ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ワインに音楽と色彩が加わったら?北イタリアのワイン「ケットマイヤー」の場合

2023-02-01 15:17:03 | ワイン&酒

昨年末、ワインと音楽の話を、シャブリワインの4つのアペラシオンをテーマにした楽曲「シャブリ・シンフォニー」で紹介しました。

耳障りな騒音の中では心穏やかでいられませんから、はワインを飲む時の大事な環境要素のひとつといえます。

 

音に色彩が加わったら?

 

昨年11月に参加した「KETTMEIR ケットマイヤー」の試飲会で、それぞれのワインに対して音楽と色彩を組み合わせた演出が行なわれました。

2019年にイタリアで行なったのと同じ形式だそうです。

 

 

イタリア北部アルト・アディジェ州「ケットマイヤー」は、ジュゼッペ・ケットマイヤーが、ボルツァーノの南西、カルダロ湖を見下ろす地に1919年に設立したワイナリーです。

最高地点は標高800m、機械の入れない畑は手作業を余儀なくされ、危険が伴う仕事になるといいます。

 

アルト・アディジェは4000万本のワインを生産する州で、ほとんどがスティルワインですが、わずか1%のメトドクラシコ(瓶内二次発酵)のスパークリングワインを生産しています。

創業者のジュゼッペはアルト・アディジェ州のメトドクラシコのスパークリングワインの最初の造り手だそうで、現在、同州のメトドクラシコワインの25%をケットマイヤーがつくっているそうです。

 

イタリアワインガイド「ガンベロロッソ」で調べてみると、ケットマイヤーのメトドクラシコのスパークリングワインが高く評価されていました。

スパークリングワイン選びで悩んだら、ケットマイヤーのメトドクラシコをぜひ候補に入れたいですね。

 

 

ということで、音と色彩を意識したテイスティングの1本めは、メトドクラシコのスパークリング。

使用ブドウは、シャルドネ、ピノ・ビアンコ、ピノ・ネロ。

 

KETTMEIR Alto Adige Doc Metodo Classico Brut Athesis 2019

 

ワインが注がれた後、部屋の中がパープル?淡いブルー?に沈んだ時 ー私には「沈んだ」ように感じたのですが、

清冽な小川の清流の水底に身を置き、上を見上げると水面。

清流に沈んだかのような場に置かれ、一瞬、音が消えました。

ふと気がつくと、水底に音楽が流れ、ゆったりと私の身体を包んでいきます。

心地よい色の空間と音楽に包まれながら口にするスパークリングワインは、癒しそのもの。

 

この時に流れていた音楽は「輝く魚のいる川」。

1984年にハロルド・バッドとブライアン・エーノによってつくられた環境音楽のアルバム「ザ・パール」の中に収められている曲だそうです。

 

このワインを色で表現するなら、ターコイズ、アクアマリンということで、部屋の中がこの色で満たされたわけです。

 

※参考小売価格:3,800円(税抜)

 

ワインと音楽についてはシャブリのプレゼンテーションで理解を深めましたが、さらに色彩という視覚的要素が加わると、また新たな楽しみ方が見つかりますね。

 

プレゼンターは、来日したケットマイヤーのエリカ・ガロンさん

 

この後に紹介されたワインはこちら。

 

 

KETTMEIR Alto Adige Doc Pinot Bianco Athesis 2019

表現する色彩は「明るい黄色」

音楽は16世紀のスペインの作曲家ルイス・デ・ナルバエスの変奏曲「牡牛の番をして」。

ギターとリュートの中間的構造を持つ古代の楽器ビウエラで演奏されています。

 

フレッシュでフルーツ豊かな香りと甘みがあり、テクスチャーはなめらか。

柑橘の皮のビターなニュアンスがあり、全体的にイエローの色彩と同調していると感じました。

イエローの色彩の中ですが、ギターに似たビウエラの軽やかな音色が流れることで、静かで、瞑想できる雰囲気になったように感じました。

※参考小売価格:3,600円(税抜)

 

 

KETTMEIR Alto Adige Doc Müller Thurgau Athesis 2012

色彩は「オレンジ」

音楽はドイツの現代アーティストであるデヴァ・プレマル作曲「ムーラ・マントラ」。

 

2012年と熟成を重ねたミュラートゥルガウのワインはオリエンタルなノートがあり、エキゾチックなアロマが豊かで、桃のニュアンスも感じました。独特のスパイス感があり、濃密でなめらか。瞑想のワインですね。

熟成感、熟れた感じをオレンジ色が表現し、エキゾチックなインド風の音楽とも雰囲気がよく合っていると感じました。

※参考小売価格:3,900円(税抜)

(注)2012年ヴィンテージはこの価格ではないかもしれません

 

 

KETTMEIR Alto Adige Doc Pinot Nero Vigna Maso Reiner  2019

色彩は「ルビーレッド」。アルト・アディジェの朝陽の色だとか。

音楽はアントニア・ヴィヴァルディの協奏曲RV107番 第三楽章。

フルート、オーボエ、ヴァイオリン、ファゴット、コントラバスの異なる音色がクリアな協和音を奏でるポリフォニックな音楽のイメージだそうです。

 

Vigna Maso Reinerは畑名。

ピノ・ノワールの赤ワインで、色は明るい赤。若々しいフルーツの香りがあり、味わいも若々しく、フレッシュでチャーミング。

ヴィヴァルディの軽快なクラッシック音楽と同調するように、軽やかな味わいのピノ・ノワールでした。

地元では、「ピノ・ネロ(ピノ・ノワール)はドロミテの王子」と呼ばれているとか。

繊細で気品ある点が王子らしいのかも(笑)

※参考小売価格:4,300円(税抜)

 

 

今回のケットマイヤーのプレゼンテーションでは、各ワインごとのテーマカラーは照明によって満たされましたが、ワインを飲む際には、自然の中にある色彩を意識し、眺めながら飲むのも楽しいと思いました。

広い青空の下、草原の中、沈む夕陽、満開の桜、などなど。

音楽なら、風の音、川の音、雨の音、小鳥のさえずり、火にかけた鍋の音、たき火の音なども。

 

さまざまな感覚を研ぎ澄ませながら飲むシーンを作ってみたいなと思いました。

 

※ワイン輸入元:フードライナー

 

コメント
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