鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

エタノールガソリンは普及しない

2007-05-22 | Weblog
 だれかが読んで推奨していたので、ソニア・シャーの「石油の呪縛と人類」(集英社新書)を読んだ。昔から石油など資源をめぐる国際間の思惑は戦争に発展しているようなことを地層学的な側面から解き明かしていくが、将来的には石油は枯渇するのは必至だ、という。そして、石油に代わるエネルギーの主役は天然ガスだ、とする向きが多いことを指摘しながら、輸送などネックが多いことをあげて半ば否定する。そして、結論としては石油に勝るエネルギーはない、と言い切り、枯渇しても再び石油に頼らざるを得ない時代がやってくる、という。
 なかでひとつ面白かったのはいま話題のエタノールについて、米国のドライバーがエタノールに移行した場合、1日当たり25万バーレルの石油を生産するためにトウモロコシ農家や加工所は21万バーレルの石油を使用し、水素燃料電池同様、米国人の原油使用量を変化させない、とエタノールを見限っていることである。
 すでに日本ではマヨネーズの値上がりなどエタノールガソリンへの傾斜による影響が出始めているが、トウモロコシを燃料にするために煮詰めるためのエネルギー減として石油を消費するのでは、なんのためにエネルギー転換を図っているのか、わからなくなってくる。以前、石油ショックの時に日本全体の原油備蓄量は法律で90日分必要と定められていて、120日分あるから当面大丈夫、との説が唱えられたことがある。しかし、農業学者が「このうち3分の1は食料生産に必要なものだ」と言っているのを聞いて、石油が生活の大変な部分を占めていることに改めて驚いたことがある。
 先日、日本経済新聞社の景気討論会を聴講していたら、いまの好景気は当面持続する、ということでスピーカーの意見はほぼ一致していたが、論者の1人が懸念材料としては米国、中国の景気の動向、為替レートの行方、それに原油価格の4点をあげていた。そして、原油価格については今後上昇していくことは避けられないことでは異論がなかったが、小島明日本経済研究センター理事長が「日本としては省エネ技術で世界の先端をいっているので、逆にメリットになることもある」と言っていたのが記憶に残っている。
 今回のイラク戦争の背景にも米国の石油戦略が隠されている、と見る向きが多いが、今後石油資源が枯渇し、いまのような石油をはじめとするエナルギー消費が続けば原油価格が上昇していくのは避けられないだろう。しかし、オイルサンド、オイルシェールなど石油に近い資源は地球上にまだまだある。ただ、それらをエネルギーとして使えるようにするためにはコストはかかるので、今後エネルギー問題のカギを握るのは省エネ、およびエネルギー開発、転換などの技術開発しかないだろう。
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