麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第356回)

2012-12-01 04:31:20 | Weblog
12月1日


「行人」「道草」を読みました。
両方ともすごくいい。でも、一番すごいと思うのはやはり「猫」ですね。前衛的で新しい。スターンの影響を受けているということは、プルースト、ジョイスと同じ時代の文学者ということを強く感じさせ、実験的な試みに満ちているのを感じる。新聞小説家になってからは、前衛から古い書き方に戻した、という感じですね。読者のレベルに合わせて。漱石の中では後退している。もちろん、そこにまた傑作が生まれる理由があるわけですが。

また、少し意外なことを感じたのは、三島由紀夫は発言を見る限り、鷗外=神という作家ですが、「春の雪」の主人公の、変態的といってもいい心の動きは、とても漱石的ですね。「彼岸過迄」の須永の話などに強くそれを感じます。また、最後に仏門が出てくるというのも、「門」的といえばそういえる。ときどき思いますが、三島由紀夫は、公的にはあまり言及していない作家に実は強く影響を受けているといった気がすることがあります。そのひとりはヘミングウェイです。「潮騒」は「老人と海」の感想文ではないかと思うことがあります。どこにもそんなことは書かれていないし、なんの根拠もないのですが。


では、また来週に。
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