鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

福島第1原発の汚染水問題の対策で、東京電力はもはや当事者能力を失くしている

2013-08-26 | Weblog
 東京電力福島第1原発の地上タンクから高濃度の放射性物質を含んだ汚染水の流出問題がどんどん拡大している。当初120リットルと言っていた流出量が300トンに増えたか、と思っていたら、今度はその汚染水を貯めていたタンクが使い回しのものであることが判明した。一方で、放射能汚染された地下水が海に流出している問題は相変わらず解決の糸口さえ見つかっていない。東京電力にはもはや統治能力がないと見る向きもあるほどで、管理すべき原子力庁の石原伸晃長官の声がさっぱり聞こえてこないのも不思議なことだ。
 当初、福島第1原発からの地下水の湧出量は120リットルと言われていた。それが実は300トンだ、と言い出し、海へ流出するのを止めるのに地下に凍結した防水壁をつくるのだとか、違うところへ溜めるのだ、と言ったりしていたが、数日して今度は汚染水を貯めて地上に設置していたタンクからの水漏れが発見された。この汚染水には数時間いれば年間に許容されている数量の放射能が含まれていることが判明した。しかも新たな事実が分かる度にまるで他人事かのように記者会見している東京電力の担当者の姿がテレビに現れ、視聴者の怒りを買っていた。
 そして、さらに25日になって汚染水が漏れ出していた地上のタンクが、実は使い回しのタンクであることが判明した。問題のタンクは2011年6月から福島際1原発の敷地北部に設置されていたもので、東電は東日本大震災後にこれを解体していまの場所に移設した。タンクの設置に関わった協力会社の幹部は「タンクは工期も短く、金もなるべくかけずに作った。組み立て式で、ボルトや水漏れを防ぐパッキンの劣化がひどく、事故は織り込み済みのことだった」と明かしている。
 そもそも福島第1原発を建てるときに地下水がどのくらい湧出してくるものなのか、原発からの排水とどう混じり合うのか、といったことを全く想定していなかったのだろうか。建設した当時の資料なら、データがほとんど残っていないことなどありえない。事情を知っている人がいなくなったというのならわからないでもないが、
基本的な地下水対策ひとつとっても内部の管理体制がきちんと出来上がっていないことのなによりの証拠である。
 国の原子力規制委員会も福島第1原発の事故回復状況をいまのレベル1からレベル3に引き上げる方向で検討に入った、というが、遅すぎる措置である。事故発生後、数日経ってから東京電力の副社長が福島県庁を訪れ副知事に謝罪したニュースが流されていたが、いまはそんな形式的なことをしている場合ではなく、事故処理をいかに図るかに全力を注ぐべき時であるというのに、東京電力はもはや当事者能力を失いつつあるような感じがしてならない。
 毎日新聞が全国の1549世帯に対して24、15日に行った世論調査では、91%の人が「汚染水対策にもっと国が関与すべきだ」と答えていることがそのことを物語っている。東京電力はもはや自らのガバナンス能力を失くしている、といっていいだろう。
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