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ナレッジマネジメント

野中郁次郎・紺野登著『知識経営のすすめ』(ちくま新書)を読んだ。

ナレッジマネジメント(KM:Knowledge Management)は、今ひとつよくわからないマネジメント手法だが、この本は、いろいろな枠組みによってKMの考え方を整理・分類してくれる。

著者は、KMのタイプを4つに分けているが、これによってかなり頭が整理される。

「ベストプラクティス共有型」
これは世の中で行われているKMの主流だ。成功事例を社内で共有することで効率を上げることが狙い。たとえば、ノウハウを文書化して、データベースをつくりあげるなどの活動が典型的。

「専門知ネット型」
個別の領域について詳しい知識やスキルを持っている専門家をネットワークで結び、「こういう問題なら、○○に聞けばいい」ということがすぐわかるようにする。ノウハウを文書化することはせずに、ネットワークを作ることに主眼を置く。

「知的資本型」
あまり使われていない特許やライセンスなどの知的財産を活用して、そこから収益を得る。ただし、特許などに限定することなく、広く知的財産の経済的な価値を明らかにして収益に結びつけることが大切になる。

「顧客知共有型」
製品・サービスを通して顧客と共通の経験を持ち、そこから利用法などのノウハウを獲得して共有する。「顧客にとっての価値は何か」を考えながら、顧客とともに知識を蓄積していくやり方である。

こうして分けられた4タイプのKMを組み合わせることは可能だが、それぞれの企業の文化との相性を考えなくてはいけない。あれもこれも安易に取り組むと企業に根付かないらしい。

また、この本の中で強調されているのは「ノウハウを形式知化してデータベースを作るだけでは不十分」ということだ。人間同士のふれあいや暗黙知の豊かさが優れた知識を生み出す「場」を醸成するという。

つまり、優れた知識を「生み出す」ことと「共有する」ことのバランスをとることが大切になる。そのためにカギとなるのが知識を生み出し共有するための「場」だ。物理的な場からウェブ上の場までさまざまな場を作り出すことが経営者の役目である。具体的には、次のような場がある。

・顧客との接触
・トップによる現場の歩き回り
・休憩室での雑談
・アフターファイブの飲み会
・プロジェクトチーム
・イントラネット、グループウェア
・研修
・OJT

良く考えてみると、特別なものはない。どこの組織にでもある日常的な活動だ。こうした活動の一つ一つの中に「知識が生み出され、共有される」仕掛けや仕組みを埋め込むことが優れたKMにつながるのだろう。

最近、「場」については、「職場力」「現場力」「ワークプレイスラーニンング」などが提唱され、その重要性が再認識されている。場の仕組みを解明することは、理論的にも実践的にも大切な課題だと思った。


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