暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

灑雪庵・節分の茶事-2

2014年02月13日 | 茶事  京都編
              (2月2日はよく晴れた暖かな日でした)

待合に懸想文売りの額を掛け、授かってきたホヤホヤの懸想文を置き、
吉田神社・福枡の煙草盆に灰形を調えて、お客さまを迎えしました。
詰のYさまが打つ板木の音が気持よく聞こえてきます。

弘法市で買った萩焼の汲出しで桜湯をお出ししました。
桜は鬱金(うこん)桜、昨春に桜守・佐野藤右衛門邸で買い求めたものですが、
茶事のたびに活躍してくれたので、残り少なくなりました。

               

本席の設えを遊んでみました・・・。
正午の茶事なので、本来は初座は掛物になのですが、
あえて花を生けました。
届いたばかりの白椿の布絵(友人の布絵作家・森下隆子作)を床の中央に設え、
下に信楽焼の大皿を置き、紅の侘助を落花の風情で・・・。
(この大皿は正客Oさまに引っ越し祝いに頂いたもの)             

「節分お化け」のように普段と違う設えにして、
近くをうろついている鬼(厄災)をやりすごしたい・・と思ったのです。
(亭主がお化けに扮するわけにもいかないし・・・)

               

釜は責紐釜、白い水引の責め紐で浄めの封印をし、
魔除けの斑入り柊を挿しました。

ご挨拶のあと、初炭手前になり、香合は染付「豆男」、
「豆男」はもちろん吉田山に奉られている業平さまです
お香は、次客T氏お好みの「玄妙」(山田松香木店)です。

               
                (淡路島の水仙です)

懐石になり、少し時間を頂戴してお客さま同士で歓談して頂きました。
毎回ハプニングがありますが、別焚きの一文字用ごはんが大失敗。
火力が強すぎたようで、おこげができ、使いものになりません。
急遽、電気炊飯器のご飯を一文字にし、切り抜けました。ふぅ~う~。

  懐石献立
   向付   鯛と帆立のカルパッチョ
        (鯛、帆立、赤黄橙のピーマン、赤玉葱など)
   飯    コシヒカリ(新潟県魚沼産)
   汁    大根(梅型) 蓬麩(竹型) 白味噌  辛子
   煮物椀  真蒸(ホタテ、銀杏) 菜の花 てまり麩 柚子
   焼物   サワラ幽庵焼
   炊合せ  里芋 鳥の丸 蓬麩 さやえんどう  
    箸洗   のし梅  梅仕立
   八寸   オイル・サーディン(鰯) プチトマトの冷菜
   香の物   タクワン 千枚漬 壬生菜漬
   酒    松竹梅(金粉入り)


主菓子は銘「福は内」、暁庵製、
緑色とピンクと黄色の鬼のきんとんでした(きんとんしか作れませんの・・)。

                              
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灑雪庵・節分の茶事-1

2014年02月12日 | 茶事  京都編

晩秋の夕去りの茶事以来、久しぶりに茶事をしました。

わが灑雪庵のベストシーズンは、風雪が隙間から降り灑ぎ、
厳しい寒さを体感できる1月~2月です(・・と思い込んでいます)。

さらに節分になると、ふだんは静かで学研的な界隈(京大があるので)が
ウソのように賑やかになり、活気づきます。
ご近所さんの須賀神社(一応、氏子です)、吉田神社、聖護院、熊野神社では
節分行事(神事)や節分しか売られない護符など珍しいものが目白押しです。

それで節分前日の2月2日、3名のお客さまにお出ましいただきました。
お正客は東京のOさま次客は淡路島のTさま詰は京都のYさまです。

正午の茶事なので特別な趣向はないのですが、
せめてご近所の神社の節分に因むものを取り揃え、
その御利益で厄災を祓って、立春を迎えたいと思いました。

              
                     須賀神社の懸想文売り

              
                懸想文の御札
先ずは須賀神社、
縁結びや交通安全の神様ですが、節分には
平安時代の装束を着た懸想文売りが登場し、「懸想文」の御札が売られます。
この御札を箪笥に入れておくと衣裳が増えるそうですが、
茶道具の引き出しに入れて置いたので、愛すべきガラクタが増えたかな?

茶事前日(1日)に須賀神社へ名物「須賀多餅」を買いに行くと、
「懸想文」も「須賀多餅」も2日と3日の2日間しか売っていないとか。
しかたなく、茶事当日に買いに行きました。
三条河原町の古本屋で見つけた「懸想文売り」の画を待合へ掛け、
新しい御札を飾ってみました。

              
                    須賀神社の茶店

              
                    名物・須賀多餅
次は吉田神社、
京都最大と言われる節分の名所です。
節分の夜遅く、古い護符をお焚きあげする火炉祭は一見の価値ありです。
昨年買った吉田神社の節分の「福枡」、これが優れものでして、
煙草盆、菓子器、花入などに使えます。
どのように使おうかしら・・・。

それから香合は染付の「豆男」。
調べてみると「豆男」は年男の意の他に、色好みの男、
転じて在原業平を指しているそうです。
業平さまと聞いて、どうしても使いたいと思いました。

吉田神社裏の吉田山に「業平塚」と呼ばれる塚があるからです。
榊が植えられ、結界をめぐらせた塚は落ち葉に寂しく埋もれていて、
いろいろな想像を掻き立ててくれます。
散歩途中に見つけたのですが、なぜそこに業平塚があるのか、
調べているのですがよくわかりません。

               
                     吉田神社・福枡の煙草盆

聖護院と熊野神社。
昨秋の寺町骨董まつりの時、下御霊神社で講演会がありました。
演題は「乾山の陶芸」、講師はMIHO MUSEUM学芸員の畑中章良氏でした。
乾山の生涯と作品についてお話があり、鳴滝、二条丁子屋町に続いて
一時、聖護院にも乾山窯があったことを知りました。
それで、乾山風の雪笹に雀の絵柄の茶碗で薄茶を・・と思いました。

熊野神社前の千歳屋で、名物「如心納豆」を販売しています。
気さくなご主人の話では転職して奥様の実家の菓子司を継いだとか。
表千家如心斎命名の「如心納豆」は大徳寺納豆を和三盆で包んだ、
独特の風味がお薦めの一品で、須賀多餅と一緒に干菓子にお出ししました。

              
                   節分の聖護院本殿

              
                   聖護院の鬼さん     

さあ~、これで一通りご近所さんを紹介できたかしら?
茶事の楽しみは亭主七分客三分と言われますが、
亭主が十分に楽しみすぎたかもしれません・・・ね(反省!)。

                             

         灑雪庵・節分の茶事-2へつづく



睦月の茶事へ招かれて-2

2014年02月11日 | 思い出の茶事  京都編
              「村下(むらげ)」 奥出雲で発見された侘助

(つづき)
一人ずつ和やかに挨拶を交わし、初炭が始まりました。
「みんなお仲間だから安心して・・・」の掛け声もいらないほど、
堂々と美しいお点前でした。
炭斗に香合が乗っていないので「あとでお香かしら?」
・・・盆香合でした。
根来塗の盆に乗った香合が鐶付へだされました。

香合は大振りの羽子板、梅や松の吉祥蒔絵があります。
ご亭主の母上が茶道の先輩から譲られたものだとか、
とても素晴らしい御品で、睦月の茶事にぴったりでした。
(・・・書き忘れましたが、蓋置が羽根でこれで羽根つきができますね)

懐石は母上の手づくり、我が家と違い、手の込んだ料理が次々と運ばれ、
はしたなくも歓声をあげて一同賞味しました。
手際よく、美しく盛られた懐石にうらやましさを感じたのは
私だけでしょうか?

             

中立で雨が上がり、やっと自称・晴れ女の面目をほどこしました。
銅鑼を聴き、後座は蹲をつかい、躙口から席入です。
床には信楽の蹲に可憐な椿が・・・まるでご亭主が居るようです。
「村下(むらげ)」、はじめて伺う侘助椿の名前でした。

釜から湯気が上がり、濃茶が楽しみでした。
初めて拝見した優雅な棚に心惹かれ、
「遠州流のお好みかしら?」と思いましたが
豊祥棚といい、淡々斎お好みでした。
楕円形の天板と地板を三本柱が支え、腰板に透かしのある棚に
染付の水指がお似合いです。

熱いアツイ濃茶をゆっくり頂くと、甘みのあるマイルドな味わいでした。
私も毎回熱い濃茶を差し上げたいと思いながら、
簡単なようでなかなか難しく、特に冬季には一番のごちそうです。
茶碗は信楽焼の杉本貞光造(寺垣外窯)、
顔がわかる数少ない作家さんの一人で、嬉しく頂戴しました。
茶銘は「成光の昔」、宇治の中村藤吉詰です。

             
                   (淡路島の水仙です)

薄茶になると、賑やかに茶談義がはずみ、楽しゅうございました。
ステキな茶碗で次々と薄茶が点てられ、途中で詰のHさまが交代してくださり、
ご亭主にも薄茶を喫んで頂き、ヨカッタ!です。

○○周年の結婚記念に買って頂いたという茶碗に魅せられました。
落ち着いた水色に銀彩の模様があり、エキゾチックな雰囲気です。
手に取ると、青海波模様や寿字があり、三浦竹泉造、
ご主人の応援歌まで聞こえるような宝物でした。

もう一つ、途中で学校から帰られた娘さんが挨拶してくださいました。
一家総出のおもてなしの心と、ご亭主の素直な人柄がにじみ出るお席で、
相客の皆さまも私も楽しく過ごさせて頂き、感謝いたします。

「清流無間断」の如く
お茶の心が三世代を経て繋がっていくことを祈りながら
帰途につきました。
                                 

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睦月の茶事へ招かれて-1

2014年02月09日 | 思い出の茶事  京都編
                  雪 (茶事の写真がないので・・)

初かぜの茶事へお招きしたYさまから丁重なメールを頂きました。
昨年11月のことです。

   私ごときが、亭主を務めるというのもおこがましいのですが、
   若輩者がお勉強させていただくということで
   お付き合いいただけましたら幸いです。
   お道具はお稽古用ですし、何の風情もございませんが、
   母が水屋にて料理をしてくれますので、母が元気なうちに、
   と奮起した次第です。

             

Yさまの奮起の気持ちが嬉しく、1月30日が待ち遠しい思いでした。
・・ところが、前日まで晴れていたのに朝から小雨が降っています。
「おかしいな? 私は強力な晴れ女だと思っていたけれど
 どなたか強力な雨女がいらっしゃるのかしら?」

そんなことを連客のTさま、Fさま、Iさまと話しながら
Yさま宅へ向かうと、Fさまが
「私の友人が強力な晴れ女だったのですが、
 年をとるとパワーが弱まるそうですよ」
・・・なるほど! 笑いながらもへんに納得してしまいます。

待合で詰のHさまと合流し、不肖暁庵が正客を務めました。
待合の掛物は、
「無心 行大道」とあり、黄梅院・太玄和尚筆です。
「無心帰大道」の禅語はよく拝見しますが、「・・行大道」は初めてでした。

             

手付きの手あぶりはインパクトのある白磁染付、煙草盆が用意され、
香煎で喉を潤し、玄関外の仕掛け待合へ。
雨がまだ降っていたので、ご亭主が迎え付けに出られ、
「蹲と躙口からの席入は省略させて頂き、
 待合からお入りくださいませ」

八畳広間へ席入すると、床に
「山川草木皆新」(さんせんそうもくみなあたらし)
睦月にふさわしく、心身がリフレッシュするお軸は紫野大亀老師筆です。

客一同、拝見した途端、うるうると感動したのが風炉先屏風、
ご亭主の結婚が決まった時に、母上から贈られたものでした。
黄梅院・太玄和尚筆で、次のように書かれています。

   送り 
 
    嫁ぎゆく
     阿子の姿を
       見送りの
    行く末安ず
      母のいませり   
              母より


水屋の母上の応援歌を受けながら、ご亭主の初陣茶事を見守る
風炉先屏風です。
                                


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2014年五事式に招かれて-2

2014年02月08日 | 思い出の茶事  京都編
(つづき)
大・・・小・・中・中・・・大
銅鑼の音色を心に留めて席入しました。

後座の席入がとても楽しみです。
花は廻り花、花寄せのどちらかしら、?
且坐、それとも仙遊かしら?

花入がたくさん並んでいるので、花寄せのようです。
点前座には寿棚(淡々斎好み)、砂金袋の水指、
茶入が水指前に置かれているので、且坐とわかります。
炉中を拝見すると、火相も湯相も頃合い好く湯気が上がっています。

        

花台が運ばれました。
今は大寒、花の少ない時期にもかかわらず、茶花好きのSさまが
丹精された花々が花台からあふれんばかりです。

花器を選び、花を選び、思い思いに入れていくのですが、
その人なりの個性が感じられ、それも含めて楽しみな花寄せです。
中釘の真っ青な竹花入が目に留まり、ピンクの椿を一枝生け、
水を注しました。
             
             

             

廻り炭、廻り花が終わり、次は且坐(お香と濃茶)です。
香盆が持ち出され、「何卒お香を」とご亭主。
正客がお香を焚くと、上品な香が漂ってきました。伽羅でしょうか。

静かに精神を集中して香を聞くひと時・・・
まさに「静中成友 塵裏倫閑」
(静かの中に真の友を得る 世俗の繁忙の中に憩いが見つかる)
さらに「能除汚穢 能覚睡眠」
(けがれを取り除き、佳く睡眠から目覚める)

             

お腹がいっぱいで少し眠くなるような後座ですが、
お香と濃茶がしっかり目覚めさせてくれます。
濃茶点前になり、嶋台の鶴茶碗で濃茶が練られ、客一同頂戴しました。
濃茶は慶知の昔(小山園)、マイルドで甘みを感じます。

「薄茶は花月で」
ご亭主から挨拶があり、客一同、帛紗を腰に付けて四畳半へ入りました。
折据を廻し、花を引くと点前をし、月が茶を飲みます。
菓子付なので茶巾で折据を回し、回し終えると札を開け、名乗ります。

お道具を拝見しました。
遠目で「渋いけれど唐津かしら?窯元は?」と気になっていた茶入は、
出雲楽山焼・長岡空味造でした。
枯淡の味わい深い肩衝は、渋好みのご亭主にぴったり!と納得です。
茶杓は銘「知足」、法谷文雅和尚作です。
お仕覆はえ~と・・・思い出したら追加します。
薄器は住吉蒔絵の茶器でした。

拝見の道具が戻り、ご亭主と正客が挨拶をかわし、薄器が棚に飾られ、
ご亭主が道具を持って立つと同時に、正客は干菓子器を持ち、
連客とも八畳に戻り、帛紗を懐中します。

              
                 干菓子は今日庵初釜の引き出物

最後の一二三之式になりました。
皆さま、さらさらと札を入れ、ご亭主は札を拝見して
「過分の評価を頂きまして・・・」 感無量のようでした。
こちらこそ、ご準備などお世話になり、ありがとうございます。

最後のご挨拶になり、
「お招き頂いて、今年もまたいちねん会の皆さまとご一緒に
 愉しく五事式ができて、嬉しゅうございました。
 ステキなお仲間に心から感謝いたします・・・」

「百花為誰開」(ひゃっか たがためにかひらく)
春になれば毎年変わることなく、たくさんの花が咲き乱れます。
花は誰のためでもなく自分の命のおもむくままに無心に咲いています。

毎年、いちねん会の皆さまと五事式の花を咲かせたいものです。
                                   

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