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終わりのない戦い(MKタクシー)

MKタクシーのビデオを授業(経営学原理Ⅰ)で見た。ケース分析のためだ。以前、京都に行ったとき、「本当にMKタクシーは、運転手さんがドアを開けてくれるのだろうか?」と思って乗ってみたが、本当にドアを開けてくれた。そして、運転手さんは、物腰がやわらかく教養があって、とてもいい人だったのを覚えている。

MKタクシーのサービスを支えているのは教育だ。新人は2週間、徹底的に訓練を受ける。例えば、とにかく大声を出す練習。何のためかというと、挨拶を徹底するためである。サービスは挨拶に始まって、挨拶に終わる。「タクシーは輸送手段ではなくて、接客サービス業です。だから、挨拶しなかったら運賃はいりません」というのは青木定雄会長。

また、社歌・企業理念を唱和するなど、思いっきり体育会系の研修の様子が流れるのを見て、ケース分析をしている学生たちも苦笑していた。しかし、徐々に真剣なまなざしにかわる。なぜなら、MKタクシーの本気度が伝わってきたからだ。

こうした訓練をするメリットの一つは、MKの価値観に共鳴できる人しか残らないこと。エクセレントサービスを提供する企業の多くが、人材を採用するときに価値観が共有できることを重視している。同社では、タクシーの経験者は採用しない。MKの価値観や文化が相容れないことが多いからだ。

ビデオを見ていて気づいたことだが、体育会系の研修であるにもかかわらず、指導する社員の言葉づかいが紳士的である。鬼軍曹のような教官が新人に罵声を浴びせるのを想像してしまったが、大違いであった。また、驚いたのは、MKタクシーでは、昭和40年代から「社員持家支援策」や「身障者優先乗車」といった活動をしていたこと。そんなに前から、社会を意識し、社員を尊重していたとは知らなかった。

印象に残ったのは、やはり青木会長の言葉だ。

「早朝の駐車場で、私は運転手一人一人に挨拶しますが、はじめは知らん顔だった。彼らに挨拶してもらうのに10年かかった。教育とは、社員の意識を変えさせることです。ここまで来るのに40年かかりました。」

「サービスは無限です。良いサービスをするとお客様は喜ばれるが、そのサービスはだんだん当たり前になります。玄関前まで迎えに入ったら、次はそれが当たり前になる。そのうち、「荷造りしてくれ」と言われる。そしたら、荷造りをするんです。顧客の希望は無制限に上がっていく。しかし、それに応えるとMKが選ばれます。MKしか乗れなくなります。そして、それが教育になるのです。社会や顧客から喜ばれるのは大変なことです。」

優れたサービスが、ここまで教育によって支えられていることを示すケースはないだろう。そして、それは40年という長い間、コツコツと積み重ねられてきた賜物だ。青木会長の言葉が印象的である。

これは、終わりのない戦いです

この言葉を聞いて、「サービス」や「教育」は「戦い」なんだな、と思った。


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