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楽に仕事してますか?

業務改善の実例が載っている本を探していたところ『業務改善がよくわかる本』(オフィス業務改善研究会編、日本能率協会マネジメントセンター)を見つけた。

業務改善というと生産現場におけるものが多いが、この本は、間接部門や営業部門を対象とした業務改善事例が掲載されている点に特徴がある(36社のショートケースが載っている)。いろいろと業務改善のツボが書かれているが、その中でも印象に残ったのが次の言葉だ。

あなたは楽に仕事をしていますか?

仕事が楽にできているということは、ムリ・ムダ・ムラがないように、仕事の流れが出来ているということだ。逆に、苦しいということは、どこかにムリ・ムダ・ムラが存在するということ。面白かったのは、長島茂雄氏の華麗なフィールディングの話(といっても今の若い人はわからないだろうが・・・)。大学時代に監督から1000本ノックを受けて血反吐を吐いていた氏は「なんとかムダな動きを少なくして楽に捕球できないかを考えた」らしい。そして生まれたのが、あの華麗なフィールディング。長島氏が守っていた三塁には、スパイクの跡が極端に少なかったという。

では、どのように業務改善をしたらよいのか?まず第1ステップは、仕事を分解して、そのつながり具合をフローチャートで表してみる。このとき、個人の仕事の手順を係、課、部といった範囲で関連づけ他の部門まで広げる。このときの観察や取材によってデータを収集し、図式化した後、「個数、件数、コスト(金額)、スタッフ数、作業時間」などで定量化する。この定量化という点が要だ。

次に、どこに問題があるかを見極める。この本によると「どうもこのあたりが問題だ。なんとか改善できないか?」という直感に頼るのが一番であるという。そして、マトリックス図、KJ法、フィッシュボーンダイヤグラム、パレート図といったTQMでおなじみの道具を使って原因分析をしていく。

原因がわかったら改善する。改善する方法には次の4つがある。

1)排除 必要性がない作業はとりあえず止めてみる
2)交換 作業手順を入れ替えるなどしてみる
3)簡素化 排除とも関係する。ムダな作業を省いてシンプルにする
4)変更 ピークの平準化など、集中する仕事を分散化・細分化する

このとき、アイデアラッシュ会議を開き、いろいろなアイデアを吐き出し、それを費用対効果の観点から評価し、社内で実行可能なものを選ぶ。改善の方向性が決まったら、改善計画書を作成し、実施状況が誰でもみられるように、壁に貼ったり、イントラネットに掲載することも大事だ。改善活動が終了したら、改善計画書を振り返り、改善レポートを作成する。

参考になった事例を紹介しよう。

仕事の渋滞を平準化
広告代理店M社では、月曜日、月末、3・7・9・12月に仕事が渋滞する。そこで、仕事を取ってくる営業部門が受託予定情報を仕事を実行する部隊に流すことにしたところ、仕事の平準化が進み残業代も低下したという。

改善意識の向上
製薬メーカーK社の工場では、ムダを発見した従業員が、その内容を「ムダエフ札」という専用のカードに記入し、所定の場所にぶら下げることにした。これによって一人一人の改善意識やコスト意識の向上に役立っている。

確率の高い営業活動
家電販売S社の営業部門では、通産購入額に応じてS、A、B、C、Dと顧客をランク付けし、1年以内に購入してくれた「稼動客」と、それ以外の「未稼働客」に分け、転居などで購入が見込めない客を「休眠客」とする。そして、B、C、Dランクの未稼働客を最低でも3ヶ月に1回は訪問することで、優良客化しているという。

部門をまたがる応援隊
3000名の従業員を抱えるベアリングメーカーM社の本社は100名しかいない。決算期になると忙しい経理部には、他の部門からの応援隊がかけつける。そして株主総会前の繁忙期には、他の部門が総務部を応援する。こうして、部門間の敷居を低くして応援隊制度を導入することで間接部門のスリム化を実現している。

平準化と対応の質の向上
家電通信販売J社のコールセンターでは、スタッフの作業要素をストップウォッチで計測し、標準作業時間を割り出してレイアウトを決めている。また、お客様に対して優しい対応をする余裕をもたせるために、各チームは90分毎に15分の休憩時間が与えられている。チームは90分毎の「五月雨シフト」が組まれ、仕事は平準化されている。

シンプルなナレッジ管理
プラント・エンジニアリングのT社では、各プロジェクト毎にA4・1枚の報告書を提出させ、それを「ナレッジバンク」というデータベースに蓄積して、キーワード検索できるようにしている。大量の報告書がデータベースに入っていた以前と比べ、トラブル処理の時間が平均3.5日から1日弱へと縮まったという。なお、詳しい情報はコード化して検索できる。

フィールド改善隊
流通業I社では、専門の改善隊を組織し、問題店舗に3ヶ月間常駐し、かたっぱしから改善を行う。専門部隊は10名程度だが、周辺店舗から1名ずつの常駐が命じられるため総勢30名となる。まず、現場をくまなくチェックして問題点リストを作成し店舗図上に記入され(200の問題点)、解決されるごとに青いシールが張られ進捗状況を見える化している。

管理者業務をマニュアル化
自動車メーカーN社では、プロジェクトチームを組んで現場を調査し、管理者の非定型業務をマニュアル化した。同時に、店長および整備工場長を集めた「戦略レビュー会議」を定期的に開催し、毎回、氏名された店長や工場長が「自分の店舗・工場の問題点・改善の目標設定・対策立案・評価・今後の計画」について発表し、知識を共有化している。

こうした事例が盛り込まれており、業務改善のイメージを持つことができる本である。
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