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失敗事例の共有

東芝ソリューションが「専門職寺子屋」とよばれる社内教育を始めたらしい(日経産業新聞2008年1月21日)。社内大学制度「eユニバーシティ」の一部であり、レベルの技能を持つ熟練社員30人が自ら選んだテーマで講座を開くという試みだ。

その中でも面白いのが「失敗事例の共有」をテーマとした講座。あるプロジェクトマネジャーは、官公庁向けの大型案件で失敗した経験を授業で講義したという。200ページの資料にまとめ「案件の詳細な過程を説明し、いつどういう選択肢の中から、何を選んだら失敗に至ったかを知ってもらう」ことを目的としている。

成功事例は共有できるが、失敗事例はなかなか出てこないのが普通だ。この試みの良いところは、講義という形にすることで失敗事例が出しやすくなること。また、単に「事例を出せ」というと負担に感じるかもしれないが、大学の講義となると評価しやすく、内発的なインセンティブになりやすい。

改善点として次の4点があるように思える。第1に、「講義」となると講師側が構えてしまいレクチャー中心になりがちだ。ざっくばらんな意見交換ができる場を設定することが大切になるだろう。

第2に、いくら貴重な経験でも、それを言葉で説明しきれないのが普通なので、専門スタッフが経験を言語化することをサポートする必要がある。ポイントをわかりやすく要約して、質疑応答によって引き出された情報やナレッジも蓄積する工夫があるとよい。

第3に、失敗事例だけだと話にくいので、その後の成功事例と合わせて伝えることで、抵抗感を少なくすることができると思う。「失敗からいかに学習したか」を強調する内容にしたらどうか。

最後に、たた失敗を伝えるのではなく、受講者に考えさせる工夫が必要だろう。たとえば、プロジェクトの初期状況だけを伝えて「あなたならどのようにプロジェクトを進めるか」を考えてもらうようなケースメソッド方式を採用することもできる。受講者の考えを出してもらった後に、「実はこんなことが起こったんです」という種明かしをすることで、理解も深まると思われる。


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