鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

NHK放送命令の怪

2006-11-11 | Weblog
 菅義偉総務相がNHKの橋本元一会長を総務相に呼び、短波ラジオ国際放送で拉致問題を重点的に放送するよう命令した。放送法で定められている命令規定によるものではあるが、国が具体的なテーマを指定して放送を命じるのは始めてのことで、マスコミはもちろん当の自民党内からも反対の声が一斉に起きている。もちろん、拉致問題について国際的に解決を訴えることについては異論があるはずはないものの、自由であるはずの言論に国が介入した、という事実を重視してのことである。安倍内閣となって、憲法改正への動きが強まるなど右傾化していることへの警戒感もあって、この問題は尾を引きそうだ。
 ここへきて77年に失踪した鳥取県米子市の松本京子さんについて北朝鮮による拉致被害者として認定され、17人目の拉致被害者となることが確実となって、改めて北朝鮮に対する怒りの声が高まっており、あらゆる機会をとらえて、拉致問題の解決を訴える動きが出ている。政府からの命令を待つまでもなく、NHKに限らずマスコミは拉致問題を取り上げ、被害者の救済になるような方向で世論を形成しつつある。
 なのに、あえて拉致問題を重点的に放送するように命令する意図がよくわからない。民主党の鳩山由紀夫幹事長が「拉致問題以外のことに関しても、政府が放送内容に細かく介入してくる端緒になる」と警戒を強めている。日本新聞協会も「報道・放送の自由を侵す恐れがある」と厳しく糾弾している。
 拉致問題という大方の賛意を得られるテーマで実績を作っておいて、次にはもう少し微妙なテーマについて命令を出していこう、との腹だ、と勘ぐられても仕方がないだろう。
 安倍内閣の滑り出しは順調にきているから、そろそろ究極のねらいである憲法改正へ向けて地ならしをしておこう、とでも考えたのだろう。で、その役割を担ったのが安倍首相誕生のお先棒を真っ先に担いだ菅総務相だ。役割はともかく、軽い菅大臣が先走ってやったことにしておけば、火傷も少ない、とも読んだのだろう。
 その一方で、片山虎之助自民党参院幹事長に「命令という名前がよくない。他の表現にするか、仕組みを直さないといけない」と言わしておいて、自民党すべての総意でもない、とのポーズもとっている。自民党筋のだれかが巧妙に仕組んだ命令劇だとしたら、相当にしたたかな御仁である。
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