鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

新春歌舞伎を見て、ここ数年の歌舞伎界に吹き荒れたゴタゴタで新たな風が吹き出した、と思った次第

2024-01-14 | Weblog

 13日は東京・銀座の歌舞伎座に行き、初春大歌舞伎を観賞した。例年この初春大歌舞伎は観賞しているが、これまで一日3回入れ替え制だったのが、昼と夜の2部制となった代わりに料金が高くなっていた。開演の30分ばかり前にいつもの3階B席の一番後ろの席に着いて待っているうちに観客が入ってきて、見渡してみると若い人が多く、昨年の市川団十郎、猿之助の一連の不祥事で歌舞伎人気が低迷していると言われていたのにそれほど影響を受けていないような印象を受けた。

 午前11時に初春らしい「當辰歳歌舞伎賑」で幕開けし、五人三番叟と英獅子なる男女8人による華やかな踊りで正月らしい雰囲気を感じさせてくれた。続いては赤穂義士外伝「荒川十太夫」なる演目で、吉良上野介を討ち取った赤穂浪士のうち大石主税、堀部安兵衛らを引き取った松山藩松平家の徒歩侍・荒川十太夫が7回忌に泉岳寺に弔問に訪れた際に上司に会い、下級武士に似つかわしくない控えの者2人を引き連れた身なりで来たのを見られ、武士が身分を偽るのは大罪である、と咎められ、追って藩主の松平隠岐守からその理由を問われる。そして、堀部安兵衛切腹の際、身分を問われ、徒歩侍ではふさわしくないと思い、とっさに上級武士の身分である物頭役と偽って述べてしまい、死後もその苦悩を引き摺って物頭役の身分で弔問に及んだと打ち明ける。

 そんな苦悩が大きな反発を招くとは思いもしなかったと反省をしたところ、藩主の隠岐守は処分として2カ月の謹慎を言い渡したうえで、謹慎明けには晴れて十太夫が称した物頭役の身分に引き上げる旨を言い渡し、結果としてはその行為は称賛を浴びることとなった。この演目は講談師の神田松鯉の口演による赤穂浪士外伝を一昨年10月に歌舞伎公演としてとりあげたもので、その年の「大谷竹次郎賞」や文化庁芸術祭賞を受賞した。赤穂浪士の切腹の際の緊張した場面での武士の心意気をくみ取った感動的な作品である、といえる。

 最後は「狐狸狐狸ばなし」と題する歌舞伎には珍しいコメディで、手ぬぐい染屋を営む伊之助とおきわが織りなすいわばドタバタ劇。酒飲みで怠け者のおきわはなまぐさ坊主の重善と深い仲となり、一緒になりたい一心から伊之助を毒殺してしまう。使用人の又一に言いつけ、死体を弔ったが、どういうわけか、翌朝に死んだ筈の伊之助がひょっこり現れ大騒動となる。ドタバタ追いかけっこをしたうえに今度はおきわが痴呆症となってしまう展開となるが、最後にはその痴呆症が演技だとわかったところで幕となる。歌舞伎らしからぬコメディなる一幕にこんな演目があったののか、と疑問を抱く一方で、ここ数年、歌舞伎界にはかつてないゴタゴタらしきことが相次ぎ、新たな風が吹き出したのかな、と思いながら家路に着いた。

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