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不連続で考え直す(高島屋)

老舗高島屋の改革が成果を上げているらしい(日経ビジネス2006.7.31)。2002年度には1.4%だった営業利益率が、2005年に2.8%に改善され、2007年にも3.2%と改革の勢いは維持されている。

1831年(天保2年)に創業した高島屋は、革新性が持ち味の百貨店だった。しかし、1980年代に入り、危機感が薄く、前例踏襲型の風土が強まっていく。そんな高島屋を変えたのが、2003年に社長に就任した鈴木弘治氏だ。

今までの考え方は打ち止めにして、すべてを不連続で考え直そう

と呼びかけた鈴木氏は、高島屋を戦う集団へと変えていく。「不連続で考え直す」とは、これまでのしがらみを絶つことを意味している。高島屋のケースは「改革の進め方」について教えてくれる。

鈴木氏の改革で注目すべきことは、高島屋の最大の強みである「顧客資産とブランドイメージ」を徹底的に守ろうとしたこと。逆に言うと、顧客資産とブランドイメージと直接関係のないところから改革していった。創業家を役員からはずし、百貨店と関係のないグループ会社を整理統合し、メインバンクとは関係のない金融機関から提携カードを発行し、賃貸物件の賃料引き下げ交渉を行った。

ただ、気になるのは取引先にしわ寄せがきたことだ。企業は顧客だけを見ていればよいわけではない。取引先や社員から見放されてしまっては、クオリティの高いサービスを提供することはできない。しかし、高島屋の場合、一連の改革を通して、長年のしがらみでつながっていた取引先を、価格やクオリティの面から考え直そうとしている点は評価できる。

例えば、導入当初、仕入れ値だけを基準に入札したため、売れ筋商品が消えてしまったという。これを反省し、現在は、MD本部が必要と判断した商品については別枠を設けて品揃えをしている。変革を進める際には、クオリティとコストの双方を考慮することが求められる。試行錯誤しながら、両者のバランスをとることが大切だ。

注目したいのは、従来のしがらみを絶つための組織的な工夫である。例えば、店頭商品に競争入札制度を導入する際に、取引先との関係が強いバイヤーではなく、後方の購買部門に入札制度の管理を担当させている。取引先がバイヤーに苦情を言っても「申し訳ないけど、違う部署がやっているので、口出しはできない」と答えるしかない。

改革を進めてから3年が経った。財務業績は好転しているものの、挑戦する風土が定着しているとはいえないらしい。組織風土の改革には、長い時間がかかる。ケースを読んで感じるのは、「これが高島屋だ」という特徴を出すには至っていないという点だ。これからの高島屋の改革に注目したい。


出所:日経ビジネス2006.7.31「高島屋:しがらみにも断ち方がある」
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