暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

炉開きと口切の会 寅年霜月

2010年12月20日 | 稽古忘備録
(PCの不具合で投稿が遅くなりました・・・まだダメなのです)

11月の花月の稽古は「炉開きと口切の会」でした。
例年は11月の第1週に行われるのですが、
今年はお祝いの茶会のため11月25日に行われました。

「お稽古ですので毎年順番に口切をして頂きます。
 口切のあと、炭手前、濃茶(台天目)、壷荘花月をします」
今年の口切はIさんです。

10時に席入りすると、床に軸と茶壷が荘られていました。
軸は長谷川寛州老師の「一陽来復」、
赤い椿が古胴の花入にいけられていました。
椿は大神楽だそうで、珍しく斑入りの葉です。

Iさんが客一人ずつと和やかに挨拶を交わしました。
正客はYさんです。
床や花などを尋ねた後に
「どうかお壷の拝見を・・・」
亭主は受礼をしてすぐに茶壷を床から運び、紐をはずし、
拝見に出しました。

釉薬のなだれ、土肌の変化が見事な茶壷は信楽焼だそうです。
口覆は青海波金襴です。

茶壷の拝見が終り、いよいよ口切です。
入日記が正客へ運ばれました。
入日記は毎年貼り重ねられるため分厚くなっていて
「炉開きと口切の会」の歴史を感じました。
「いずれのお茶をさしあげましょうか?」

茶壷の口が切られ、所望の茶「千代の寿」を取り出し
挽家に入れ、再び封がされます。
ご亭主が印を押し、茶壷が水屋へ下げられました。

              

ここで亭主交代、K先輩の初炭ののち、吸物八寸です。
折敷が運ばれてきました。
当番のUさんが腕まくりの煮物碗(帆立しんじょう)と
八寸(サーモン巻きと銀杏の松葉刺し)で一献を交わしました。

毎年、「炉開きと口切の会」の濃茶点前は台天目です。
S先輩が二服を練られた後、もう一服が水屋から持ち出されました。
濃茶はもちろん「千代の寿」で、美味しく頂戴しました。

壮観なのは、三組の天目茶碗と天目台の拝見でした。
問答は詳しく覚えていないのですが、
禾目天目、玳皮天目、らん天目だったような?
禾目天目の天目台(尼崎台写)には朱のムカデ印があり、S先輩は
「数のうちでございます」
と、正客のお尋ねに答えていました(格好いいです・・!)。
いつかS先輩のように答えてみたいものです。

中立して昼食ということになり、
用意してくださった炊き込みご飯、白和え、煮物鉢
漬物、フルーツなどを美味しく頂きました。

午後の壷荘花月では、ご指名(?)で月を引き、紐結びをさせて頂きました。
先生のお言葉を思い出しながら
「壺荘付花月では薄茶を点てている間に(通常三服)
 紐を結ばなくてはならないので7分位をめざしてください」
二服目の途中で松を名乗ることができ、ほっとしました。

こうして寅年の「炉開きと口切の会」が無事終わりました。
来年も「一陽来復」の軸に会えますように・・・。

                              

   写真は、「ヒイラギ」 (季節の花300提供)
        「椿の固いつぼみ」 (季節の花300提供)                         




寅年納会と埋み豆腐

2010年12月18日 | 稽古忘備録
12月16日は最後の花月之式の稽古で、納会を兼ねていました。
科目は、後炭所望、平花月、雪月花、員茶之式で、
員茶の前に恒例の埋み(うずみ)豆腐で一献がありました

床には足立泰堂和尚の筆で
「先今年無事 目出度千秋楽」 
毎年、納会に掛けられる軸だそうです。

後炭所望で亭主をしました。
巴半田を持ち出して炭を上げ、炉中を整える所作は
風情があって、炉の中でも大好きな手前です。
五事式の会で廻り炭之式を修練していたお陰で、
身体が覚えていてスムースに運びました。
下火を置き、匙香は鳩居堂の松重(まつかさね)です。

「お申し合わせの上、どうぞお炭をお願いいたします」
と所望し、S先輩が炭を置いてくださいました。
残っていた胴炭を下火にしたので、常のように左手に火箸を持ち、
右手で輪胴を持ってそのまま一膝勝手付きへ向き、
灰器の灰匙上に輪胴を置きました。

後炭の時に輪胴を炭斗の中へ除けていたのですが、
先生から灰器へ輪胴を置くようにご注意があった箇所なので、
S先輩の所作を茶道口から拝見させて頂き、良かったです。
炭を継ぎ終ると輪胴を再び炭斗へ戻し、後掃きをします。
但し、茶事の場合は胴炭が残っていてもなるべく輪胴を除けずに
使った方が良いのだそうです(ウーン・・・奥が深い・・)。

火相を心配していましたが、後炭所望の点前が終わる頃に
火勢が上がり、ご名炭でございました。

               

平花月の間に、当番の先輩二人が埋み豆腐の準備です。
埋み豆腐は、味噌汁の中にご飯と豆腐が入っている素朴な椀物ですが
いざ作るとなると、細かいところがわかりません。
それで、先生にお願いして埋み豆腐の作り方を見学させて頂きました。
百聞は一見に如かず・・・
これで作れそうになりましたので、チャレンジしてみようと思います。

平花月の後に、お膳と一献です。
半月盆に、お向う、大きな煮物碗(埋み豆腐きざみ海苔添え)、
つぼつぼ(昆布の佃煮)、杉箸に朱杯がのっていました。
お向うはうるめ鰯の焼物で、ステキな越前焼・笹の葉皿に
ゆずり葉が敷かれていて、「来年へ年をゆずる」という意味だそうです。
他にも香の物(白菜、きゅうり、蕪)と里芋の煮物(刻み柚子添)が
供されました。

この献立は暮の忙しい時期の納会や歳暮の茶事にぴったりで、
温かく、おかしら、香物付きで、素朴な一品一品がとても美味しく、
栄養的にも満点だと思いました。

その日は、雪月花之式では「上がり」となり、
員茶之式では札元と大当たりの納会でした。

七事式・員茶之式のげじゅ
「老倒疎庸無事日 
 閑眠高臥対青山」
(ろうとうそようぶじのひ 
 かんみんこうがしてせいざんにたいす)

先生ならびに社中の方々と笑顔で無事に
今年の稽古を締めくくることが出来ました。
感謝申し上げます!

                    

    写真上から、「南天の実」  (季節の花300提供) 
           「ゆずり葉と実」 (季節の花300提供)                         



工事中です

2010年12月10日 | 閑話休題
この前から調子が今一つだったパソコンが、昨日朝からダウンしました。
我家では珍しくパニックになりました・・・。
検討の結果、新しいパソコンの導入が決まりましたが
時間がかかりそうです。
しばらくお休みしますが、またどうぞお立ち寄りください。


   写真は、「弘法の清水」(神奈川県秦野市)です。

                          

口切の茶事 師走(2)

2010年12月07日 | 思い出の茶事
口切には「内(ナイ)口切」と「口切」があります。
茶壷は茶師に預けられ、口切の前に葉茶を詰めた茶壷が届けられます。
この状態で初めて口を切るのを「内口切」、
その後、再び封をした茶壷の口を切るのが「口切」です。

今回は「内口切」で、茶師の所から葉茶が詰められた茶壷を
ご亭主自身が持って帰られたそうです。
床前の茶壷が点前座(道具畳)へ運ばれました。
御茶入日記が運び出され、三人で相談し、
すぐに初昔に決まりました。

葉茶じょうご一式が水屋から持ち出され、小刀で口を切り始めました。
「内口切」を目の前で拝見させて頂き、
ご亭主と一緒に一挙一動しているような一体感がありました。
比較的サッと切れる「口切」と違い、しっかりと封印されていました。

ご亭主は合口を指で確認しながら、ゆっくり慎重に切っていきます。
口を切り終え、壷の中を横から拝見すると
葉茶がぎっしりと詰められた中に半袋(37.5g)が三つ入っています。
葉茶を少量じょうごへ移し、最初に取り出したのが初昔でした。

和紙で封がされ、印が押され、
いよいよ茶壷の拝見です。

小習い壷荘の稽古で拝見するのと違い、
葉茶がギッシリ詰まっているせいかとても重かったです。
小振りながらキリッと締まった形が小気味よく、
黒の釉薬の肌に灰色釉のなだれが美しい茶壷です。
(瀬戸かしら?それとも唐津かしら?)
お尋ねすると高取で初代・鬼丸雪山造でした。

「口切の茶事をしたいと長年思っていましたが、
 茶壷との出合いがありませんでした。
 この茶壷とご縁があって 
 やっと今日、口切をすることができました・・・」

ご亭主のお話を伺って心に響くものがありました。
茶壷とのご縁、T先生と後輩に見守られての口切、
誠におめでとうございます。
ご亭主の喜びが我が身のようでした。

              

それから、初炭、懐石、濃茶、後炭、薄茶と続きましたが、
今日の口切へかけるご亭主の心意気が全てに込められていて、
愉しく満ち足りた時間が流れていきました。
半東と懐石は茶事のお仲間が担当していて、チームワークの
良さがうらやましいです。

T先生が
「口切の茶事は亭主にとっても客にとっても特別なことでして、
 茶事の中に茶壷の口切を入れれば良いという訳ではないのです。
 よくぞここまで修練を積まれ、ご準備も立派になさいましたね。
 とても素晴らしい口切でした・・・。
 お招き頂き、ありがとうございます」
と、嬉しそうにおっしゃっていたのが心に残っています。

ご亭主を見習って、口切の茶事ができるよう努力してみよう・・
茶事に招き、招かれつつ、お互いに切磋琢磨しながら
末長くお付き合いできたら・・・と思いました。

    口切や 壷中に夢を ふくらませ     暁庵


         口切の茶事 師走(1)へ          

    写真は上から、「蝋梅」 (季節の花300提供)
             「紅葉透かし」 (12月4日三渓園にて)



口切の茶事 師走(1)

2010年12月06日 | 思い出の茶事
   口切や南天の実の赤き頃    漱石

師走3日、口切の茶事へお招きいただきました。

あいにくその日は低気圧が早朝に関東地方を通り抜けたため、
風雨が8時頃まで残りました。
電車の遅れが心配で早めに家を出ましたが、
ダイヤが乱れ、一時は席入りに間に合うか不安でした。

・・・正客の大役を仰せつかっていたのです。
客は次客のYさま、詰のTさま(ご亭主の先生)の三名で、
私以外のお二人は社中なので社外の私に是非・・・という訳でしたが、
安易に引き受けて後悔しました。

ご亭主にとって初めての内口切の茶事とのこと、
どう考えてもご亭主の師であるTさまを差し置いての
正客は如何なものか・・・と悩みました。
引き受けた以上・・と覚悟を決めたのは茶事の5日前でしょうか?
気持ちを切り替えたら、口切へ伺うのが楽しみになりました。

それは、何度か茶事へお招きいただいているのですが、
おもてなしの心入れ、茶道具のセンスや楽しいアイディア、
手作りの懐石や菓子など学ぶべき事ばかりで、
いつもたくさんの刺激を頂戴しているからです。

               

席入りは11時でした。
待合へ入ると、歌切れが掛けられています。
紀貫之の和歌で
   見る人もなくて散りぬる奧山の
       紅葉は夜の錦なりけり 

萩焼の汲出しで紅白あられが入った白湯を頂き、
マンション8階のベランダに設えられた腰掛待合へ。
垣根、手水鉢、鉢植えなどで清々しく露地と蹲が工夫されています。

見る人もなくて散りぬる紅葉の錦を8階から俯瞰して
大風に舞い散る様子を眺めていると、ご亭主が現れました。
蹲を使い枝折戸代りの関守石が脇へ退けられ、迎え付けです。
心地好い緊張感を感じながら無言の挨拶を交わしました。

本席はマンションの一室を改築した
風情のある三畳台目向切の茶室です。
にじり口から席入りしました。
壁床には「関 南北東西通活路」、明道和尚の筆です。

いくつもの関を経て、今日口切の関へ辿り着き、
また新たに歩み出す・・・
明道和尚の筆は柔らかく、緊張気味のご亭主を温かく
見守っているかのようでした。

朱色の網に入れられた茶壷が荘られていました。
ほの暗い小間ゆえに壷の持つ存在感と華やぎを一際感じます。

茶人の正月と言われる口切へお招き頂いた御礼を申し上げ、
「ご都合により茶壷を拝見したく お願いいたします」
いよいよ口切です。

     口切の茶事 師走(2)へ        のち      

    写真上から、「南天の実」 (季節の花300提供)
             (赤い実が茶壷の飾り結びのよう・・)
            「紅葉の庭」