麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第717回)

2020-11-23 20:22:14 | Weblog
11月23日

1週あいてすみません。どうもやっぱり見えにくいですね。

目のことを電話で、宮島さんに伝え、まあそれについてはやれることをやるしかないという当たり前の話になっただけですが、そこから入院や保険の話になりました。彼も少し前、わずかな日にちですが入院していたことがあって、そのときの入院費はすべて保険で戻ってきたとのこと。私にも二度ほどそういう経験があります。それも当たり前のこと。でも、それを話している自分たちの口調が、私にはとてもおもしろくて、あとで一人で笑ってしまいました。なんというか、二人でそういう話をしていると、いつのまにか、「ものすごい手品を見た」とか、「超常現象を見た。すごいんだぜ」と、自慢しあっているような感じになってしまう。それは、われわれが、多くの人が現実と呼んでいるものをまるで夢のようだと感じて生きている証拠です。見よう見まねで保険料を払ってはいても、その効果はまるで信じていない。見よう見まねで働いたりすることと同じで、どうやらこういうふうにするのが生きるための儀式らしい、と感じてやっているだけのこと。そういうふうにやっていれば、多くの人の中で怪しまれずにすむという、元々ただそれだけの投げやりな処世術なのです。だからそれの効果を知ったとき、奇跡が起きたように驚いてしまう――といってもあくまで夢の中で驚いている感じなのですが。――では、われわれにとっての現実とはなにか。それは「裏山」であり、「風景をまきとる人」――多くの人にとって夢のような、おそらくは無意味な世界なのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする