品を早く渡し、多くのニーズに対応するためにも、若手の職人を育てて、チーム体制をつくる」「高収入の人にターゲットを絞りブランド化する」などなど。まだ慣れていないせいか、分析は浅いが、今後の授業で徐々に深めていく予定である。

少し時間があったので、3グループを選び、プレゼンテーションをしてもらった。「問題点+解決策」を二つ選び、説明してもらうという形。300人の前で堂々とプレゼンしている様子を見て、「今の学生は度胸があるな」と感心した。

学生の感想としては「ディスカッションで自分とは違う視点を持つ意見が聞けた」「SWOT分析はすごく面白い」「メンバーが考えた問題点は似かよっていたが、解決策が異なっていたので面白かった」「これから話す力が高まるかもしれないと感じた」「いろいろな人と話せて楽しかった」「初めての授業で不安もあったけど、なんとか上手くやれたと思う」など。全体的に、学生は楽しんで授業を受けていたようだ。

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問題解決型授業(1)

小樽商科大学の2年生以上が履修できる授業『経営学原理II』では、民間企業3社(北海道中央バス、田中酒造、小樽オルゴール堂)の協力を得て、アクションラーニング型授業を実施することになった。企業が抱える課題に対して、学生が5名程度のチームを組み、問題点と解決策を検討するという内容である。教室の中だけで勉強するのではなく、実際にアクション(企業の現場に出て調査)することで、実践的な問題解決能力を身につけてもらうのが狙いである。

学生は、自分たちが選んだ企業の店舗・施設を実際に訪問し、自分の目で観察したり顧客にインタビューすることで問題点を探る。教室では、「問題解決の方法、リサーチの方法、解決策の練り方」に関する講義(30分程度)を受けた後、チーム毎に現場で収集したデータを分析する(60分程度)。つまり、授業外の時間を使って企業の現場を訪問し、教室では、グループディスカッションを中心とした演習によって問題解決策を探るという内容だ。

授業は10月~1月までの期間に15コマ(一コマ90分)あり、11月に中間発表(3コマ)、1月に最終報告会(3回コマ)が開かれる。中間発表、最終報告会では、学生が、企業の担当者に対して自分たちのリサーチや分析結果をプレゼンテーションし、質疑応答を行う。つまり、授業の約半分が、企業人との対話の時間に当てられている点がこの授業の特徴といえる。

10月2日(火)の授業では、オリエンテーションを行い、受講生約170名が参加した。来週9日には、3社の企業担当者から、自社の課題について説明がある。その説明をもとに、学生は自分が調査したい企業の希望を出し、10月16日にはチームが組まれ、実際に演習やリサーチが開始される。
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読書メモ「仕事で一皮むける」(金井壽宏)

神戸大学金井先生が書かれた「仕事で一皮むける」(光文社新書)を読み返した。

この本は、関西経済連合会に所属する企業19社の経営幹部20名の「一皮むけた経験」(44ケース)を紹介し、それを金井先生がキャリア論やリーダーシップ論から解説したものである。20名の経験談を通して、日本企業の特質や、日本企業(大企業)における管理職のありかたが見えてくる。

「一皮むけた経験」という概念には、「人の成長は、漫然と漸進的にゆっくりと進むのではなく、ここぞというときに大きなジャンプがある」という意味が込められている。個人的には、じっくり型の経験(自分では気付かないが重要な経験)と、イベント型の経験(印象に残る経験)の2タイプがあるのではないかと思うが、イベント型の経験が重要であることは確かだろう。

面白いなと思ったのは「日本では、非管理職と管理職の関係が曖昧で、かなり上級の管理職になってからマネジメントを意識的に学ぶ必要を痛感することが多い(65ページ)」という点。早い時期に明確な権限を持つ管理職を経験する欧米と違うところだ。学校の管理職(校長)や政治家もそうだが、年長になってからマネジメントを経験する傾向にあるように思える。センスがある人に対しては、早期にマネジメントを経験させることも大事かもしれない。

この本ではいくつもの「修羅場体験」が語られているが、そこに共通するのは、「真剣に誠実に相手と向き合えば、何とかなる」ということ。また、「何のためにこの仕事をしているのか」「今、何をすべきなのか」という仕事の本質を考えることが問題の解決につながっているようだ。つまり、しっかりと相手と向き合い、やるべきことを実行すれば、修羅場を乗り越えて成長することができるのだろう。

経営トップのリーダーシップと聞くと、いろいろと複雑なことをやらなければならないというイメージがあるが、金井先生によれば「①大きな絵を描いて、②人々を巻き込むこと」が大事になる。このとき難しいのは「トップダウンとボトムアップの摺りあわせ」だ。トップダウンばかりだと、指示待ちメンバーばかりになってしまうし、ボトムアップを待っていたら会社は変わらない。

と、いろいろと考える材料を提供してくれる本である。
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ブログの内容

このブログでは、とりあえず以下の内容について書く予定です。

1)担当している授業の様子
2)研究に関わる内容
3)聖書の言葉

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