麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第629回)

2018-12-16 20:14:57 | Weblog
12月16日

電子書籍で買える本が増えてきました。千一夜物語の再読を始めてから、同じちくま文庫のキンドル版のタイトルを見てみたら、なんとセルバンテスの「ペルシーレス」まであるのでびっくり。誰が買うんでしょうね(オレか)。でも、そんなコアなタイトルはあるのに、井上究一郎訳の「失われた時を求めて」はありません。岩波文庫の吉川訳が「見出された時」にさしかかろうとしているいま、版元はあらためて井上訳のよさをアピールするべきではないかと思いますがどうでしょうか。井上訳には、おそらく訳者が詩人であることからくる、不思議な魅力があります。ルソーの「告白」も、私は新潮文庫の井上訳(「告白録」絶版)でのみ完読しました。他の訳者のものでは挫折しました。吉川訳は、ひとつには、漢字が多すぎると思いますね。短編ならいいのですが、長い物語の場合、漢字が多いと疲れますよね。とくにプルーストの場合、音楽を聴くように読めるのがひとつの大きな魅力なのに、漢字とがちがちの論理はそれをできなくさせてしまう。以前、その場その場でいろいろなたわごとを書きましたが、「失われた時~」の翻訳はなんといっても井上訳がよいと思います。電子書籍化熱烈希望です。
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